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第3章 アカデミー5年生
20 結末はいかに
しおりを挟むどうする、どうする!?チェスラメル様を無事に助け出すには…!
…ありゃ?
「…おい、アーラ。今この場でお前の首を刎ねれば娘は無事に、お前だけ消えるのか?」
⦅出来るものならばな。貴様らの凶刃が届く前に娘を始末してみせるさ。⦆
蜘蛛の問いに、自信満々に答えるアーラ。
「どうやって?」
⦅どうもこうも…ありゃ?⦆
チェスラメル様がいねえ。
祭壇の上には、アーラのみ。さっきまで横たわってたチェスラメル様はどこへやら。
ちなみに俺達は何もしてませんよ?
視線がアーラに集まる。
⦅…………。⦆
「「「「…………。」」」」
⦅……は、話し合おうではないか。我らは分かり合え…⦆
「確保ーーー!!!」
「「「おーーー!!!」」」
⦅おのれええぇぇーーー!!!⦆
一件落着!イエーイ!!
文太とハイタッチをする。蜘蛛と絢はノってくれない。流石初期俺シリーズ。アーラはお馴染み蜘蛛糸で簀巻き状態だ。念の為逆さ吊り。
「こいつは俺が見張っておく。お前らで娘を探し出せ。」
「イエッサ!」
蜘蛛に任せ、探索に出る。この世界じゃ魔法使えないから、地道に探さないといけない。遠くまで行ってないとは思うけど。
「さて、どうしましょうか。この世界の広さはどの位かな?」
「どうかな。アーラの記憶だから…下手すりゃ本物の森サイズかも。」
「じゃあ迷わないように、糸を樹に巻きつけながら手分けするか。互いにも糸くっ付けといて、緊急事態やチェスラメルを見つけたらすぐ合図な。」
「よっし!じゃあ俺こっちー。」
ふう、なんとか解決しそうで良かった。しかし、アーラはどうしようか。消すのは簡単だけど、なんだかなあ…。力さえ奪っちゃえば、ただの喧しい魔王だし…。
蜘蛛だって、俺の考えを読んで始末しないでくれてるし。あいつだったら、殺すのに躊躇しないからな。
でも、どうしよう。もしも刹鬼達のように使い魔にするとしても、身体が無いと…。
ジャングルを進みながらそんな事を考える。
アーラが完全に魔王だったら、遠慮なく始末できるんだけどな。ぶっちゃけ今のあいつは、外見が普通じゃないのと魔法がちょっと得意なただの人間だ。
…チェスラメル様の意見も聞いてみよう。一番の被害者は彼女だからな。
…っと!糸に反応あり!
「何かあったな!」
今来た道を戻り、引っ張られる方に進む。やっぱジャングルは走りづらい!
「お、絢。」
「シャル。って事はこの糸は文太ね。」
「急ぐか!!」
絢と合流し少し走った先に、文太を見つけた。なんか隠れてる?
「お、来たな。ちょっとあれ見てみ。」
「あれ…?」
文太が指差す先に…。
「ーーーふうっ!やっぱ自由っていいわー!!
そろそろあっちは解決したかしら?まあともかく、もうちょっと好きにさせてもらいますわーー!!」
チェスラメル様が泉で泳いでた。もちろん全裸で。
「絢、行ってくれ。流石に相手が子供とはいえ、腐っても王族だからな。俺らは行きたくない。」
文太の言葉に超同意する。絢はやれやれといった感じで引き受けてくれた。
「そこのあなた、チェスラメルさん。」
「あら、貴女先程シャルトルーズ様の側にいた方ですわね!」
「シャルの事は認識してるのね。」
「もちろんですわ。あの方のお側にいると、アウグルヴァリックニーネイラの支配が弱まりますもの。」
「そう…聞きたい事と、言いたい事があるの。服を着て、こっちに来てちょうだい。」
「わかりましたわ。少々お待ちくださいませ。」
そうして蜘蛛に合流し、チェスラメル様に事情を聞いた。
彼女は物心ついた時から、アーラに支配されていると分かっていたらしい。だが抵抗した所でまるで意味はなく、されるがまま状態。
周囲の自分に対する陰口なんかも聞こえており、何度も死にたいと思っていたとか。王弟殿下が自分の首に手を当てると、そのまま殺して欲しいと何度も願ったらしい。…殿下、そんな事してたんか!マジで危なかった!!
でも実際、第一王子を始めとして王族が殺される可能性があった訳だ。そりゃ死にたくもなるか…。
そしてアカデミーに入学後、俺を見かけた。その際にアーラの支配が弱まってるのを感じ、なんとか俺に接近を試みる。
よく俺だってわかったなー。見かけたのがあの決闘の時だとしたら、他にも人は沢山いたはずだが。
「すぐに分かりましたわ。だって、視線があなたに固定されていましたもの。」
あらま。
だが上手くいかず、レクリエーションを利用する事にした。アーラに精一杯抵抗し、なんとか俺と同じチームになりたいとだけ伝える事が出来た。
その後は知っての通りだな。でもチェスラメル様の異変に気付いたのは師匠だし、あの人に出会えて本当に良かった…!
そんでさっきは初めて自由を得て、ハイになってジャングルを走り回ってたらしい。
「本当に、皆様には感謝しております。王族を代表し、お礼を言わせてくださいませ。
ーーーありがとうございました。」
「…いいえ。貴女が自由になれた事、それだけで充分です。この先、苦難が待ち構えているかもしれません。ですが、貴女ならば乗り越えられると信じております。」
よかった、本当に。深々と礼をする彼女の頭を、そっと撫でてみる。そうすると顔をあげたチェスラメル様と目が合い、互いに微笑み合う。
これからが肝心だが、きっと大丈夫。王弟殿下もいるし、俺も多少ならサポートしよう。
⦅私の事、忘れてはいないか?そろそろ意識が飛びそうなのだが。⦆
「あ。」
忘れてた。アーラどうしよう?ともかく下に降ろす。
「このままアーラを置いておく訳にはいかない。お前はチェスラメル様から完全に分離させる。しかし、その後はどうするか…。
チェスラメル様、貴女はどうしたいですか?一番の被害者である、貴女の意見を聞きたいのです。」
姫様はドレスの裾をきゅっと握り、俯いてしまった。
「…たとえこれまでに散々迷惑をかけられ、危うく家族を殺されそうになっても。私には、命を断つ命を下す覚悟はございません…。」
ま、子供ですし。むしろ「こんな奴処刑よ!」なんて言われるより良かったかもしれん。
実際アーラによる被害って、別に死者が出てる訳じゃないんだよな。姫様の評判が地に落ちたのと、殿下が闇堕ちしかけたくらいか?…大損害じゃない?
まあ本当に王族殺しとかしてたら、問答無用で始末だったが。
「では、お姫様のご希望通りに。」
にっこりと微笑んで安心させる。姫様は顔を真っ赤にさせてしまった。…俺やらかした?3人とも目を合わしてくれないし、アーラすら呆れた顔をしている。
ともかく、会議タイム!
「なあ、アーラどうしよう?どっか閉じ込める場所ないかな。」
「シャルの魔本に入らない?」
「入れたところで、こいつ勝手に動き回りそうじゃないか?」
「なんか人形とかぬいぐるみとかに憑かせるか?」
「出てきそうだな。」
「瓶とかに封印してみる?」
「それじゃ、いっそ殺した方がマシじゃ…。」
「「「うーん…。」」」
3人寄れば文殊の知恵、と言うが。全くいい案は出ずにあーだこーだと意見を出し合う。
さっきから傍観してるやつにも意見出してもらおう。
「蜘蛛、なんかないの?」
「…先程から気になっていたのだが。なぜ狭間の世界に送るという案が出ない?」
「え。」
「サラの住む世界は死者も生者も無いのだろう?事実サラも精神体だ、アーラも似たようなものだろう。
あの世界でサラに面倒を見てもらえばいい。」
「「「………。」」」
盲点だった…!
「それだーーー!!」
だが師匠に相談するにしても、まずここを出ないとな。大丈夫かなあ。外に出た途端、また乗っ取られたりして…。蜘蛛達も俺に引っ張られるだろうし。
「大丈夫ですわ、シャルトルーズ様。この糸のお陰か、現在彼女とは一切の繋がりを感じません。
ですが、その…ここを出る前に、少々お話させていただけませんか?出来れば、2人きりで…。」
「え?構いませんが…。
じゃあちょっと俺ら抜けるから、お前ら自由にしてて。」
「わかった。」
やっと事件解決しそうでほっとする。しかし、今回最大の危機が自滅しそうになった事とは…情けないやら笑えるやら。
そして俺らが消えた後。
⦅…貴様ら、何故私を生かす?捕虜になる訳でもあるまい。⦆
「この人生はシャルのものだ。イレギュラーで俺達が出てきたけど、シャルが全ての決定権を持っている。」
「そしてそのシャルがあなたを生かすと決めた。私達は従うだけ。」
「俺だったらすぐに始末したがな。何度も何度も転生を繰り返し、人間らしくなったのだろうか。命を奪いたくないとは…。」
「俺も嫌だと思うよ。絢は?」
「私は…どうかな。もしアーラが同じ事を繰り返すようなら即始末するわ。でもチェスラメルさんの身体がなければ無力だもの。」
「そういう事だ。お前はせいぜい、サラのご機嫌取りでもするんだな。」
⦅………。⦆
そんな会話が、あったとか。
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