聖歌使いの不細工令嬢はムカつく相手に呪いをかける。人の歌に勝手に惚れておいて、顔を見て散々罵って婚約破棄とか死ね

manji

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第10話 国王

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「あー、疲れた」

俺の出番が終わったので、急いで個人の控室へと戻る。
其の儘倒れ込むかの様に、ぐったりとソファに凭れ掛かった。

兎に角疲れた。こんなに疲れたのは転生前以来だろう。後は国王が俺の能力を誤解してくれる事を祈るばかりだ。

心理的疲労からウトウトしてしまい、扉をノックする音で意識を取り戻す。
ヴェールに涎が付いていたので口元を拭い、予備の物と取り換えてからどうぞと返した。

「へ……陛下!?」

扉が開くと、まずは執事が中を検め。次いで大量のお付きを連れた国王陛下と王妃が室内へと入って来た。部屋は大きい方だが、全員入るのは流石に無理がある為、その大半は外で控えている。

「見事な歌声であった」

「いえ、滅相もございません」

ソファーから立ち上がり国王夫妻にお辞儀する。
陛下から何らかのアクションがあるだろうとは思っていたが、まさかまっすぐ乗り込んでこようとは……しかしその穏やかな表情を見る限り、悪い結果になってはいない様に思える。

ガイゼル王が片手を上げると、お付きの者達が部屋から出て行き。扉が閉じられる。どうやら本題に入る様だ。

「単刀直入に聞くが、息子のあれは君の力かね?」

「いえ」

きっぱりと否定する。素直に答える訳がない。

「別に息子の事に関しては、私は何とも思っていない。あれが君の家にやった事を考えれば、当然の報いだろうからな」

王はその事で責める気はないと口にする。勿論その言葉を鵜呑みにするつもりはない。だいたい、家の降格に関しては王も関わっている。王子が喚いただけでああなる訳がない。王が王子の言い分を認めたからこそだ。

それをさも自分には関わりないかの様にのたまう男の言葉を、誰が信じる者か。

「王子様を恨むなどと、恐れ多い事です」

「そうか。その言葉が嘘か誠かは、この際どうでもいいだろう。重要なのは君の力だ。その力はこの国の役に立つ。同郷・・同士、手を取り合って国を盛り立てていこうではないか」

予想通り。この男は俺と同じ転生者の様だ。王妃の横でそれっぽい事を堂々と口にする当たり、ひょっとしたら彼女もその事は知らされているのかもしれない。

「この国の為、私に出来る事があれば何なりと」

兎に角、酷い結果にはなら無さそうで一安心する。だが呪歌の方は今後使うのは出来る限り控えた方が良いだろう。隠していた事がばれれば完全にアウトだからな。

「よろしく頼む。ああ、そうそう。ガリアもぜひ君に会いたいと言っていてね。息子は婚約が破談になったばかりで傷ついているんだ。良かったら慰めてやってくれ」

悪い冗談にも程がある。破談になったのは知っているが、元(元々?)婚約者である俺にあのバカ王子を慰めろとか笑えたものではない。
そもそも席で見かけた感じ、それが必要そうにも見えなかった。

王子がぴんぴんしているのは、ひょっとしたら王のチート能力なのかもしれない。

「息子の事、お願いしますね」

誰がお願いされるか。ぼけ!とは返すわけにもいかないので、俺は曖昧に微笑んでおく。でもよく考えたらヴェールがあるから相手には見えない事に気づく。

「ああ、後で正式に連絡がいくとは思うが。今回の歌の褒美として、侯爵位を君に送る。これで恨みつらみは忘れてくれ」

「へ……」

「では失礼する」

そう言い残すと国王は部屋を出て行く。

つーかマジで?

国王が嘘を言っていないのなら、あっさり目標をクリアしてしまった事になる。拍子抜けもいい所だ。まあこれから先、王に力を利用される事に――どういう形かまでは分からない――はなるが、まあくれるというなら喜んでもらっておくとしよう。

しかし歌っただけで侯爵か……ちゃんと建前は考えてくれているんだろうか?そこが不安だ。流石に歌だけで侯爵になったとなれば、周りの妬みも酷いだろう。聖歌と呪歌で黙らせる事も出来るが、あまり派手にやるのは宜しくない。特に呪歌の方は。

「まあ今考えても仕方がないか」

世の中なる様にしかならない。
状況次第で対応を考えていくしかないだろう。
しかし――

「だらだら過ごしたかったんだけどなぁ……」

復讐や復権を終えたら、だらだらとした生活に戻りたかったのだが。どうやらそれは難しそうだ。
もうそこは諦めるしかないだろう。

世の中、なかなか上手く行かない物だ。
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