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第3章 アカデミー5年生
16 前世の記憶なんてロクなもんじゃねえわ
しおりを挟むおはようございます。シャルトルーズです。
城まで来たはいいが、なんて言えばいいんだ?よくよく考えたらアポ無し訪問じゃない?王族にそれは駄目じゃない?俺ってばただの庶民ですし。という訳で。
「刹鬼。隣で立っててくれ。」
「承知した。」
顔パスがきく刹鬼がいれば多分大丈夫!ついでに俺は今アスラに乗っている。大分威嚇きくんじゃない?威嚇してどーする…。
「あのー…すみません。」
「ん。…っと、刹鬼殿!そして君は?」
「どうも。刹鬼の友人のシャルトルーズと申します。王弟殿下にお目通りを願います。」
「速やかにしろ。」
「はいっ!すぐに確認して参ります!」
刹鬼すげー!思ってたより効果あったわ。門番さんは急ぎでどこかに連絡してくれた。
そして数分後。城内に通された。ただアスラは入れないので、先に狭間に送っといた。刹鬼はちょくちょく声をかけられている。この人気者さんめー。
どこぞの部屋に案内されたが、少しお待ちくださいとのこと。刹鬼は久し振りに騎士団に顔を出しに行った。父さんもいるかな?
殿下遅いなー。まだかなー?魔法の練習でもしたいが、王宮内でやったら警備がすっ飛んで来そうで怖いなー。なんとなく窓の外に目をやる。
…そろそろ夏かあ。前は毎年、家族で海行ってたなあ…。多分、文太が死んでからは行ってないかもしれんが。
…今少し。ほんの少しだけ日本に帰りたいなー、と思ってしまった…。いかんいかん!…まあ、懐かしむくらいいいよな。
『…夏も近づく~八十八夜~
野にも山にも若葉が茂る~』
ここ緑茶無いんだよなあ。紅茶を飲みながら、なんとなく口ずさむ。
昨日俺は、師匠に全て話した。そう、全部。最初の生から今に至るまで。少しはぼかそうとしたんだが、吐かされた。
流石は年の功と言うべきか、すんなり受け入れられた。ちょっと拍子抜けだよな。まあ、「他の誰にも話すんじゃないよ」と念を押されたが。言われなくとも分かってますよーだ。
そんで、チェスラメル様が俺らの妖力にあてられて大人しいんじゃないかと言ってみた。師匠はそこを重点的に調べてくれてるはずだ。今日中に解決できるかな…?
そんな話をしてたら、連鎖して日本での思い出が蘇ってきたのだ。ここ数年は、それほど思い出さなかったのにな。…少し、ホームシックになったのだろうか?長年住んでた国だもんなあ…。
『~摘めや摘め摘め摘まねばならぬ
摘まにゃ日本の茶にならぬ~…』
ふとドアの方に視線をやる。思わず手にしていたクッキーが落ちる。
陛下と殿下とスイン様がガン見してた。
…いつから聴いてた!?
「…おはようございます、陛下、殿下、ハーカット様。」
「うん、おはよう。わざわざ来てもらって悪いね。」
「いえ、お気になさらずに。」
…?殿下、なんか今日はいつもと違うな?うまく説明できないんだが、雰囲気というか。いつも微笑んでるのは変わらない。あと服装。昨日はかっちりと魔法師の制服を着ていたが、今日はラフな感じ。
ついまじまじと見るという失礼な事をしてしまったが、特に何も言われることはなかった。
「あ、私の事は名前でいいよ。様も必要ないから。と言うより、私の事知ってくれていたんだね。」
「では、スインさんと呼ばせていただきます。スインさんの事は、ゼルファート叔父上より伺っておりましたので。」
「ところで今の歌、不思議な言葉と旋律だったね。異国の歌?」
「そこはスルーしてほしかったです…!まあ、異国の歌ではありますが。師匠に教わりました。」
嘘ですが。
「そうであったか。心地良い歌声であった。」
「ありがとうございます…。」
やめて陛下。俺別に歌上手くないから。つかなぜいる?
「ごめんね。兄上が君に会いたいと言っていたから、ちょっとだけ顔を出しに来たんだ。」
「いえ、光栄です。」
「いや。今回の事、礼を言う。…ありがとう、シャルトルーズ。」
「へ…?ど、どういたし、まして?」
何!?俺何かしたっけ!?今回…?殿下と師匠を引き合わせた事?いやまさか。
???
俺の様子に気付いた陛下が、フッと笑い頬を緩めた。
「分からなくていい。さて、以前個人的に招待しようと言ったが、まだ叶っておらん。いずれ、家族共々招待しよう。父親は護衛に立たせるが。」
「はい。お待ちしております!」
「ふ…。では、また。今日は弟をよろしく頼む。」
「じゃあね、シャルトルーズ君。」
そう言い残し、2人は去っていった。結局何が言いたかったんだ…?
まあ考えても答えは出ないので、とっとと殿下と移動した。
「師匠、おはようございます。」
「おはようございます、サラ様。」
「ああ、おはようさん。…ふむ、ちったあマシな顔になったかねえ?」
「ええ、貴女方のおかげで。」
???なんか今日俺、置いてけぼりばっかだな?
ひとまず家の中に入り、椅子が2つしかないので俺はゴーレム椅子だ。
「さてと。じゃあ早速本題に入るよ。」
入んの!?殿下に全部言っちゃうの?最初の予定じゃあ、殿下には城に侵入する手引きだけしてもらうって言ってたじゃん!
ちらっと殿下の方を見てみる。笑顔で返された。
「私の事は気にしなくていい。君たちの会話から、やはり娘が何者かに操られているのだろうと推測した。そして君が救おうとしてくれてる事も。
私は何も追求しない。ただ私が出来る事であれば全面的に協力させてほしい。…娘を、助けてほしい。」
…殿下の前でそんな会話したっけ?師匠がなんかもらした?まあ師匠がいいって判断したんだろうけど。そんじゃーとことん手伝ってもらいましょうかね!
「あんたの娘の状態が判明したよ。最初は憑依されてんのかと思ってたけど、ありゃ違うね。
今表に出てるのは、あの娘の前の魂の持ち主だ。要するに、前世の人格だね。」
「…は?」
え。それじゃあ、どうしようもないって事じゃない…?
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