最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

38 sideヘーゼル

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 昨夜、生徒が3人行方不明になった。各自手を尽くしているが、まだ見つからない。
 そんな中、警備団から連絡があった。見つかったと思ったら全く違った。


 シャルトルーズ君と思われる少年が、隊員を詰所に投げ込んでいったらしい。そして「もうテメェらには頼らねえ」と言って去っていったと聞く。
 どうやらその隊員達は、職務を怠りさらに生徒達を軽んじる発言をしていたらしい。その事がシャルトルーズ君の逆鱗に触れたのだろう。
 そして彼らの全身に巻き付いた糸のようなものが、どうやっても取れないらしい。ほとほと困り果てているようだ。

 ...で?謝罪に来たのか?それとも糸を取ってほしいだけか?



 時間の無駄だ。とっとと帰らせる。あと少しで魔法の追跡が終わるはずだ。今はそれに備えて準備するのみ。







 ドンドンドン!
 理事長室のドアが叩かれる。返事をする前にドアが勢いよく開いた。

 
 「理事長!校門にシャルの魔具が落ちていました!あいつはどこですか!?」

 飛び込んできたのはサルファーロ・ライミリウムだ。シャルトルーズ君の従兄弟で友人でもある。後ろにはヴァレンシアンジュ・ブーゲンビリアとイシアス・ベンライトもいる。
 皆、行方不明の生徒含めシャルトルーズ君の友人と聞く。彼らも各自家の方で捜索してくれている。



 「彼は別行動をすると言っていたが...魔具を落として行く訳がないな。
 まさか...彼まで?」


 私の言葉に3人とも顔を青くする。なんという事だ...!いや、まだ決めつけるのは早い。それに彼なら、何か手掛かりを残しているかもしれない。
 本を持つ彼に聞いてみる。


 「ライミリウム君。その本に何書かれていないか?」

 「それが...開かないんです。僕もシャルが何か残しているかと思ったのですが...恐らく持ち主にしか使えないのでしょう。」

 そうか...。やはりフェルト先生の仕事を待つしかないのか。
 



 「え!?」

 そう思っていたら、本が開いた。



 そしてなんとパタパタと勝手にライミリウム君の手の中から飛び出し、私の目の前に来た。
 突然の事で我々は目を白黒させている。だが次の瞬間、さらに驚く事が起きた。



 本の中から、人が出てきたのだ。


 いや、この男は人なのか?身につけている服も外套も帽子も真っ黒だ。その髪と瞳もシャルトルーズ君と同じ漆黒、肌だけ赤黒い。腰には見慣れない細い剣を差している。
 そして彼の額には角のようなものがあり、その顔は人間とは思えない程に整っている。
 
 何者だ?シャルトルーズ君の本から出てきたのだから、味方、なのか?私は子供達を庇える位置に立つ。



 「※※※※※※※※」

 ...?何語だ?

 「...失礼だが、こちらの言葉を話せないだろうか?」




 
 「...失念していた。私は刹鬼。シャルの友人だ。其方はヘーゼルだな。」


 彼は我々の言葉で話し始めた。しかし、友人だと?セッキ、と言ったか。ライミリウム君が彼に近寄り外套を掴む。

 「友人だと?貴方はシャル達がどこにいるのか知っているのか!?教えてくれ!」
 
 彼だけでなく、後ろの2人も同じだ。彼らも焦っているのだろう。



 「落ち着け、サルファーロ。シャルの血縁で友人の少年よ。
 今は時間が惜しい。用件のみ述べる。

 シャルは現在犯人と対峙。場所は私が分かる。取り急ぎこの本を彼の元へ届ける。」


 そう言うと、なんともう1人出てきた。こちらは長身で2メートルはあるだろう。見慣れぬ鎧にセッキと同じく赤黒い肌に角。そして整った容姿。



 「岩鬼。先にこれを持ちシャルの元へ向かえ。私は彼らを連れて行く。」

 「わかった。」


 ガンキと呼ばれた彼は本を抱え窓から飛び出す。慌てて外を見るがもう姿が見えない。魔法を使った気配もないし...一体...?





 「ヘーゼル。ジルクリッドを呼んでくるがいい。サルファーロ、イシアス、ヴァレンシアンジュ。君達は留守番だ。ここで待て。足手纏いだ。」


 はっきりとそう告げられ、悔しそうに唇を噛む子供達。だがその通りなのだろう。自分達のせいで友人を助けられなければ必ず後悔する。今は自分の感情ではなく、友の安全を優先するべきだ。



 私はフェルト先生を緊急で呼び出す。彼はすぐに転移魔法で来た。

 「何事ですか!?あと少しで...っ誰だ!?」


 「説明している暇はない。来い。」



 なんと。彼は私とフェルト先生を抱えた。細身のくせになんという筋力か。


 「行くぞ。」

 「「え。」」




 そしてそのまま先程の彼と同じく窓から飛び出した。ここ5階だが?





 「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!!」」



 死ぬかと思った。

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