最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

4 決まっちゃったよ委員長

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 俺と風紀委員の生徒が距離をとって相対する。そういやなんて名前?

 「俺はシャルトルーズ。君は?」

 「俺はアンバート・オーカー。…せいぜい新入生にみっともない姿見せないでくださいよ、センパイ?」

 

 ん…?挑発のつもりか?俺が大賢者の所で修行してたの知らんの?はっきり言って俺、大人にも負けないと思うけど…。
 ちらっとギャラリーに目をやると、先生方とセイル、ファル、アンジュ、イシアス(3人は生徒会)が苦笑していた。

 なるほど。知ってるのは一部か。よく考えたらそりゃそうだよなあ。あの人半分おとぎ話で伝わってるし、現実的じゃないわな。






 互いに魔具を取り出す。ちなみに刹鬼達はすでに外に出ており、アスラと並んで見物してる。


 「変わった魔具ですね。そんなんで戦えるんですか?」

 「まあね。さて、ルールのおさらいだ。相手に「参った」と言わせればよし。決闘じゃあないから重傷を負わせるのは禁止。いきすぎと判断されたら先生方が入ってくる。いいな?」

 「ええ。問題ありません。」





 「じゃあ…かかってきな!!」


 その言葉を合図に、オーカーが動く。彼の周囲に、水の矢が3本出現した。ふむ、あれなら直撃しても痣になるくらいの威力かな。ただ発現までに8秒かかってる。実戦じゃ死ぬぞ。
 
 「いけ!〈水矢〉!」

 その矢が勢いよく放たれる。名前まんまだな。どうすっかなー、と考えた末に。


 「〈アイス〉 〈クラッシュ〉」

 全て凍らせて、粉々にした。わざわざ口に出す必要もないが、まあパフォーマンスだ。

 「な……!!」

 オーカーは目を見開いている。驚きすぎじゃね?周囲も新入生はキャーキャー興奮していた。可愛いもんだな。



 「ま、だこれからだ!〈竜巻〉!!」

 「〈トルネード〉」

 俺も安直な名前で悪いね。〈カマイタチ〉で失敗したからな…。同じくらいの大きさの竜巻で相殺する。
 その後も同じように相手の魔法を消したり壊したり。…物足りねえ。大怪我させないように威力の高い魔法を使ってこないからな…。元々使えない可能性もあるが。
 オーカーの息が上がってきた。早いぞ。こりゃー鍛え直しが必要かな?



 「な…!なんなんですかあんたは!こんな…俺がいいようにあしらわれてるなんて!」


 「…そうだな。後で指導してやるよ。それより今は終わらせるのが先だ。行くぞ。」


 俺は今まで受けていただけだが、相手の実力も分かったしここいらで決めさせてもらおうかな。ぶっちゃけ〈ニュートン〉で杖を奪えばお終いなんだけどな。




 「〈セイリュウ〉」


 俺が呟いた直後。周囲が薄暗くなり威圧感が漂ってきた。どよめきが広がる中、俺の上空に大量の水が集まる。そしてその水は、一瞬にして龍の形をとった。そいつは俺を守るようにとぐろを巻き、相手を見据えている。
 物語に出てくるような翼のあるドラゴンじゃなくて、和風の細長い龍の方ね。この世界の人から見りゃ、得体の知れないバケモンだろう。モデルは蒼水龍姫だが。



 「…な、なん、それ…!」

 おーおービビってるわ。1年生の興奮は最高潮だが、対面してるオーカーは顔面蒼白ってやつだ。
 セイリュウが口から小さめの水の塊を撃ち出し、オーカーの足元にいくつか穴をあける。目にも留まらぬ速さでな。何が起きたか分かってんのは一部のやつらだけっぽいな。
 気づけば大きな音と共に足元が抉れてるのを見て、オーカーは腰を抜かしそうだ。軟弱ですこと…。

 「行け。」

 
 セイリュウをけしかけてみた。ひいいいと悲鳴をあげて、彼は座り込んでしまった。…やりすぎた?




 「こっ降参します!!」

 セイリュウに突かれながら、涙目でそう叫んだ。さて、周囲の反応は?
 1年生は興奮し、それ以外は唖然としてる。うむ、あれだな。俺の魔法の威力じゃなくて、速さと正確さに驚いてるっぽいな。




 「セイル。このまま手合わせ、どうだ?」

 動けないオーカーを魔法で運んだ後、セイルに提案する。あいつもすぐに乗ってきた。


 「もちろんいいぜ。得物はどうする?」

 「なんでもいいが…素手ってのはどうだ?刹鬼と岩鬼に叩き込まれてんだろ?」

 俺は手をくいくいっとして挑発する。以前騎士にやったのとは違うぞ。純粋に力比べをしたいだけなので。

 

 「よし。受けて立つ!」

 そのままセイルが特攻かましてきた。速いな。さすがに、違うな!!
 俺の顔面めがけて拳が飛んでくる。だがこれは

 「フェイクだな。」

 「!?」

 本命はこっち、俺の脇腹を狙う右足だ。俺はセイルの左手を上に流し右足を掴んでひっくり返した。だが即座にバク転をして逃れ、距離を取る。やるう。


 「すげえじゃん。」

 「こっちの台詞だ。見破られるのはともかく、あっさりいなされるなんてな。
 …魔法の修行ばかりしてたと思ってたぜ。」

 「まさかー。あの婆さんな、魔法より武術のがやべえよ…。」



 ほぼただの殴り合いになりながら、そんな雑談を交わす。うんうん、俺の怪力に対応できるってかなり凄えよ?

 
 実を言うと大賢者である師匠は、魔法はさほど得意ではないらしい。才能で言えば俺の方が上だと言われた。昔だって、各国の要人を暗殺しまくったのは魔法によるものではないとか。移動とか逃走には使ったらしいが、基本的に武術で無双してたらしい…。
 だが魔法も不得手ではない。ただし今の実力は3000年間の研鑽の賜物だと言っていた。
 そしてあの狭間の世界での師匠は精神体。その気になれば若い頃の姿になれる。全盛期だという師匠は美しくしなやかに、的確に俺の命を殺りにきていた…。ぶっちゃけ、何度か死んだ。あの世界は命の概念がないもんだから、傷が治ればまた動くんだ。もちろんあの世界限定だが。
 

 まあはっきり言うと、セイルの動きなんぞ丸わかり。多分今の俺なら岩鬼とも対等に打ち合えると思う。



 「悪いけど、決めさせてもらうぞ。」

 「は…ーーー?」


 俺はセイルとの距離を一瞬で詰め、呆気にとられる彼が正気に戻る前にその腹に3発ほど打ち込んだ。結果、吹っ飛んでった。
 その先に玖姫が待ち構えていたので、水の膜でセイルを包み込んだ。

 一瞬の静寂の後、辺りが歓声に包まれた。


 「すっごおおおい!!」
 「あの方すごいですわー!」
 「かっこいいーーー!!」
 「センパイすげーえええ!!」
 「シャル、さっきの水魔法詳しく!!」
 「お名前教えてくださあい!」
 「ぼくを従者にしてください!」
 「お嫁さんにしてー!!」
 
 時々変なの混じってるけど、讃えられたらちょっと嬉しい。にへらと笑って手を振ると、また悲鳴が上がった。





 そして風紀委員の4年生が並んで前に出てきた。


 「先程は生意気な態度をとってしまい、申し訳ございませんでした!!
 俺を圧倒する魔法にセイル先輩を瞬殺する武術。もはや貴方の実力は疑いようがありません。これより風紀委員長として、俺達を導いてください!!」


 オーカーを筆頭に揃って勢いよく頭を下げた。うーん体育会系。セイルは腹を押さえながらもしっかりした足取りで寄ってきた。

 「いてて。やっぱつえーな兄貴は。という訳で委員長就任おめでとう。」

 「んー…。しょうがねーか。やるからには徹底的にだからな。お前らしっかり付いてこいよ?」


 「「「はいっっ!!!」」」

 風紀委員全員が返事した。うんうん、統率がとれてるな、俺。


 その後マルが「シャル兄ちゃんもセイル兄ちゃんもかっこよかった!」と抱き着いてきたり。ファルが「互いに協力し合ってよりよい学校にしような」とか言ってきたり。ジル先生が俺の魔法について根掘り葉掘り聞いてきたり。なんか疲れた…。



 マルを家に送り、俺はセイルと寮に帰る。今は王都に家があるし、別にそこから通ってもいいんだが…やっぱあの寮ちょっと気に入ってんだよね。刹鬼も岩鬼も玖姫もいるし、今はアスラもいるし。
 アスラは寮の庭の一部を借りて、日中はそこで過ごす。もちろん問題を起こしたら俺の責任だ。だが彼とは意思の疎通ができるので今のところ問題ない。






 そしてレクリエーションの日を迎える。


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