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12章 俺が望んだ異世界生活
515 雪解け
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話し合いと言って良いのか良くわからなかったけど、アラタが発狂してアンジェが落ち込んで、俺も現時点で言える事も特になくなったので、タケルの提案で解散する事になった。
家を出る俺とタケルを、ソリスタとアリスが見送りに来た。
「今日はありがとうございました。
絶望的な状況だとばかり思ってたけど、考え方を変えるだけで色々なことが見えてくるものだと知ることが出来たわ」
「俺からも礼を言おう。本当に手間をかけたな。ありがとう。
しかし少し意外だったぞ。まさかトーマがアリスを認めるようなことを言うとは思わなかった」
「あ? そんなこと言ったっけ?」
終始アラタをディスってた記憶しかないな。
「いやいや。アラタよりアリスのほうが強いんじゃねぇのかって言ってたじゃねぇかよ。
俺も正直同じ印象を受けたけど、トーマが言ったのはびっくりしたぜ?」
「あーあれなぁ……。
いやだってさぁ。探索初期からスキル取りまくってスキル頼みで探索してきたアラタと、地道に自分の力だけで114階層に到達したアリスだったら、普通にアリスのほうが積み重ねてるもんが多いだろ?
俺だって地道に迷宮を攻略したからこそ、それに必要な労力や苦労を無視できねぇよ。アリスはソロで迷宮を踏破したんだ。冒険者としてはひと握りしかいないレベルの人間になってんじゃねぇの?」
「ふむ。トーマのその頓着の無さが俺には恐ろしく感じられるが、自分の妻が評価されているというのは悪い気分ではないな」
「実際今回の話でも、グラメダワルケアを見たときの立ち直りも他の3人より早かったし、俺の話にも1番積極的に参加していた印象だからな。
ごちゃごちゃ考えても答えが出ないなら行動するしかない。それを白金板3100枚納める間に実感したんじゃねぇの?」
絶望的な状況だからどうしたらいいのか分からない。
そうやって動き出さないままだったら、あの3人はまだ城で幽閉されていただろうからな。
「あーそうだ。アリスを殺そうと思ってタケルに止められた時、『あの時殺さないで良かったって言ってもらえるように』とかなんとかタケルに言われたよな。
お前らがエリアキーパーを倒してくれたんなら、その時は殺さなくて良かったなぁって心から言えると思うぜ?」
「ちっ、それはもう黒歴史なんだよ俺にとっちゃ!
つまんねぇこと言ってねぇでさっさと帰んぜ!」
タケルが怒ってルイナスリームの方に歩いていってしまった。
あの時のタケル、今のタケルから見て完全に黒歴史だよなぁ。
このネタで一生弄れそうだ。
「……トーマ。心から感謝する。今回は話をしてくれてありがとう。
必ずやエリアキーパーを倒してみせるぞ。お前に救ってもらった俺の人生全てを賭してもな!」
タケルを見ているうちにアリスを胸に抱きしめたソリスタが、なんだか決意に燃えている。
「救ってもらったと思ってんなら無駄にすんじゃねぇよ。
精々幸せになりやがれ。それが俺に恩を返すってこった」
まったく見せ付けてくれやがって。嫁が恋しくなるじゃねぇか。
早く帰りたくて、魔導具を使ってゲートを使用した。
自宅に戻るとちょうど日が沈むところだった。
結構話し込んでしまったようだな。丸1日もルイナスリームに居たのか。
「ただいまー。少し早く帰ってこれたー」
「あ、トーマおかえりー。『リマ』ー。お父さんが帰ってきたよー?」
娘を抱きながらリーンが迎えてくれた。
娘のリマを抱いたままのリーンを優しく抱きしめる。
「あららー? なにかあった……、って感じじゃないねー?
珍しいね、トーマが何もなくても甘えてくるなんて」
「いやぁちょっと他の夫婦に見せ付けられちゃったから、みんなが恋しくなっちゃっただけだよ。
可愛い奥さんも娘も居る俺は、なんって幸せ者なんだろうなぁ」
「うーん。私もトーマに貰ってもらえて幸せだけど、先輩としてトーマを独り占めするわけにはいかないからねー。
さぁトーマっ。みんなにも同じことして同じ事を言ってきなさいっ」
「ははは。了解センパイ。いつもありがとうなリーン」
最後に軽く唇を重ねて2人を解放する。
そして他のみんなにも同じ事をして回るのだった。
「へぇ~!? ソリスタとアリスがねー!
私としては意外な組み合わせかなー? アリスってソリスタの嫌いな女性だと思ってたよー」
「そうですねぇ。リーンの言う通り、ソリスタは他人に甘えている人はあまり好きではないと思います。
逆に言えばソリスタが認めるほどにアリスは努力したということなのでしょうね」
「うん。あの2人がくっついたのも意外だけど、そもそもあの2人が誰かと結ばれるとは思ってなかったかな。
そういう意味では相性が良かったって言えるのかもしれないね」
「ソリスタは人に気を遣い過ぎるから人と過ごしたがらないんだよね……。
第一印象が最悪で、気を遣う必要がなかったのが逆に良かったのかも……?」
「ソリスタの奴ぁ元カンパニーメンバーの中でも戦闘力はかなり高いほうだからなぁ。あいつが加わったんならエリアキーパーの打倒にも大きく貢献できるかもしれねぇ。
はっ! こりゃあちょっと面白くなってきたかもなぁ?」
「ソリスタは芯がしっかりしていて甘えを許さないって感じの人っすからね。アリスにもいい影響を与えてくれそうっすよ」
「あ~! ほんっと結婚してて良かったって思うわぁ。トーマに貰われてなかったら他の女の幸福なんて、絶対に祝福出来なかったわよ。
自分が幸せじゃないと人の幸せも祝えないなんて、浅ましい女だと思うけど」
「この先みんなずっと幸せなら問題ないだろ。
カンナが浅ましいなら俺なんか単細胞だって話だよ。みんなが居るってだけで幸せで仕方ないからな」
嫁も娘も息子も、シンもハルもその息子も、家族がいるって幸福なことだ。
あの2人も今なら王国中を敵に回してたって幸せになれる実力があるだろう。
自分が幸せなら他人を攻撃しようとは思わなくなるはず。
随分遠回りしたみたいだけど、もう間違えないでくれるといいんだがなぁ。
家を出る俺とタケルを、ソリスタとアリスが見送りに来た。
「今日はありがとうございました。
絶望的な状況だとばかり思ってたけど、考え方を変えるだけで色々なことが見えてくるものだと知ることが出来たわ」
「俺からも礼を言おう。本当に手間をかけたな。ありがとう。
しかし少し意外だったぞ。まさかトーマがアリスを認めるようなことを言うとは思わなかった」
「あ? そんなこと言ったっけ?」
終始アラタをディスってた記憶しかないな。
「いやいや。アラタよりアリスのほうが強いんじゃねぇのかって言ってたじゃねぇかよ。
俺も正直同じ印象を受けたけど、トーマが言ったのはびっくりしたぜ?」
「あーあれなぁ……。
いやだってさぁ。探索初期からスキル取りまくってスキル頼みで探索してきたアラタと、地道に自分の力だけで114階層に到達したアリスだったら、普通にアリスのほうが積み重ねてるもんが多いだろ?
俺だって地道に迷宮を攻略したからこそ、それに必要な労力や苦労を無視できねぇよ。アリスはソロで迷宮を踏破したんだ。冒険者としてはひと握りしかいないレベルの人間になってんじゃねぇの?」
「ふむ。トーマのその頓着の無さが俺には恐ろしく感じられるが、自分の妻が評価されているというのは悪い気分ではないな」
「実際今回の話でも、グラメダワルケアを見たときの立ち直りも他の3人より早かったし、俺の話にも1番積極的に参加していた印象だからな。
ごちゃごちゃ考えても答えが出ないなら行動するしかない。それを白金板3100枚納める間に実感したんじゃねぇの?」
絶望的な状況だからどうしたらいいのか分からない。
そうやって動き出さないままだったら、あの3人はまだ城で幽閉されていただろうからな。
「あーそうだ。アリスを殺そうと思ってタケルに止められた時、『あの時殺さないで良かったって言ってもらえるように』とかなんとかタケルに言われたよな。
お前らがエリアキーパーを倒してくれたんなら、その時は殺さなくて良かったなぁって心から言えると思うぜ?」
「ちっ、それはもう黒歴史なんだよ俺にとっちゃ!
つまんねぇこと言ってねぇでさっさと帰んぜ!」
タケルが怒ってルイナスリームの方に歩いていってしまった。
あの時のタケル、今のタケルから見て完全に黒歴史だよなぁ。
このネタで一生弄れそうだ。
「……トーマ。心から感謝する。今回は話をしてくれてありがとう。
必ずやエリアキーパーを倒してみせるぞ。お前に救ってもらった俺の人生全てを賭してもな!」
タケルを見ているうちにアリスを胸に抱きしめたソリスタが、なんだか決意に燃えている。
「救ってもらったと思ってんなら無駄にすんじゃねぇよ。
精々幸せになりやがれ。それが俺に恩を返すってこった」
まったく見せ付けてくれやがって。嫁が恋しくなるじゃねぇか。
早く帰りたくて、魔導具を使ってゲートを使用した。
自宅に戻るとちょうど日が沈むところだった。
結構話し込んでしまったようだな。丸1日もルイナスリームに居たのか。
「ただいまー。少し早く帰ってこれたー」
「あ、トーマおかえりー。『リマ』ー。お父さんが帰ってきたよー?」
娘を抱きながらリーンが迎えてくれた。
娘のリマを抱いたままのリーンを優しく抱きしめる。
「あららー? なにかあった……、って感じじゃないねー?
珍しいね、トーマが何もなくても甘えてくるなんて」
「いやぁちょっと他の夫婦に見せ付けられちゃったから、みんなが恋しくなっちゃっただけだよ。
可愛い奥さんも娘も居る俺は、なんって幸せ者なんだろうなぁ」
「うーん。私もトーマに貰ってもらえて幸せだけど、先輩としてトーマを独り占めするわけにはいかないからねー。
さぁトーマっ。みんなにも同じことして同じ事を言ってきなさいっ」
「ははは。了解センパイ。いつもありがとうなリーン」
最後に軽く唇を重ねて2人を解放する。
そして他のみんなにも同じ事をして回るのだった。
「へぇ~!? ソリスタとアリスがねー!
私としては意外な組み合わせかなー? アリスってソリスタの嫌いな女性だと思ってたよー」
「そうですねぇ。リーンの言う通り、ソリスタは他人に甘えている人はあまり好きではないと思います。
逆に言えばソリスタが認めるほどにアリスは努力したということなのでしょうね」
「うん。あの2人がくっついたのも意外だけど、そもそもあの2人が誰かと結ばれるとは思ってなかったかな。
そういう意味では相性が良かったって言えるのかもしれないね」
「ソリスタは人に気を遣い過ぎるから人と過ごしたがらないんだよね……。
第一印象が最悪で、気を遣う必要がなかったのが逆に良かったのかも……?」
「ソリスタの奴ぁ元カンパニーメンバーの中でも戦闘力はかなり高いほうだからなぁ。あいつが加わったんならエリアキーパーの打倒にも大きく貢献できるかもしれねぇ。
はっ! こりゃあちょっと面白くなってきたかもなぁ?」
「ソリスタは芯がしっかりしていて甘えを許さないって感じの人っすからね。アリスにもいい影響を与えてくれそうっすよ」
「あ~! ほんっと結婚してて良かったって思うわぁ。トーマに貰われてなかったら他の女の幸福なんて、絶対に祝福出来なかったわよ。
自分が幸せじゃないと人の幸せも祝えないなんて、浅ましい女だと思うけど」
「この先みんなずっと幸せなら問題ないだろ。
カンナが浅ましいなら俺なんか単細胞だって話だよ。みんなが居るってだけで幸せで仕方ないからな」
嫁も娘も息子も、シンもハルもその息子も、家族がいるって幸福なことだ。
あの2人も今なら王国中を敵に回してたって幸せになれる実力があるだろう。
自分が幸せなら他人を攻撃しようとは思わなくなるはず。
随分遠回りしたみたいだけど、もう間違えないでくれるといいんだがなぁ。
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