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12章 俺が望んだ異世界生活
495 登山道
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「良かった。捕まりました。
おはようございますトーマさん。ちょっとお付き合い頂けませんか?」
次の日ミルズレンダに転移すると、ターミナル広場でスカーさんが待っていた。
「おはようスカーさん。昨日の手紙の件かな?
今日の予定は空いたから大丈夫だけど、何処に行けばいいの?」
「ああ、ここミルズレンダに場を設けております。
徒歩で済みませんがご同行願います」
馬車より徒歩の方が気楽でいい。
って断ったとしても、貴族のメンツか何かで頑なに馬車を用意されそうだけど。
スカーさんに案内されたのは冒険者ギルドだった。
あれ? 俺ってミルズレンダの冒険者ギルド、初めて来たんじゃないか? いやどうでもいい話だけど。
中に入っても、ギルドの共通規格が決まってるから代わり映えしないし。
そのまま3階の会議室に案内される。
「おはようトーマさん。
昨夜は刺激的な情報ありがとう。おかげさまで寝不足だよ」
「おはようございますトーマさん。
正直事後報告にして欲しかったくらい頭の痛い提案を、どうもありがとうございます」
ファーガロン様、ディオーヌ様、それと王様まで出向いてくるとは。
ゲートがあるから移動は楽なんだろうけど。
「おはようございます皆さん。いやぁ正直勝手にやっても良かったんですけど、なんとなく冒険者ってエリアキーパーの事甘く見てるんじゃないなぁと不安に思いまして。
そこから結構近付いても反応がなかったし、エリアキーパーというこの世界の頂点に君臨する存在を安全に視認できるっていうのは、冒険者達にとっては必要なことなのかなと愚考しました」
「南側のエリアキーパーは、巨人グラメダワルケアだったか……。
本当に安全に、その姿を確認できると申すか?」
「スキル『遠目』は試さなかったですけど、肉眼でバッチリ見えましたし、そこからかなり近寄っても無反応でしたからね。
ただまぁ……。誰にでも開放しちゃうと心折れちゃいそうなんで、迷宮を自力で踏破した経験があるものだけ、とかの多少厳しめの制限を設けた方がいいかも?
ユリバファルゴアの時の話になりますけど、『精神安定』持ちのうちの嫁が正気を失いかけましたかね。『精神安定』を持った上で深階層域まで行った事がある冒険者じゃないと、心が折れてしまうかもしれません」
「……トーマさん。私達が確認しても大丈夫だと思いますか?」
ええ、そんなの判断出来ないんだけど……。
この流れなら、恐らく全員が『精神安定』取得済みなんだろうけどさ。
「んー。待機状態ですから、多分大丈夫だとは思いますけど……。
正気を失ったりしても責任は持ちませんよ?」
「ええ、大丈夫ですよ。少なくとも私は、ザルトワシルドアに沈められる船を見たこともありますしね」
「僕もユリバファルゴアを、超長距離からだけど見たことあるから、多分平気だ」
へぇ? どうやって見たんだろ。
おとり、とかなのかなぁ。あんまり深く考えない方が良さそうか。
「それじゃ俺は道を作っちゃうんで先行ってますね。ミルズレンダから真っ直ぐ進んで、1番最初にぶつかる山に道を作ります。皆さんは護衛でも連れて後から来てください。
あ、一応言っておきますが、雲の上まで登ることになりますからね? 1日以上かかる事を覚悟してくださいよ」
「えぇ……。ちなみにトーマさんはどのくらいの時間で登ったわけ?」
「んー、そうですね。安価な武器の補修再生にかかる時間くらいですかね?」
「えええ、意味が分からないよ……」
「それではしっかり準備をしてから向かってくださいね。まぁ道はもう作っちゃうんで、都合が悪ければ今日中に確認する必要もないと思いますけど」
さってとー。どんな道を作ろうかな?
ギルドを後にし、ミルズレンダから真っ直ぐ南下して、始めに目に入った岩山を、リモデリングで成型していく。
登山道と言っても、岩山の表面を階段状に成型していくしかないよな。
土魔法も併用して、階段の強度もなるべく上げながら作業を進める。
ウェブクラフターのおかげで作業スピードがおかしいことになっている。
5分もかからず100段以上の階段が出来てしまった。
後続が来るのは大分後だろうし、どんどん作業を進めていこう。
大勢が登る事を考えて、多少幅は広くしておく。あまり段差は高くしたくないけど、頂上まで遠すぎるからある程度の段差はつけざるを得ない。
ここを登るのはある程度の実力者に限られるだろうし、休憩スペースは500段前後を目安に設置するか。座って休める程度の踊り場があれば充分だろ。
1段30センチくらいかなー? それを500段ってことは、150メートルくらいで休憩するわけか。
やべぇ先長そう。どっちも図ったわけじゃなくて目算だから誤差はあるだろうけど。
黙々と山頂を目指して階段を作っていくけど、全然先が見えないな。普通に登るのは大変だわ。軽い気持ちで登る奴が出ないのはいいかもしれないけど。
あー、でもこういう単調作業は久しぶりな感じがするなぁ。
俺ってこの世界に来てから、ずーっと単純な作業を繰り返してばかりだった気がする。
そんな俺がエリアキーパーなんざと戦わなきゃならなくなったのは、全部どっかの馬鹿猫のせいだよな。まぁ家ごと滅びたみたいだけど。
ほぼ朝イチで作業を始めたのに、山頂に到達したのは日没をかなり過ぎてからだった。
山頂も少し整備して、30人程度が並べる広さを確保し、転落防止の手すりも作っておこう。至れり尽くせりかな?
しかしウェブクラフターの能力は凄いなぁ。
正確に数えてないけど、多分7000段以上の階段を、たった1日で作りきってしまったぞ。俺1人で。
そして半日リモデリングと土魔法を使っていたのに、作業終了まで魔力が持ってしまったのもビビる。
『魔力量増加:大』の恩恵は凄まじいらしい。
……さて、みんな登ってきてるのか、確認せずに帰る訳にはいかないよな。
おはようございますトーマさん。ちょっとお付き合い頂けませんか?」
次の日ミルズレンダに転移すると、ターミナル広場でスカーさんが待っていた。
「おはようスカーさん。昨日の手紙の件かな?
今日の予定は空いたから大丈夫だけど、何処に行けばいいの?」
「ああ、ここミルズレンダに場を設けております。
徒歩で済みませんがご同行願います」
馬車より徒歩の方が気楽でいい。
って断ったとしても、貴族のメンツか何かで頑なに馬車を用意されそうだけど。
スカーさんに案内されたのは冒険者ギルドだった。
あれ? 俺ってミルズレンダの冒険者ギルド、初めて来たんじゃないか? いやどうでもいい話だけど。
中に入っても、ギルドの共通規格が決まってるから代わり映えしないし。
そのまま3階の会議室に案内される。
「おはようトーマさん。
昨夜は刺激的な情報ありがとう。おかげさまで寝不足だよ」
「おはようございますトーマさん。
正直事後報告にして欲しかったくらい頭の痛い提案を、どうもありがとうございます」
ファーガロン様、ディオーヌ様、それと王様まで出向いてくるとは。
ゲートがあるから移動は楽なんだろうけど。
「おはようございます皆さん。いやぁ正直勝手にやっても良かったんですけど、なんとなく冒険者ってエリアキーパーの事甘く見てるんじゃないなぁと不安に思いまして。
そこから結構近付いても反応がなかったし、エリアキーパーというこの世界の頂点に君臨する存在を安全に視認できるっていうのは、冒険者達にとっては必要なことなのかなと愚考しました」
「南側のエリアキーパーは、巨人グラメダワルケアだったか……。
本当に安全に、その姿を確認できると申すか?」
「スキル『遠目』は試さなかったですけど、肉眼でバッチリ見えましたし、そこからかなり近寄っても無反応でしたからね。
ただまぁ……。誰にでも開放しちゃうと心折れちゃいそうなんで、迷宮を自力で踏破した経験があるものだけ、とかの多少厳しめの制限を設けた方がいいかも?
ユリバファルゴアの時の話になりますけど、『精神安定』持ちのうちの嫁が正気を失いかけましたかね。『精神安定』を持った上で深階層域まで行った事がある冒険者じゃないと、心が折れてしまうかもしれません」
「……トーマさん。私達が確認しても大丈夫だと思いますか?」
ええ、そんなの判断出来ないんだけど……。
この流れなら、恐らく全員が『精神安定』取得済みなんだろうけどさ。
「んー。待機状態ですから、多分大丈夫だとは思いますけど……。
正気を失ったりしても責任は持ちませんよ?」
「ええ、大丈夫ですよ。少なくとも私は、ザルトワシルドアに沈められる船を見たこともありますしね」
「僕もユリバファルゴアを、超長距離からだけど見たことあるから、多分平気だ」
へぇ? どうやって見たんだろ。
おとり、とかなのかなぁ。あんまり深く考えない方が良さそうか。
「それじゃ俺は道を作っちゃうんで先行ってますね。ミルズレンダから真っ直ぐ進んで、1番最初にぶつかる山に道を作ります。皆さんは護衛でも連れて後から来てください。
あ、一応言っておきますが、雲の上まで登ることになりますからね? 1日以上かかる事を覚悟してくださいよ」
「えぇ……。ちなみにトーマさんはどのくらいの時間で登ったわけ?」
「んー、そうですね。安価な武器の補修再生にかかる時間くらいですかね?」
「えええ、意味が分からないよ……」
「それではしっかり準備をしてから向かってくださいね。まぁ道はもう作っちゃうんで、都合が悪ければ今日中に確認する必要もないと思いますけど」
さってとー。どんな道を作ろうかな?
ギルドを後にし、ミルズレンダから真っ直ぐ南下して、始めに目に入った岩山を、リモデリングで成型していく。
登山道と言っても、岩山の表面を階段状に成型していくしかないよな。
土魔法も併用して、階段の強度もなるべく上げながら作業を進める。
ウェブクラフターのおかげで作業スピードがおかしいことになっている。
5分もかからず100段以上の階段が出来てしまった。
後続が来るのは大分後だろうし、どんどん作業を進めていこう。
大勢が登る事を考えて、多少幅は広くしておく。あまり段差は高くしたくないけど、頂上まで遠すぎるからある程度の段差はつけざるを得ない。
ここを登るのはある程度の実力者に限られるだろうし、休憩スペースは500段前後を目安に設置するか。座って休める程度の踊り場があれば充分だろ。
1段30センチくらいかなー? それを500段ってことは、150メートルくらいで休憩するわけか。
やべぇ先長そう。どっちも図ったわけじゃなくて目算だから誤差はあるだろうけど。
黙々と山頂を目指して階段を作っていくけど、全然先が見えないな。普通に登るのは大変だわ。軽い気持ちで登る奴が出ないのはいいかもしれないけど。
あー、でもこういう単調作業は久しぶりな感じがするなぁ。
俺ってこの世界に来てから、ずーっと単純な作業を繰り返してばかりだった気がする。
そんな俺がエリアキーパーなんざと戦わなきゃならなくなったのは、全部どっかの馬鹿猫のせいだよな。まぁ家ごと滅びたみたいだけど。
ほぼ朝イチで作業を始めたのに、山頂に到達したのは日没をかなり過ぎてからだった。
山頂も少し整備して、30人程度が並べる広さを確保し、転落防止の手すりも作っておこう。至れり尽くせりかな?
しかしウェブクラフターの能力は凄いなぁ。
正確に数えてないけど、多分7000段以上の階段を、たった1日で作りきってしまったぞ。俺1人で。
そして半日リモデリングと土魔法を使っていたのに、作業終了まで魔力が持ってしまったのもビビる。
『魔力量増加:大』の恩恵は凄まじいらしい。
……さて、みんな登ってきてるのか、確認せずに帰る訳にはいかないよな。
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