聖歌使いの不細工令嬢はムカつく相手に呪いをかける。人の歌に勝手に惚れておいて、顔を見て散々罵って婚約破棄とか死ね

manji

文字の大きさ
2 / 11

第2話 ふざけるな

しおりを挟む
 王子から一方的な婚約破棄を言い渡され、あれから1月。父はその責任を取らされ、伯爵から男爵にまで降格させられていた。その際に、広かった領地とその資産の3分の2が没収されている。

 更にはガリア王子は俺の事を周囲に吹聴し。
 俺の醜い顔は王都でちょっとした噂になっている。

「お父様、お加減は如何ですか?」

 心労で倒れた父を、聖歌で癒す。恐らく俺の力が無ければ、父は衰弱死していただろう。正直、王子がここ迄やってくるとは夢にも思わなかった。

 ……ふざけやがって。

「カレン……わしが不甲斐ないばかりに……お前には辛い思いばかりを……すまん……」

 父は目元を押さえ、すすり泣く。

「お父様のせいではありませんわ」

 そうだ。父は何も悪い事などしていない。全てはあの色呆け王子のせいだ。

「それに、私は噂の事など一切気にしていませんから……どうか心穏やかに……」

「すまない……すまない……」

 父はそれでも泣いて謝り続ける。
 この人が何をした?
 どうしてこんな酷い目に合わなければならない?

 腹の中で怒りと憎しみが混ざり合い、今にも爆発しそうだ。だが俺はそんな感情をぐっとこらえ、慈愛と友愛を籠めて歌を口ずさむ。

「さあ眠りなさい。貴方の悲しみは夢がきっと癒してくれるはず」

 聖歌が効果を表し、安らかな寝息を立て始める。今の父は情緒不安定だ。暫くは聖歌での精神安定を続ける必要があるだろう。

「なんとかしないと」

 瞬間的な癒しを行う事は出来ても、状況が改善されなければ堂々巡りだ。父には暫く養生してもらう必要がある。

「セバスチャン、手続きの用意を」

「どのような手続きで御座いましょうか。お嬢様」

 執事のセバスチャンは恭しく頭を下げる。他の使用人達は俺を避けて余所余所しく振る舞う――不細工が移るとでも思っているのだろうか?――中、彼は普通に接してくれる数少ない人物だ。

「男爵家当主代理の手続きです。父には暫く療養が必要ですから、その間は私が女男爵として政務に着きます」

 元伯爵家と高位の貴族ではあったが、兄弟は一切おらず。親戚筋も少し前に会った戦争で亡くなっている。その為、父の後を継ぐ――代理を務められる血縁は私しかいなかった。

「は、畏まりました」

 俺が代理となって、父の心労の元を断つ事にする。
 その大きな目的は3つ。

 一つは、馬鹿王子を地獄に叩き落す事だ。

 最初は少し痛い目に遇わせられれば良いか位に思っていたが、ここ迄やられている以上、軽いお仕置きで済ませる気はない。地獄を見せてやる。

 二つ目は噂の鎮静だ。

 実は聖歌を使えば、一時的に顔を美しく整える事は出来る。王子を排除し、その上でヴェールをはがして顔を晒す。醜くくはないと周りにアピールする事で、余計な噂は収まるだろう。

 3つ目は爵位の挽回。

 本来、降格される謂れ等ないのだ。最悪国王を歌で洗脳する事も視野に入れる。王のバカ息子のせいで、此方は酷い目に遇っているのだ。 洗脳されても文句は言えまい。

「見ていろよ」

 思わず地が出てしまい。メイドが驚いた様に此方を見つめる。だが特には気にしない。どうせ普段から俺の悪口を言っているのだ。そこに少しぐらい+αが増えた所で大した事は無いだろう。

 俺は父の寝室を後にし、執務室へと向かう。
 セバスチャンはそこで書類の用意を行なっているだろうから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...