最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

1 帰還

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 季節は春。王都にあるアカデミーにて、始業式が行われている。短い春休みが終わり、明日には入学式が控えている。今は理事長の挨拶だ。彼は5年生の方、正確には1つ空いた席に目をやる。
 ...一体いつ戻って来るんだ。もう君も最高学年になってしまうぞ。そう思いながら挨拶を続ける。


 シャルトルーズの捜索は早いうちに終了していた。刹鬼が「彼は問題ない。修行してから帰るそうだ」と言ったからだ。どれだけ探しても手掛かりすら見つからず、その言葉を信じるしかなかった。
 彼の家族や友人は刹鬼を信用しつつも自分達なりに捜索を続けていたが。
 友人達は大分変わった。もちろんまだまだ子供ではあるが、外見も中身も随分と成長している。シャルトルーズが大賢者の元で修行していると聞き、肩を並べられるようにと勉学に励んだ。
 彼らがどれだけ成長したのか...シャルトルーズに早く見せてやりたい、とヘーゼルは思っていた。








 と、その時。理事長の挨拶が終わったと同時に変化が起きた。空間が歪んでいる。これは誰かが転移魔法を使用している?場所は壇上、演台の上だ。


 生徒達に騒めきが広がる中、警備の者が取り囲む。ここは多くの貴族の子弟、令嬢が通うアカデミーだ。当然警備も厳重である。
 だが現在警備隊長に(なぜか)就任している玖姫が前に出る。

 「ああ、平気よ。貴方達は下がりなさい。」

 彼女にそう言われれば下がるしかない。それと同時に刹鬼と岩鬼が壇上に立つ。


 「やっとか。ヘーゼル、其方も少し下がるといい。」



 ヘーゼルはその言葉で即座に理解した。誰が移動して来るのかを。彼は壇上から飛び降り、「今すぐゼルブルークに連絡しろ!」と指示を出す。


 その様子を見て、友人達も理解した。やっとだ...ずっと会いたかった彼に会える。アルトなどはすでに涙目だ。それはすぐ引っ込むことになるが。






 演台の両側に刹鬼と岩鬼が立ち、玖姫は周辺を漂っている。が、なかなか彼が姿を現さない。なにやらバチバチと魔力が渦を巻いている。さらに周囲が白い霧のようなもので囲まれている。ただ移動するだけならこんな風にはならないはずだが...?その奥から話し声が聞こえてきた。



 「あんた、この演出必要かい?」

 「何言ってんの師匠。数年ぶりの再会よ?ここはインパクトが重要なのです。台詞がなかなか決まらなかったけどねー。」

 「好きにしたらいいよ...。」

 「あ、ちょっと岩鬼。その演台どけてくんない?よし、サンキュー。
 じゃあ、行きますか!」


 その会話はダダ漏れである。彼の友人達は肩をがっくりと落とした。彼らは「いいからさっさと出てこい!」と叫びたい事だろう。
 だが、彼らしくて少し笑ってしまった。全く変わっていないようだ。




 すると壇上が白い輝きに包まれた。その場にいる者達はその光に耐えられず、一様に目を閉じた。そして暫く経ち、恐る恐る目を開けると...。







 壇上に、1人の少年と1頭のライオンがいる。その姿は神秘的で神々しく、誰も声を出せない。
 ライオンは逞しくしなやかな体躯に美しい鬣をなびかせている。そして少年に寄り添うように立っているのだ。

 そしてその少年。艶やかな黒髪を背中ほどまで伸ばし、一纏めにしている。そしてその優しげな顔立ちに意志の強さを感じさせる目。まだ幼さを残しつつも整った容姿に、女子生徒は頬を赤くしている。
 更にその服装。歴史に語られる大昔の人々が着ていたやたら露出の多い衣装。彼の肉体を惜しげもなく晒しているもんだから、令嬢達から黄色い悲鳴が上がった。



 シャルトルーズが、帰ってきたのだ。彼を知らない4年生以下の生徒は突然現れた美しい少年に戸惑っている。彼を待っていた者は、生徒も教師も再会の感動に打ち震えている。
 すぐに吹っ飛んだが。


 彼が手を挙げると皆静まり返る。そして、






 「えーと、んー。なんだっけ?
 あ、そうそう。ごほん。

 お集まりの紳士淑女の皆々様!亜空間に飛ばされ大賢者様の元に辿り着き、厳しい修行に耐える事幾星霜。俺ことシャルトルーズ、只今帰還致しました!
 同級生及び先生方はお久しく、後輩の皆はお初にお目にかかります!我が使い魔...?いやペット?あ、痛い痛い。つつかんといて。ペットは嫌なのね。まあいいや。
 こちらのライオン、アスラ共々アカデミーにてお世話になりたく存じます!
 あ、お前ら忘れてる訳じゃないからな。いやマジで!既に皆様相まみえております俺の友人、刹鬼・岩鬼・玖姫。...特に言う事ないよな。いててて。皆でデコピンしないで。だってお前ら俺より長くアカデミーにいんじゃん!今更紹介も説明も不要!
 えー、そういう事なんでこれからよろしく!


 ところで俺5年生になれるよね?1年生からやり直しとか言わないよね?ねー理事長先生、ジル先生。あ、ジル先生なんか老けた?そろそろ三十路だもんなー。
 ところでファル達どこ?おーい、帰ってきたぜーい!!兄上いい加減に結婚した?婚約者くらいはいるよな?その辺情報くれなかったんだよなーこいつら。あ、授業内容はばっちしだから!」




 シャルの友人達はその場で深い深い溜息をついた。ジルクリッドは「老けてねーわ!」と憤慨し、その他の生徒は皆ぽかんとしている。
 謎の美少年がポーズを決めつつぐだぐだな自己紹介?をするもんだから、ついて行けてないのだ。その後は誰かを探すようにキョロキョロし、お目当ての人物達を探し当てると顔をパアアア!と輝かせた。その表情にまた多数の令嬢がノックアウトされたのだが、本人は気づくはずもなし。




 「みんなー!久し振り...誰だお前らーーー!!やべえ、めっちゃ成長してんじゃん!一瞬分かんなかったよー!」



 「「「こっちの台詞だ!!」」」



 こうして、感動の?再会を果たすのだった。

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