最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

10 野生の ハムスターが 現れた!

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 さて。教室まで来たはいいがもう授業は始まってる。先生は事情知ってんだろうけど、今入るのやだな~。今日の5限目は政経か。…サボろ。


 俺はこっそりと教室を離れ、ひとまず風紀委員室に向かった。少しは仕事すっかな。ただし、自分で増やした仕事だが。










 それは今から数日前のこと。俺はアカデミーの敷地内にある山に来ていた。別に修行とかじゃないぞ、アスラの散歩だ。
 アスラは寮で飼う許可を得たが、流石に野放しにはできない。なので普段は、魔物用の力を抑える首輪を着けているのだ。これによりアスラの力はおよそ4分の1ほどになっている。たまには外して発散させてやらねば。今は雪にはしゃぐ犬のごとく爆走している。
 もちろん先生に許可をもらってある。この山は無害な小動物、いや小魔物しかいないので安全だ。アスラが踏み潰す心配はあるが。



 


 「…ん?なんじゃありゃ。」

 俺は大きい石の上で寝転がっていた。久し振りにのんびりしようと思っていたら視界の隅に動く小さい影があった。

 「…ハムスター?」



 まごうことなきハムスターだ。ハム軍団が俺の方をガン見している。

 俺はアスラのように大きい動物が好きだ。かっこいいし、抱き着くと暖かい。
 だが文太は小動物が好きだった。犬を飼うなら小型犬以外は認めない。飼ったことないが。ハムスターは飼っていた。本当はとある漫画の影響でゴールデンハムスターが欲しかったのだが、母に「安いからこっちにしなさい」とジャンガリアンハムスターにされてしまった。これはこれで可愛かったので満足したが、1年で死んでしまった。


 今目の前に、ゴールデンなハムスターがいる。いや、マジで毛が金色なんだよ。ちょっとかっこいいじゃねえか…。



 「…おいで~。こいこい。カモーン。」

 呼んでみると、2匹ほど近寄ってきた。手を出すとおずおずと乗ってきたもんで、あまりの可愛さにノックダウン寸前だ。
 
 「…飼おう!」



 そう決めた俺は学校にダッシュした。ハム達はどっか行かないようにアスラに見張らせた。同意の上ですよ。






 この世界でも愛玩動物…愛玩魔物はいる。なので俺はまずジル先生に訴えた。
 ハム可愛いですよ。生き物を飼うことは生徒の情操教育にいいですよ。飼育委員作りましょうよ。とアピールしまくった。
 ハムスターが少数なら俺個人で飼うのだが、パッと見20匹はいた。数匹厳選しようとしたがどうしても全員付いてきてしまうので、もう連れて行くことにした。
 
 渋っていたジル先生も、俺の熱意に圧倒されたのかokをくれた。可愛い物好きなのか、一緒に校長先生に交渉してくれた。


 そしていくつかの条件はつけられたが、無事許可されたのだった。
 まず今から飼育委員は作れない。早くても来年なので、今は俺が風紀委員長と兼任する。風紀委員と、委員会に入ってないアルトとリアも手伝ってくれることになった。他にも有志募集中。
 さらに飼育場所、餌問題、飼育する動物の種類etc。やる事がいっぱい。







 そして今はとにかくオスメス分けてそれぞれ大きめの檻にいれている。場所もひとまず風紀委員室なので、ちょっと散歩させよっと。
 


 「おーい、ハムズ。まずはオスから散歩な。整列!」


 俺の言葉に、檻から出たオスハムが横一列に並ぶ。もちろん魔法使ってますよ。

 魔物と意思の疎通がとれる魔法、〈アニマル〉だ。つっても命令するものでもないし、細かいことはわからん。これ食うか?と聞いているかいらないか伝わるレベル。会話できるもんじゃない。
 だから今ハムズが横並びしてるのは彼らの意思だ。俺が並んでほしいなーと言ったら、いいよーと快諾してくれたのだ。素晴らしい信頼関係!別に整列に意味はないが。





 しばらくハムを散歩させていたら、ドアの外に人影があった。あれは子供サイズだな。…俺が言うのもなんだが、今は授業中だ。
 とりあえず無視。様子みようと思ってたら、意外とすぐ動いた。
 コンコンとノックされたので、開いてまーすと言ったら男子生徒が入ってきた。


 「…失礼します。」

 「はい。風紀に何かご用ですか?」

 「いや…。」





 それきり黙ってしまった。どうしろと?目の前の彼は恐らく年下。帽子と眼鏡で顔はよく分からない。



 「「…………。」」



 お願い、なんか喋って。…?よく見ると、ハムスターを目で追ってる?




 「…今ハムスターの散歩中なんです。ちょっと遊んであげてくれませんか?」

 「…!………うん。」

 …魔物好きなのね。めっちゃ嬉しそう。表情はよく見えないが、ハムと楽しそうに戯れてる。




 「…カイト。」

 「え?」

 ハムと遊びながら急にそう言われた。何?

 「オレの、名前。」
 
 自己紹介されたのか…。主語言ってくれや。

 「遅くなりましたけど、俺はシャルトルーズです。風紀委員長をしています。」

 「…知ってる。」

 「そうでしたか…。」






 沈黙。






 「…こいつらの名前は?」

 ハムスターの名前?考えてなかった。

 
 「えーと…ハムオ。ハムスケ。ハムキチ。ハムノスケ。ハムロウ。んーと、ハムナプトラ。」


 「ぶふっ…!……今つけてないか?」

 ウケた。


 「考えてなかったので…あと4匹、何かアイデアありませんか?ここにいるのはみんなオスです。」

 「…えーと。ハムール。ハムット。ハムリオ。ハムリャン。」

 意外とノリがいいな。


 「よし。次はメスですね。その前に。皆、檻に戻って。」

 縦一列に檻に入って行く。カイト…家名は?まあいいか。カイト様がびっくりしてる。


 「…すごいな。」

 「魔法を使ってますからね。でも元々皆良い子なんです。魔法で心や行動までは操ってませんから。じゃあ次。出ておいで。整列!」


 今度はメスが横一列。


 「ハムコ。ハムヨ。ハムエ。ハムミ。ハムナ。ハムエッグ。」

 「ハムア。ハムーリエ。ハムファ。ハムエラ。ハムップル。」


 2人でしゃがんで名前をつけていく。ちょっと待って。メモするから。…はいよし。
 その後メスハムとしばらく遊んだ後、檻に戻した。カイト様は名残惜しそうだ。…飼育委員(仮)ゲットのチャンス?


 「カイト様、ありがとうございました。」

 「…カイトでいい。」

 
 カイト様…カイトはそっぽ向いて答えた。仲良くなったのかな?

 「…はい、カイト。授業はサボりですか?」

 「!…体調不良だ。」



 とてもそうは見えんが…まあそういう事にしておこう。気まずそうに目を逸らされた。


 「そうでしたか。じゃあハムスターで癒された所で、大きい魔物は好きですか?」

 「…好き。」

 「学生寮の庭にライオンがいるんです。大人しいので、少し相手してやってくれませんか?」

 「行こう。…名前は?」

 「アスラと言います。」

 「なんでライオンだけまともな名前なんだ…。」

 ほっといてくださーい。足取り軽く歩いちゃって、まったくー。
 


 この日からカイトは、ちょくちょくハムに会いに来るようになった。だが何故か俺以外の生徒がいると逃げて行く。極度の人見知りだろうか?


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