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736 婚約
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「は……ははっ……! こ、これが閃刃……これが魔力を走らせるということかぁ……!」
先ほどまで難しい顔をしていた陛下が、喜々として俺に切りかかってくる。
その快楽殺人者を髣髴とさせる姿にはドン引きせざるを得ないけど、どうやらカレン陛下は魔力制御技術の入り口に到達することが出来たようだ。
「まさに今陛下が振るっているのが閃刃です。種族的に脆弱な人間族が強くなるためには必須の技術であり、けれどまだそこは入り口の入り口でしかないことを忘れないでください」
「くくくっ! 飛躍的に速度を上昇させる閃刃ですら入り口に過ぎぬかっ! あっさりと私の剣を受けきる貴様が言うと説得力があるではないかぁっ!」
元々カルナスの閃刃を知っていたためか、カレン陛下の魔力制御の上達速度には目を見張るものがある。
瞬く間に魔力制御のコツを掴み、剣速を増して、自分が招待したはずの国賓の俺を殺す気で襲い掛かってくる。
横目ではラトリアが静かに竜化を解いて、フラッタを抱きしめながら俺と陛下のやり取りを満足げに眺めている。
どうやらカレン陛下が無事に魔力制御を会得出来たのが嬉しいようだ。
「ではダンよ! この技術の先にはどんなことが出来るようになるのか、大雑把でいいから教えてくれ! 魔力制御の果てに人間族は何が出来るのだっ!?」
「魔力制御の果ては種族差が無くなりますよ。竜化のように魔力を纏い、獣人族のような敏捷性とドワーフ族のような筋力を発揮することも可能になります。加速程度で満足するのは勿体無さ過ぎますよ」
「種族差が無くなるなど、我ら脆弱な人間族には夢のような話だなぁっ!? 普通なら与太話だと切って捨てるところだが、目の前で海洋生物を返り討ちにされてはぐうの音も出んよっ!」
そっか。カレン陛下には俺が戦ってるところを見せちゃってるのか。
だから陛下の中で人間族の限界みたいな意識が無くなっちゃって、閃刃の先の領域にも素直に意識を向けられているわけか。
まだまだ加速し続ける陛下の閃刃の練度は、俺に切りかかってきた時のカルナスよりもずっと上だろう。
馬鹿殿下に構って帝国を離れているうちに、本当に彼の居場所は無くなってしまうんじゃないか?
などと余計な事を考えていたら、陛下が玉のような汗をかき始めたことに気付く。
まだ1分ほどしか経っていないけど、もう魔力枯渇の症状が出始めたようだ。
恐らくハイテンション状態で、加減せずに全力で閃刃を使用しているためだろうな。
「陛下。魔力枯渇の症状が出始めてますよ。そろそろ剣を引いてください」
「断るっ! こんな楽しい事を止められる筈がなかろう! どうしてもというのなら力ずくで止めてみせいっ!」
「皇帝陛下に強硬手段とか取りたくないんですけど~? 大体このあと帝国を案内してくれる約束でしょ。魔力枯渇を起こしちゃダメじゃないですか」
「はははっ! 何処までも余裕だな!? では見せてみよダン、魔力制御の先の世界を!」
あ、まんまと陛下に乗せられちまったらしい。
閃刃を習得された陛下はその先を見る為に、あえて魔力枯渇のリスクを冒して俺を煽っていたのか。
「今から貴様になにをされても一切の不問としよう! この場で押し倒され無理矢理孕まされても文句は言わんっ! 私の閃刃、止められるものなら止めてみせよぉっ!」
「チャンスなのダン! 今すぐ陛下とえっちしちゃうのーっ! 新しいお嫁さんゲットなのーっ!」
「チャンスじゃねーーーっ!? 毎度毎度乗り気すぎるよニーナァァァッ!?」
真昼間から砂浜で隣国の皇帝陛下を無理矢理押し倒し、その国の住人と俺の家族が見守る中で力ずくで孕ませるって……!
そういうテーマの創作物なら大好物だけど、実際に自分がやるとなったら話は別なんだってばー!!
「只今戻りましたご主人様。大変面白そうな事になっておりますねっ。ヤっちゃえご主人様ーっ」
「お帰りシャロ! でも状況も分かってないくせに煽るのは感心しないなぁっ!?」
「私の時と同じですよ旦那様。正面から屈服させて、正面から注ぎ込んで差し上げてください。カレン陛下もそれをお望みでしょう」
「ヴァルゴもおかえりなさいっ! 帝国観光前に1度全員にたっぷり相手してもらうから覚悟しとけよーーっ!?」
みんながゴーサインを出してくるので、俺の体はすっかり臨戦態勢になってしまった。
けれど流石にこの劣情を陛下にぶつけるわけにはいかないので、家族のみんなにたっぷりじっくりねっとりとぶつけさせてもらおうじゃないかぁ。
などとエロい妄想を爆発させていたら、陛下の顔色が一気に悪くなっていく。
これ以上手を拱いていると危ないな。
「それじゃ失礼しますよ陛下。多少の痛みは覚悟してくださいね?」
「ふっ! 舐められたものだな! 確かに経験は無いが痛みには慣れている! 貴様のイチモツなど余裕で咥え込んでみせるわっ!」
「そうじゃねーよこのエロボケ陛下! シャロといいリーチェといい、この世界では身分が高くなるとエロくなる決まりでもあるの!?」
「ぐ、ぁ……!?」
これ以上突っ込んでも仕方ないので、いやいやナニも突っ込んだりしませんが、ってそうじゃなくて。
治療魔法を唱えながら陛下の両手首を強く打ちつけ剣を手放させ、気をつけの姿勢で固定するように陛下の両腕を巻き込んで抱き締める。
そしてそのまま暴れられないように、陛下を砂浜に押し倒した。
押し倒しても不問って言われたからな。利用させてもらう。
立っていると足捌きだけでも閃刃の行使を続けられかねないけど、流石に押し倒されて拘束されては文字通り手も足も出ないはずだ。
「どうしたダンよ。押し倒すだけで女は孕まんぞ? すっかり硬くなったコイツを私に中に挿れないとなぁ?」
「擦んないでくれますぅ!? そこに触れていいのは家族のみんなだけですのでー!」
「ふん、頑なではないか。これほどアプローチをしても脈無しとは、女性としての自信を失ってしまいそうだ」
「しおらしくしてもダメですー。さっさと俺の股間から手を離して、安静にして魔力の回復に努めてくださいー」
「連れん奴だなぁ。細君の皆様はどうやって貴様を射止めたのやら……」
溜め息を吐きながら俺の股間から手を離し、そのまま両腕を俺の背中に回して静かに抱き付いてくるカレン陛下。
誘惑やからかいの意図を感じない優しい抱擁に、逆に俺は戸惑ってしまう。
「カレン陛下? なんでそんな……」
「貴様の望む感情ではないのかもしれんが、私が貴様を慕っているのは本当だぞ? 貴様の子を孕みたいとも思うし、貴様と共に生きたいとも思っている。……これだけでは足らんのか?」
「……このタイミングでそのセリフは反則じゃないっすかねぇ?」
ひょっとしたらこれも演技なのかもしれないけれど、弱々しく本音を語る陛下の様子に流石にバツが悪くなる。
ここで、皇帝陛下を娶るなんて面倒臭そうで嫌だって言ったら、家族のみんなにボコボコにされそうだ。
カレン陛下は美人だし、うちの家族も全員がゴーサインを出している以上受け入れてもいいのかもしれない。
けれど俺と陛下の間には、1つ解決しなくてはいけない問題が残っているんだよな。
「陛下の気持ちは嬉しいです。ですが今の状況で陛下を受け入れるわけには参りません」
「……神器のことか」
「ですです。神器の扱いによっては、俺と陛下はまだ敵対してしまう可能性が残っていますので」
出会った頃と比べて神器への執着心が薄れているように見えるカレン陛下だけど、それでもまだ俺達は神器を巡って対立関係にある。
友好的な陛下のおかげで敵対こそしていないものの、いつ敵対してもおかしくない状況なのだ。
こんな状況で陛下を娶るわけにはいかないだろう。
「俺は友人である陛下とも敵対する気は無いですけど、家族となった陛下と敵対する気はもっとありませんからね。神器の件が片付くまで、陛下を家族に迎えるわけには……」
「つまり神器の件が片付いたら、カレン陛下をお嫁さんにするってことだねーっ!?」
「ちょっ、ニーナ!? そうは、そうは言ってな……」
「いいや? 神器の件が片付いたら私を家族に迎える! 今貴様ははっきりとそう口にしたぞっ!」
「してないよっ!? 人の発言を数秒で捏造するのは止めてくれます!? 俺は今陛下を受け入れられない事情を説明しただけで……」
「その事情を解消できたら受け入れると言うことだろうがっ! こちらの受け入れ準備はとっくに済んでいるのだから、貴様もいい加減男として覚悟を決めよっ!」
「ちょいちょい下ネタを挟んでくるのは止めてくださいますぅ!? 俺はこれ以上奥さんを増やす気なんて無いんですってばぁっ!」
バッと陛下から身を離して、終始ニヤニヤしているニーナの平らなおっぱいにダイブする。
おっぱいに飛び込んだ俺の頭を抱きかかえ、よしよしとなでてくれるニーナだったけど、それでも俺の味方というわけではなかった模様。
「ということでカレン様ー。ダンのお嫁さんになりたかったら、神器の件を早く片付けてねー?」
「ニーナ!? ちょ、むぐぐ……!」」
慌てて抗議しようとする俺の頭を全力で抱き締め、おっぱいに押し付けることで口封じを図るニーナ。
だが残念ながらニーナのまっ平らなおっぱいでは、俺の口を封じることなど……あ、硬くなってる? はむはむ。
「ダンに神器を譲ってもいいし、ダンの神器を受け取ってもいいの。全く関係ない第三者を連れて来たって構わないから、カレン様とダンの間で神器の問題が解消されれば充分なのー」
「うむっ。済まんなニーナ。貴様の計らいに感謝しよう!」
はっ!? ニーナの乳首を服の上からはむはむしていたら、いつの間にか具体的な話が進んでしまっているじゃないか!
早いところ俺自身の口から否定しないと……って、キスがしたい? こんな大勢の前でニーナったらしょうがないなー。ちゅー。
「実は神器を巡って1つの報告があるのだが……。あまり人に聞かせられる話でもなくてな」
「あ、それならぼくに任せてください。たった今精霊魔法で音に干渉しました。ぼく達の会話はぼくたち家族と陛下にしか聞こえないようになってます
「む、一瞬でそのような複雑な操作を……? いや、今はそれを考えるべき時ではないか。ありがとうリーチェ殿。貴殿の心遣いに感謝する」
あれ? なんかリーチェにも恭しい態度を取るんだね?
皇帝であるカレン陛下と王女様であるリーチェなら、陛下の方が身分は上の気がするけど……。
いや、そう言えばリーチェって建国の英雄だったわ。腹ペコエロス大明神の印象が強過ぎて忘れてた。
「先日始界の王笏に拒絶されてしまったからな。実は識の水晶もダンに譲り、私はそのままダンの伴侶に収まるという話が、帝国上層部でも本気で検討され始めているのだ」
「その場合、ごしゅ……、夫の扱いはどうなるのでしょう? 帝国のシステム的に、夫に皇帝の座を譲るという事はないのでしょうが」
「安心してくれシャーロット殿。私との婚姻以上の事を求める気は無い。仮に何かを望んでも、ダンが応えてくれるとは限らんしなぁ?」
仮に応えてくれたとしても、コイツは加減を知らんからなぁと溜め息を吐くカレン陛下。
その言葉にラトリアとムーリが実感の篭った頷きを繰り返しているのが感じられる。
よし、2人にはこのあとたっぷりお仕置きしないとなっ。
「実はだな。ダンが帝国に齎した物が多すぎて、識の水晶の有用性が疑われ始めているのだ。扱い辛い神器を崇めるよりも、分かりやすい恩恵を齎してくれたダンを評価すべきではないかとな」
「え、えぇ……? とうとう神器よりも評価されちゃったんですか、私たちの愛するこの人は……」
「ひょっとしたらキュールから聞いているかもしれんが、識の水晶はかなり気難しくてな。1度の使用には莫大な時間とコストが必要となるのだ。そこまでしても狙った答えが返ってくるとも限らない。はっきり言って使い辛いのだよ」
「なるほど。夫が凄いと言うよりは、識の水晶が厄介者であるということですか」
シャロの言葉にウンザリした様子で頷くカレン陛下。
長きに渡って陛下のラインフェルド家を助力してきたと言われる識の水晶だけど、両者の関係は決して良好なものではないようだな。
「先日、ダンから大量のマジックアイテムが届けられただろう? とりわけサークルストラクチャーは帝国の民に大好評でな。識の水晶よりもダンを優先すべきという声が強まっているのだ」
「スペルディア家の私がこんなことを質問するのは角が立つかもしれませんが……。帝国にはそれほどまでに転職魔法陣が不足していたのですか?」
「まぁな。スペルディア家の支配を逃れて新天地を求めた帝国の民を、代々のスペルド国王は良く思わなかったらしくてな? 帝国全域でも7つしか転職魔法陣が存在していなかったのだ」
「な、7つだけって……!」
「庶民には移動魔法の利用も楽ではないからな。なるべく国からの補助も行なっていたが万全では無かった。しかし今回ダンのおかげで各都市に必要な転職魔法陣を用意してやれたのだ。帝国民の喜びようと言ったらなかったのだぞ?」
おかげでカレン陛下の支持率が急上昇し、他の対立候補とは大きく水をあけることが出来たらしい。
なので執務を放り出して海岸に出張ってきても、俺と会うためというだけで許されるほど、俺の存在が重要視されているみたいだなぁ。
今までは戦士、旅人、商人、魔法使い、兵士、騎士、冒険者の転職魔法陣しか存在しておらず、その他の職業を臨む場合はスペルド王国まで足を運ばなければいけなかったようだ。
その7つの転職魔法陣も帝都フラグニークに集中していた為、随分長いこと不便を強いられていたようだ。
「ラトリア殿のおかげで閃刃は習得できるし、ダンとの婚約も出来たのだから今日は良い日だなっ! しかもこのあとは婚約者殿を連れて帝国を案内も出来るのだっ! 初めてのデートに心が踊ってしまうではないかっ」
ああっ! ニーナに舌と心を奪われている間に、カレン陛下との婚約が完全に成立してしまったじゃないか!
でもニーナにキスされちゃうと、他のことなんか一切考えられなくなっちゃうだよぉ……! ニーナ大好きーっ!
だけど、お仕置きはさせてもらっちゃうよー!
陛下の魔力が回復するまで、俺達家族は迎賓館でご休憩だぁい!
先ほどまで難しい顔をしていた陛下が、喜々として俺に切りかかってくる。
その快楽殺人者を髣髴とさせる姿にはドン引きせざるを得ないけど、どうやらカレン陛下は魔力制御技術の入り口に到達することが出来たようだ。
「まさに今陛下が振るっているのが閃刃です。種族的に脆弱な人間族が強くなるためには必須の技術であり、けれどまだそこは入り口の入り口でしかないことを忘れないでください」
「くくくっ! 飛躍的に速度を上昇させる閃刃ですら入り口に過ぎぬかっ! あっさりと私の剣を受けきる貴様が言うと説得力があるではないかぁっ!」
元々カルナスの閃刃を知っていたためか、カレン陛下の魔力制御の上達速度には目を見張るものがある。
瞬く間に魔力制御のコツを掴み、剣速を増して、自分が招待したはずの国賓の俺を殺す気で襲い掛かってくる。
横目ではラトリアが静かに竜化を解いて、フラッタを抱きしめながら俺と陛下のやり取りを満足げに眺めている。
どうやらカレン陛下が無事に魔力制御を会得出来たのが嬉しいようだ。
「ではダンよ! この技術の先にはどんなことが出来るようになるのか、大雑把でいいから教えてくれ! 魔力制御の果てに人間族は何が出来るのだっ!?」
「魔力制御の果ては種族差が無くなりますよ。竜化のように魔力を纏い、獣人族のような敏捷性とドワーフ族のような筋力を発揮することも可能になります。加速程度で満足するのは勿体無さ過ぎますよ」
「種族差が無くなるなど、我ら脆弱な人間族には夢のような話だなぁっ!? 普通なら与太話だと切って捨てるところだが、目の前で海洋生物を返り討ちにされてはぐうの音も出んよっ!」
そっか。カレン陛下には俺が戦ってるところを見せちゃってるのか。
だから陛下の中で人間族の限界みたいな意識が無くなっちゃって、閃刃の先の領域にも素直に意識を向けられているわけか。
まだまだ加速し続ける陛下の閃刃の練度は、俺に切りかかってきた時のカルナスよりもずっと上だろう。
馬鹿殿下に構って帝国を離れているうちに、本当に彼の居場所は無くなってしまうんじゃないか?
などと余計な事を考えていたら、陛下が玉のような汗をかき始めたことに気付く。
まだ1分ほどしか経っていないけど、もう魔力枯渇の症状が出始めたようだ。
恐らくハイテンション状態で、加減せずに全力で閃刃を使用しているためだろうな。
「陛下。魔力枯渇の症状が出始めてますよ。そろそろ剣を引いてください」
「断るっ! こんな楽しい事を止められる筈がなかろう! どうしてもというのなら力ずくで止めてみせいっ!」
「皇帝陛下に強硬手段とか取りたくないんですけど~? 大体このあと帝国を案内してくれる約束でしょ。魔力枯渇を起こしちゃダメじゃないですか」
「はははっ! 何処までも余裕だな!? では見せてみよダン、魔力制御の先の世界を!」
あ、まんまと陛下に乗せられちまったらしい。
閃刃を習得された陛下はその先を見る為に、あえて魔力枯渇のリスクを冒して俺を煽っていたのか。
「今から貴様になにをされても一切の不問としよう! この場で押し倒され無理矢理孕まされても文句は言わんっ! 私の閃刃、止められるものなら止めてみせよぉっ!」
「チャンスなのダン! 今すぐ陛下とえっちしちゃうのーっ! 新しいお嫁さんゲットなのーっ!」
「チャンスじゃねーーーっ!? 毎度毎度乗り気すぎるよニーナァァァッ!?」
真昼間から砂浜で隣国の皇帝陛下を無理矢理押し倒し、その国の住人と俺の家族が見守る中で力ずくで孕ませるって……!
そういうテーマの創作物なら大好物だけど、実際に自分がやるとなったら話は別なんだってばー!!
「只今戻りましたご主人様。大変面白そうな事になっておりますねっ。ヤっちゃえご主人様ーっ」
「お帰りシャロ! でも状況も分かってないくせに煽るのは感心しないなぁっ!?」
「私の時と同じですよ旦那様。正面から屈服させて、正面から注ぎ込んで差し上げてください。カレン陛下もそれをお望みでしょう」
「ヴァルゴもおかえりなさいっ! 帝国観光前に1度全員にたっぷり相手してもらうから覚悟しとけよーーっ!?」
みんながゴーサインを出してくるので、俺の体はすっかり臨戦態勢になってしまった。
けれど流石にこの劣情を陛下にぶつけるわけにはいかないので、家族のみんなにたっぷりじっくりねっとりとぶつけさせてもらおうじゃないかぁ。
などとエロい妄想を爆発させていたら、陛下の顔色が一気に悪くなっていく。
これ以上手を拱いていると危ないな。
「それじゃ失礼しますよ陛下。多少の痛みは覚悟してくださいね?」
「ふっ! 舐められたものだな! 確かに経験は無いが痛みには慣れている! 貴様のイチモツなど余裕で咥え込んでみせるわっ!」
「そうじゃねーよこのエロボケ陛下! シャロといいリーチェといい、この世界では身分が高くなるとエロくなる決まりでもあるの!?」
「ぐ、ぁ……!?」
これ以上突っ込んでも仕方ないので、いやいやナニも突っ込んだりしませんが、ってそうじゃなくて。
治療魔法を唱えながら陛下の両手首を強く打ちつけ剣を手放させ、気をつけの姿勢で固定するように陛下の両腕を巻き込んで抱き締める。
そしてそのまま暴れられないように、陛下を砂浜に押し倒した。
押し倒しても不問って言われたからな。利用させてもらう。
立っていると足捌きだけでも閃刃の行使を続けられかねないけど、流石に押し倒されて拘束されては文字通り手も足も出ないはずだ。
「どうしたダンよ。押し倒すだけで女は孕まんぞ? すっかり硬くなったコイツを私に中に挿れないとなぁ?」
「擦んないでくれますぅ!? そこに触れていいのは家族のみんなだけですのでー!」
「ふん、頑なではないか。これほどアプローチをしても脈無しとは、女性としての自信を失ってしまいそうだ」
「しおらしくしてもダメですー。さっさと俺の股間から手を離して、安静にして魔力の回復に努めてくださいー」
「連れん奴だなぁ。細君の皆様はどうやって貴様を射止めたのやら……」
溜め息を吐きながら俺の股間から手を離し、そのまま両腕を俺の背中に回して静かに抱き付いてくるカレン陛下。
誘惑やからかいの意図を感じない優しい抱擁に、逆に俺は戸惑ってしまう。
「カレン陛下? なんでそんな……」
「貴様の望む感情ではないのかもしれんが、私が貴様を慕っているのは本当だぞ? 貴様の子を孕みたいとも思うし、貴様と共に生きたいとも思っている。……これだけでは足らんのか?」
「……このタイミングでそのセリフは反則じゃないっすかねぇ?」
ひょっとしたらこれも演技なのかもしれないけれど、弱々しく本音を語る陛下の様子に流石にバツが悪くなる。
ここで、皇帝陛下を娶るなんて面倒臭そうで嫌だって言ったら、家族のみんなにボコボコにされそうだ。
カレン陛下は美人だし、うちの家族も全員がゴーサインを出している以上受け入れてもいいのかもしれない。
けれど俺と陛下の間には、1つ解決しなくてはいけない問題が残っているんだよな。
「陛下の気持ちは嬉しいです。ですが今の状況で陛下を受け入れるわけには参りません」
「……神器のことか」
「ですです。神器の扱いによっては、俺と陛下はまだ敵対してしまう可能性が残っていますので」
出会った頃と比べて神器への執着心が薄れているように見えるカレン陛下だけど、それでもまだ俺達は神器を巡って対立関係にある。
友好的な陛下のおかげで敵対こそしていないものの、いつ敵対してもおかしくない状況なのだ。
こんな状況で陛下を娶るわけにはいかないだろう。
「俺は友人である陛下とも敵対する気は無いですけど、家族となった陛下と敵対する気はもっとありませんからね。神器の件が片付くまで、陛下を家族に迎えるわけには……」
「つまり神器の件が片付いたら、カレン陛下をお嫁さんにするってことだねーっ!?」
「ちょっ、ニーナ!? そうは、そうは言ってな……」
「いいや? 神器の件が片付いたら私を家族に迎える! 今貴様ははっきりとそう口にしたぞっ!」
「してないよっ!? 人の発言を数秒で捏造するのは止めてくれます!? 俺は今陛下を受け入れられない事情を説明しただけで……」
「その事情を解消できたら受け入れると言うことだろうがっ! こちらの受け入れ準備はとっくに済んでいるのだから、貴様もいい加減男として覚悟を決めよっ!」
「ちょいちょい下ネタを挟んでくるのは止めてくださいますぅ!? 俺はこれ以上奥さんを増やす気なんて無いんですってばぁっ!」
バッと陛下から身を離して、終始ニヤニヤしているニーナの平らなおっぱいにダイブする。
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「ということでカレン様ー。ダンのお嫁さんになりたかったら、神器の件を早く片付けてねー?」
「ニーナ!? ちょ、むぐぐ……!」」
慌てて抗議しようとする俺の頭を全力で抱き締め、おっぱいに押し付けることで口封じを図るニーナ。
だが残念ながらニーナのまっ平らなおっぱいでは、俺の口を封じることなど……あ、硬くなってる? はむはむ。
「ダンに神器を譲ってもいいし、ダンの神器を受け取ってもいいの。全く関係ない第三者を連れて来たって構わないから、カレン様とダンの間で神器の問題が解消されれば充分なのー」
「うむっ。済まんなニーナ。貴様の計らいに感謝しよう!」
はっ!? ニーナの乳首を服の上からはむはむしていたら、いつの間にか具体的な話が進んでしまっているじゃないか!
早いところ俺自身の口から否定しないと……って、キスがしたい? こんな大勢の前でニーナったらしょうがないなー。ちゅー。
「実は神器を巡って1つの報告があるのだが……。あまり人に聞かせられる話でもなくてな」
「あ、それならぼくに任せてください。たった今精霊魔法で音に干渉しました。ぼく達の会話はぼくたち家族と陛下にしか聞こえないようになってます
「む、一瞬でそのような複雑な操作を……? いや、今はそれを考えるべき時ではないか。ありがとうリーチェ殿。貴殿の心遣いに感謝する」
あれ? なんかリーチェにも恭しい態度を取るんだね?
皇帝であるカレン陛下と王女様であるリーチェなら、陛下の方が身分は上の気がするけど……。
いや、そう言えばリーチェって建国の英雄だったわ。腹ペコエロス大明神の印象が強過ぎて忘れてた。
「先日始界の王笏に拒絶されてしまったからな。実は識の水晶もダンに譲り、私はそのままダンの伴侶に収まるという話が、帝国上層部でも本気で検討され始めているのだ」
「その場合、ごしゅ……、夫の扱いはどうなるのでしょう? 帝国のシステム的に、夫に皇帝の座を譲るという事はないのでしょうが」
「安心してくれシャーロット殿。私との婚姻以上の事を求める気は無い。仮に何かを望んでも、ダンが応えてくれるとは限らんしなぁ?」
仮に応えてくれたとしても、コイツは加減を知らんからなぁと溜め息を吐くカレン陛下。
その言葉にラトリアとムーリが実感の篭った頷きを繰り返しているのが感じられる。
よし、2人にはこのあとたっぷりお仕置きしないとなっ。
「実はだな。ダンが帝国に齎した物が多すぎて、識の水晶の有用性が疑われ始めているのだ。扱い辛い神器を崇めるよりも、分かりやすい恩恵を齎してくれたダンを評価すべきではないかとな」
「え、えぇ……? とうとう神器よりも評価されちゃったんですか、私たちの愛するこの人は……」
「ひょっとしたらキュールから聞いているかもしれんが、識の水晶はかなり気難しくてな。1度の使用には莫大な時間とコストが必要となるのだ。そこまでしても狙った答えが返ってくるとも限らない。はっきり言って使い辛いのだよ」
「なるほど。夫が凄いと言うよりは、識の水晶が厄介者であるということですか」
シャロの言葉にウンザリした様子で頷くカレン陛下。
長きに渡って陛下のラインフェルド家を助力してきたと言われる識の水晶だけど、両者の関係は決して良好なものではないようだな。
「先日、ダンから大量のマジックアイテムが届けられただろう? とりわけサークルストラクチャーは帝国の民に大好評でな。識の水晶よりもダンを優先すべきという声が強まっているのだ」
「スペルディア家の私がこんなことを質問するのは角が立つかもしれませんが……。帝国にはそれほどまでに転職魔法陣が不足していたのですか?」
「まぁな。スペルディア家の支配を逃れて新天地を求めた帝国の民を、代々のスペルド国王は良く思わなかったらしくてな? 帝国全域でも7つしか転職魔法陣が存在していなかったのだ」
「な、7つだけって……!」
「庶民には移動魔法の利用も楽ではないからな。なるべく国からの補助も行なっていたが万全では無かった。しかし今回ダンのおかげで各都市に必要な転職魔法陣を用意してやれたのだ。帝国民の喜びようと言ったらなかったのだぞ?」
おかげでカレン陛下の支持率が急上昇し、他の対立候補とは大きく水をあけることが出来たらしい。
なので執務を放り出して海岸に出張ってきても、俺と会うためというだけで許されるほど、俺の存在が重要視されているみたいだなぁ。
今までは戦士、旅人、商人、魔法使い、兵士、騎士、冒険者の転職魔法陣しか存在しておらず、その他の職業を臨む場合はスペルド王国まで足を運ばなければいけなかったようだ。
その7つの転職魔法陣も帝都フラグニークに集中していた為、随分長いこと不便を強いられていたようだ。
「ラトリア殿のおかげで閃刃は習得できるし、ダンとの婚約も出来たのだから今日は良い日だなっ! しかもこのあとは婚約者殿を連れて帝国を案内も出来るのだっ! 初めてのデートに心が踊ってしまうではないかっ」
ああっ! ニーナに舌と心を奪われている間に、カレン陛下との婚約が完全に成立してしまったじゃないか!
でもニーナにキスされちゃうと、他のことなんか一切考えられなくなっちゃうだよぉ……! ニーナ大好きーっ!
だけど、お仕置きはさせてもらっちゃうよー!
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十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
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