処刑された悪の侯爵令嬢に代わり、彼女の心を歪めた相手を処分します。私を騙して逃げた彼を捕まえ、永遠に私の物にするために必要な儀式だから

manji

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第11話

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分館に着いても、直ぐに母親の元に案内されたりはしなかった。
体調がすぐれないとの事で、まずは用意された部屋に通され、暫く待つよう私は執事に告げられる。

アレーヌの母親であるカレンは、きっと面倒くさい事は後回しにするタイプなのだろう。

まあこれは予想できていた事だはあった。
前史でアレーヌが初めて来た時も、同じ理由で10日程待たされているもの。

もちろん言うまでもなく、その後に顔を合わせた母親の顔色は大変血色がよい物だった。
それを見て、アレーヌは母親にも自分が歓迎されていなかった現実を突きつけられている。

嘘を吐くんなら少しは取り繕え。
心からそう思う。

「入りなさい」

「失礼いたします」

ドアがノックされ、許可を出すと付いて来た騎士達が部屋に入って来てお辞儀する。
彼らは屋敷にある通信機の様なマジックアイテムを使い、ジェラルド侯爵に連絡を入れるため私から離れていた。

勿論、その内容は完全に把握している。
なにせ、召喚したデーモンが憑いているもの。
まあ彼らに関しては、裏切る心配はないと思ってるけど。
かなりきつい目に合わせた訳だし。

とは言え、人間は物事を忘れていく生き物。
喉元過ぎればなんとやらというし。
裏切らない様ちょくちょく痛みを与えて、私の恐怖を魂レベルに刻み込んでおく必要があるわ。

酷い?

彼らのしようとした事を考えたら、生きていられるだけ感謝して欲しいぐらいだわ。
弱みに付け込んだ相手を犯人に仕立て上げて、年端も行かない少女を纏めて焼き殺そうとした訳だもの。
死刑じゃないだけ、超が付く温情よ。

取り敢えずオートモードを起動……と思ったけど、そういやミウの兄弟の件があったわね。

足元で丸まっている猫の兄弟を見る。
オートモードに、彼らの住処を見つけるといった特殊な行動を取らせたりは出来ない。
其の辺りは、私がちゃんと動いて用意してやらないと駄目だ。

それに今考えている父や皇子に対する報復のためにも、お金は必要だし……

それもアレーヌが稼いだ以上のお金が。
だから少し早いけど、本格的に金策を始めた方がいいのかもしれない。

けど、どうした物かしら……

貴族とは言え、7歳のアレーヌに動かせるお金はない。
前史でのアレーヌはアクセレイ家の家紋入りの宝石――一族の習わしで12になったら家から貸与される――を担保に種銭を作り、とある事業に投資して資産を一気に増やしていた。

更にそれ以外にも手を伸ばしていき、最終的にアレーヌは皇子との結婚を条件付きで買える程の資産を手に入れている。
彼女は間違いなく、その手の方面に非凡な才を持っていたと言えるだろう。

因みに、私はアレーヌと全く同じ投資をするつもりはなかった。
特に最初の投資は、やるとイメージがかなり悪くなってしまうから。

――彼女が初投資した事業の内容は、海外からのお茶の輸入である。

これが貴族の子女の間で大流行して、アレーヌは大金を稼いだ訳だけど……実はこのお茶には、麻薬的な依存症の出る成分が含まれていたのだ。

まあそこまで強力な物ではなかったからすぐ大事になる様な事はなかった訳だけど、時間の経過につれてじわじわとおかしいんじゃという噂が広まり、最終的に——販売開始から3年目――検査で問題があると出た事で、そのお茶は規制まで持っていかれている。

そんな物に投資するのは犯罪にならなかったのか?

それは問題なかったわ。
それまで国の方では未発見だった物で、特に禁止されていた訳ではなかったからね。
流石にそれで罰せられたら溜まった物じゃないでしょ?

だから投資していただけのアレーヌは罰せられる事は無かったし、しかも資金回収は事前情報で完璧に終えていたから、ノーダメージだったって訳。
だから全く問題なし。

と言いたい所だけど――

犯罪として罰せられなかったとはいえ、貴族の子女達に影響が出まくってた訳だからねぇ。
当然、そういった家の人間からは恨まれる事になったわ。
しかも過去に首にした侍女達の悪い噂も元々あったから、その一件で、アレーヌはあっという間に王国最悪の悪女として後ろ指を指される事になっちゃったと。

正直、周囲の評価なんて気にしないなら、同じ事をやっても問題ないわ。
でも讐劇でアレーヌの名声をまた再び下げるのは、個人的に好ましくないのよね。
せっかく報復をするなら、完璧な形で終わらせたいから。
だってその方が気持ちいいでしょ?

だからお茶への投資はしない。

後、他のも。
一応、お茶関連以外は健全な物ではあったんだけど、タイミングだったり立ち回りが難しい物が多いのよね。
で、そう言った能力に長けたアレーヌならともかく、私が下手に同じ事をやろうとしても失敗する可能性が高い訳。
だから、それらを追従はしない方向でお金は稼ぐつもり。

じゃあどうやって稼ぐのかって話になるけど……私は神様から授かったとんでもパワーを活用しようと思っていた。
まあどう考えてもそれしかない訳だしね。

で、現在ぱっと思い浮かぶ案は悪党退治。
まあ要は、悪人を懲らしめてその財産を頂いちゃおうって事ね。

華麗なる怪盗になって、あくどい貴族辺りの屋敷に忍び込んで金品を頂く。
これが現状で出来る金稼ぎでは、たぶん一番手っ取り早いと思うわ。

「けど、問題があるのよねぇ……」

「は?」

騎士が驚いてこっちを見る。
どうやら考えていた事が、無意識に口からこぼれてしまっていた様だ。
まあ彼らに聞かれたからと言って困る物ではないからいいけど。

「気にしなくていいわ」

騎士にそっけなくそう告げ、私は思考の海に舞い戻る。
問題は、そう問題は、お金を奪われた貴族が、何らかのあくどい手を使って、減った分を弱者から巻き上げる可能性が高いって事よ。
それは言ってみれば、余計な被害の拡大に、私が間接的に加担するに等しい行為である。

それはちょっと……

まあ殺してしまえばそう言う事は無いのかもしれないけど、いくら悪人とは言え、自分に攻撃してきた訳でもない相手をバンバン殺しちゃうのは流石にねぇ。
私がこの体に憑依したのはアレーヌの復讐のためであって、決して強盗殺人する為じゃない訳だし。

そもそも、この世界に送り出される際に、どこまでやっていいかの部分についての説明を神様から受けていない。
オールオッケーの可能性もあるけど、お金のために貴族を殺して回るとか、常識的に考えればアウトのはず。
何も考えず派手にやって神様の逆鱗に触れても事だし、これはどしようも無くなった時の、最後の手段位に考えておいた方がいいだろう。

「それが駄目なら……」

うーん、どうした物か?
もちろん、能力を使ったお金儲けの路線は変わらないわ。
というか、それ以外ないし。
けど、悪人退治以外の良い儲け方が思い浮かばない。

経営者視点を持たない、所詮雇われだった私に良い案などパッと湧いてくる訳もないのよねぇ……

宝の持ち腐れってのは、こういう事を言うのかしら。
自分の発想力の貧相さが嫌になるわ。

「うーん……」

「あの……お嬢様。考え込まれていらっしゃるみたいですけど、何かお悩み事でしょうか?」

眉間に皺を寄せて考え込んでいると、ミウが心配そうに尋ねて来た。

「ええ。ちょっとこれから先の事を考えて、使えるお金の工面を考えていたのよ。何かいいアイデアはないかしら」

隠す必要も特にないので、彼女に意見を尋ねてみた。
答えが出ない時は、人の意見を聞くのも一つの手である。
三人寄れば文殊の知恵と言うし。

「お金の工面ですか?うーん……お嬢様は神聖魔法を扱う事が出来るんですよね?」

「ええ」

神聖魔法ってのは、回復系の魔法n事ね。
ミウ達の弟を回復させたのがそう。

「でしたら、ポーションを作って販売されてみるというのはどうでしょうか?」

ポーションとは魔法の薬だ。
各種魔法の力が込められており、種類ごとに薬や美容などの様々な用途に使い分けられている。
熱死病の特効薬も、その一種ね。

「ポーション販売……」

ミウは神聖魔法が使える、イコール、ポーションを作れると考えている様だ。
まあ魔法をかけているのであながち間違いではないのだが、元となる液体の生成には、薬学的な特殊な知識が必要となる。
そのための素材や器具も当然用意しなければならないので、実際は魔法が使えるだけでは作り出す事は出来ない。

彼女が勘違いしたのは、この国でのポーション類の販売を教会が完全に取り仕切っているせいだろう。

けど――

「いい案ね。採用よ」

――問題なかった。

私に薬の詳しい知識なんて物はない。
けど、私には神様から貰った精製術という能力があった。
これ、色々な物を作り出せるってアバウトな説明しか受けていなかった訳だけど、ひょっとしたらと思って発動させて確認してみたたら、しっかり製作一覧にポーション類が表示されてた。
これを使えば、私でもポーションは問題なく作れそう。

しかもすごく簡単に……

ポーションに必要な素材を見ると、水と草が表示される。
どうやら草は雑草でも何でもいい様だ。

他のポーションも同じなのだろうか?

まあ普通に考えたら、そんな訳ないわよね。
神の能力で合成するから、草なら何でもいいと考えた方が自然だわ。

水と草ならすぐに用意できるわね……

「ちょっとやってみようかしら」

私は早速精製術を発動させる。
すると掌の上に乗るサイズの小さな茶色の壺が、私の目の前に現れた。

「ひゃっ!?」

「うわっ!?」

予告もなく急にやったせいで、ミウ達を驚かせてしまったみたい。
特にそれを見た騎士達の顔からは血の気が引き、がくがくと震え出す始末。
どうやら、私に何か酷い事をされるんじゃないかと考えたみたいね。

怯える騎士達を見て怯え過ぎと感じる反面。
恐怖で縛るのなら逆にこれぐらいがいい。
そう冷静に判断する私がいた。

……まあ、細かい事は考えない様にしよう。
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