聖歌使いの不細工令嬢はムカつく相手に呪いをかける。人の歌に勝手に惚れておいて、顔を見て散々罵って婚約破棄とか死ね

manji

文字の大きさ
9 / 11

第9話 転生者

しおりを挟む
舞台袖から様子を伺っていると、続々と王家に連なる貴人が席に着きだす。
その中にガリア王子の姿を見つけ、思わず目を見開いた。
何故なら彼は談笑していたからだ。薄暗いためハッキリとは確認できないが、顔の色艶も良さそうだ。

「何でガリア王子が……」

思わず疑問を口にしてしまい。ハッとなって慌てて口を押える。周囲を見渡すが、此方に気を取られている人間はおらず。どうたら聞かれてはいなかった様だ。あんな台詞を王家関連人間に聞かれていたら、確実に不審がられていただろう。

しかし――

王子を注視する。呪いは依然かかったままだ――自分出かけた物なので地ハッキリわかる。

何故あんなに元気そうなのだろうか?
ひょっとして心が壊れておかしくなってしまったとか?
それも十分あり得るな。

まあガリア王子の事は気にしない事にする。もう彼への復讐は終えてあるのだ、いつまでもその事を引っ張っていても仕方がない。今は未来――爵位の挽回――だけを考えるとしよう。

兎に角、ガイゼル国王陛下に歌で頸木を――

席に着いた陛下と一瞬目が合う。その瞬間胸に何かが響き、背筋に寒気が走る。見ると、陛下も目を見開いて此方を見ていた。なにかやばい感じがする。極度の緊張からか、心臓が早鐘を打ち、息が上がってしまう。

脳裏にぱっと、異世界転生という言葉が浮かび上がる。
俺が転生している以上、他の人間が同じように転生してきていてもおかしくはなかった。寧ろ先程の共鳴の様な現象は、そう考えた方がよっぽど納得できる。

どうする?

俺は迷う。聖歌と呪歌で国王の心を掴む予定だったが、もし本当に異世界人で特殊な能力を持っていた場合、仕掛けるのは余りにも無謀に感じる。目が合っただけでお互いに違和感を感じたのだ、仕掛ければバレる可能性は高い。

上手く効いてくれればいいが、失敗すれば敵対行為と看做されて、その場で縛り首だってありうるだろう。当然そうなれば家も潰されてしまう。

では止めるか?

無難な気もするが、聖歌抜きだと俺の歌はそこまでじゃなかった。少なくとも万人を問答無用で虜にするレベルには達していない。
歌手として大絶賛されている俺の歌が大した事がなければ、陛下はきっと違和感を感じるだろう。その事から俺の能力に辿り着いてしまうかもしれない。

となると、能力は見せるが一部だけに留めるのが一番か。

隠すのではなく。誤解させるのだ。人々の心を震わせ、勘当させる程度の能力だと。王家に敵対する意思がない事だけは、はっきりとさせておかないと。呪歌がばれるのが――王子にかけている事を考えると――一番最悪だ。

「カレン様……そろそろ」

見ると音楽隊が列を作って並んでいる。どうやらもう入場の様だ。俺は彼らの最後尾に並ぶ。程なくして鐘が鳴らされ、俺達は入場する。

出来るだけ陛下と目を合わせない様に動き、壇上に立つ。目が合うと余計な緊張をしてへまをしてしまいそうだからだ。
やがて音楽が流れだし――俺は聖歌を口ずさむ。

どうか騙せますように。
それだけを胸に俺は歌を歌う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...