10 / 11
第10話 国王
しおりを挟む
「あー、疲れた」
俺の出番が終わったので、急いで個人の控室へと戻る。
其の儘倒れ込むかの様に、ぐったりとソファに凭れ掛かった。
兎に角疲れた。こんなに疲れたのは転生前以来だろう。後は国王が俺の能力を誤解してくれる事を祈るばかりだ。
心理的疲労からウトウトしてしまい、扉をノックする音で意識を取り戻す。
ヴェールに涎が付いていたので口元を拭い、予備の物と取り換えてからどうぞと返した。
「へ……陛下!?」
扉が開くと、まずは執事が中を検め。次いで大量のお付きを連れた国王陛下と王妃が室内へと入って来た。部屋は大きい方だが、全員入るのは流石に無理がある為、その大半は外で控えている。
「見事な歌声であった」
「いえ、滅相もございません」
ソファーから立ち上がり国王夫妻にお辞儀する。
陛下から何らかのアクションがあるだろうとは思っていたが、まさかまっすぐ乗り込んでこようとは……しかしその穏やかな表情を見る限り、悪い結果になってはいない様に思える。
ガイゼル王が片手を上げると、お付きの者達が部屋から出て行き。扉が閉じられる。どうやら本題に入る様だ。
「単刀直入に聞くが、息子のあれは君の力かね?」
「いえ」
きっぱりと否定する。素直に答える訳がない。
「別に息子の事に関しては、私は何とも思っていない。あれが君の家にやった事を考えれば、当然の報いだろうからな」
王はその事で責める気はないと口にする。勿論その言葉を鵜呑みにするつもりはない。だいたい、家の降格に関しては王も関わっている。王子が喚いただけでああなる訳がない。王が王子の言い分を認めたからこそだ。
それをさも自分には関わりないかの様にのたまう男の言葉を、誰が信じる者か。
「王子様を恨むなどと、恐れ多い事です」
「そうか。その言葉が嘘か誠かは、この際どうでもいいだろう。重要なのは君の力だ。その力はこの国の役に立つ。同郷同士、手を取り合って国を盛り立てていこうではないか」
予想通り。この男は俺と同じ転生者の様だ。王妃の横でそれっぽい事を堂々と口にする当たり、ひょっとしたら彼女もその事は知らされているのかもしれない。
「この国の為、私に出来る事があれば何なりと」
兎に角、酷い結果にはなら無さそうで一安心する。だが呪歌の方は今後使うのは出来る限り控えた方が良いだろう。隠していた事がばれれば完全にアウトだからな。
「よろしく頼む。ああ、そうそう。ガリアもぜひ君に会いたいと言っていてね。息子は婚約が破談になったばかりで傷ついているんだ。良かったら慰めてやってくれ」
悪い冗談にも程がある。破談になったのは知っているが、元(元々?)婚約者である俺にあのバカ王子を慰めろとか笑えたものではない。
そもそも席で見かけた感じ、それが必要そうにも見えなかった。
王子がぴんぴんしているのは、ひょっとしたら王のチート能力なのかもしれない。
「息子の事、お願いしますね」
誰がお願いされるか。ぼけ!とは返すわけにもいかないので、俺は曖昧に微笑んでおく。でもよく考えたらヴェールがあるから相手には見えない事に気づく。
「ああ、後で正式に連絡がいくとは思うが。今回の歌の褒美として、侯爵位を君に送る。これで恨みつらみは忘れてくれ」
「へ……」
「では失礼する」
そう言い残すと国王は部屋を出て行く。
つーかマジで?
国王が嘘を言っていないのなら、あっさり目標をクリアしてしまった事になる。拍子抜けもいい所だ。まあこれから先、王に力を利用される事に――どういう形かまでは分からない――はなるが、まあくれるというなら喜んでもらっておくとしよう。
しかし歌っただけで侯爵か……ちゃんと建前は考えてくれているんだろうか?そこが不安だ。流石に歌だけで侯爵になったとなれば、周りの妬みも酷いだろう。聖歌と呪歌で黙らせる事も出来るが、あまり派手にやるのは宜しくない。特に呪歌の方は。
「まあ今考えても仕方がないか」
世の中なる様にしかならない。
状況次第で対応を考えていくしかないだろう。
しかし――
「だらだら過ごしたかったんだけどなぁ……」
復讐や復権を終えたら、だらだらとした生活に戻りたかったのだが。どうやらそれは難しそうだ。
もうそこは諦めるしかないだろう。
世の中、なかなか上手く行かない物だ。
俺の出番が終わったので、急いで個人の控室へと戻る。
其の儘倒れ込むかの様に、ぐったりとソファに凭れ掛かった。
兎に角疲れた。こんなに疲れたのは転生前以来だろう。後は国王が俺の能力を誤解してくれる事を祈るばかりだ。
心理的疲労からウトウトしてしまい、扉をノックする音で意識を取り戻す。
ヴェールに涎が付いていたので口元を拭い、予備の物と取り換えてからどうぞと返した。
「へ……陛下!?」
扉が開くと、まずは執事が中を検め。次いで大量のお付きを連れた国王陛下と王妃が室内へと入って来た。部屋は大きい方だが、全員入るのは流石に無理がある為、その大半は外で控えている。
「見事な歌声であった」
「いえ、滅相もございません」
ソファーから立ち上がり国王夫妻にお辞儀する。
陛下から何らかのアクションがあるだろうとは思っていたが、まさかまっすぐ乗り込んでこようとは……しかしその穏やかな表情を見る限り、悪い結果になってはいない様に思える。
ガイゼル王が片手を上げると、お付きの者達が部屋から出て行き。扉が閉じられる。どうやら本題に入る様だ。
「単刀直入に聞くが、息子のあれは君の力かね?」
「いえ」
きっぱりと否定する。素直に答える訳がない。
「別に息子の事に関しては、私は何とも思っていない。あれが君の家にやった事を考えれば、当然の報いだろうからな」
王はその事で責める気はないと口にする。勿論その言葉を鵜呑みにするつもりはない。だいたい、家の降格に関しては王も関わっている。王子が喚いただけでああなる訳がない。王が王子の言い分を認めたからこそだ。
それをさも自分には関わりないかの様にのたまう男の言葉を、誰が信じる者か。
「王子様を恨むなどと、恐れ多い事です」
「そうか。その言葉が嘘か誠かは、この際どうでもいいだろう。重要なのは君の力だ。その力はこの国の役に立つ。同郷同士、手を取り合って国を盛り立てていこうではないか」
予想通り。この男は俺と同じ転生者の様だ。王妃の横でそれっぽい事を堂々と口にする当たり、ひょっとしたら彼女もその事は知らされているのかもしれない。
「この国の為、私に出来る事があれば何なりと」
兎に角、酷い結果にはなら無さそうで一安心する。だが呪歌の方は今後使うのは出来る限り控えた方が良いだろう。隠していた事がばれれば完全にアウトだからな。
「よろしく頼む。ああ、そうそう。ガリアもぜひ君に会いたいと言っていてね。息子は婚約が破談になったばかりで傷ついているんだ。良かったら慰めてやってくれ」
悪い冗談にも程がある。破談になったのは知っているが、元(元々?)婚約者である俺にあのバカ王子を慰めろとか笑えたものではない。
そもそも席で見かけた感じ、それが必要そうにも見えなかった。
王子がぴんぴんしているのは、ひょっとしたら王のチート能力なのかもしれない。
「息子の事、お願いしますね」
誰がお願いされるか。ぼけ!とは返すわけにもいかないので、俺は曖昧に微笑んでおく。でもよく考えたらヴェールがあるから相手には見えない事に気づく。
「ああ、後で正式に連絡がいくとは思うが。今回の歌の褒美として、侯爵位を君に送る。これで恨みつらみは忘れてくれ」
「へ……」
「では失礼する」
そう言い残すと国王は部屋を出て行く。
つーかマジで?
国王が嘘を言っていないのなら、あっさり目標をクリアしてしまった事になる。拍子抜けもいい所だ。まあこれから先、王に力を利用される事に――どういう形かまでは分からない――はなるが、まあくれるというなら喜んでもらっておくとしよう。
しかし歌っただけで侯爵か……ちゃんと建前は考えてくれているんだろうか?そこが不安だ。流石に歌だけで侯爵になったとなれば、周りの妬みも酷いだろう。聖歌と呪歌で黙らせる事も出来るが、あまり派手にやるのは宜しくない。特に呪歌の方は。
「まあ今考えても仕方がないか」
世の中なる様にしかならない。
状況次第で対応を考えていくしかないだろう。
しかし――
「だらだら過ごしたかったんだけどなぁ……」
復讐や復権を終えたら、だらだらとした生活に戻りたかったのだが。どうやらそれは難しそうだ。
もうそこは諦めるしかないだろう。
世の中、なかなか上手く行かない物だ。
20
あなたにおすすめの小説
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる