2 / 3
2.「あいるん、あいるんるん~♪」
しおりを挟む
「あいるん、あいるんるん~!」
私がこの呪文を唱えると、あーら不思議!
首にかけていた白猫の形のペンダントトップのネックレスが光って……。
魔女っ娘に変身~なんです。
「魔女っ娘のアイリーハルルンことアイリ―なんです」
三角のとんがり帽子の先には星の形の飾りが一つ。
黒いローブには魔女っ娘の証のブローチが光っているんです。
ブローチの一部の水晶の中身がまだ三日月の形だから、これが満ちると完全な魔女になれるんですよ。
先日、私は何とか『魔女昇格試験』の第一関門を突破しました!
もう本当に緊張して、手汗が半端なかったなんですから……。
「とか言って、いつもの笑顔で何とか乗り切ったんだからアンタは大したもんよ、アイリ―」
「ありがとうなんです、ホワン」
ホワンは、私の首に掛かっているネックレスのペンダントが実現した姿の白猫ちゃんなんです。
真っ白な毛並みに、ブルースカイの瞳がとっても綺麗な女の子なんです!
「あら、最大の賛辞をありがとう」
ああ。
ホワンには私の心で思ったことはお見通しなんですね。
さすが、私のお供の猫さん。
「いや……。アイリ―? あなたの心の声は駄々洩れなのよ」
ホワンは呆れ気味に立っています。
その言葉を聞いて、私は思い出します。
小学生の私が、ある日出会った本から登場したホワンに教えられた事。
お供の動物と魔女っ娘は喋らずとも、意思疎通が出来ちゃう事を。
あれ、でもプッティとルンはそんなこと出来ないって喚いていた気が……。
私とホワンが特にこの事に秀でているのは、試験管の魔女様から教えてもらったんだっけ。
「ホワン、次の『魔女昇格試験』の内容は……。あれ、何だったんですっけ?」
ズルっとホワンが器用にコケる真似をした。
「アイリ―……。貴女ボケるのにはまだ早いわよ!」
「別に寝ぼけているつもりはないけれど?」
「ああ、貴女って……ほんっとうに天然ね!」
ホワンが呆れて嘆いている。
天然、ですかー。
何だかクラスの子にも同じこと言われた記憶があるのです。
そんなに私って変かしら?
「アイリ―。次の『魔女昇格試験』は」
そこでホワンが言葉を切る。
ごくり、と私は喉を鳴らした。
「魔法の杖を出すことよ!」
それから数日後。
学校から帰った私は人気のない神社の裏手に居た。
ホワンも一緒だ。
「いい? アイリ―。念じるのよ、箒を出した時と一緒よ基本は」
真面目なホワンを見て、私は真面目に頷く。
「さあ、呪文よ!」
私は頭の中でイメージをする。
この手に杖。
杖を出す!
「あいるん、あいるんるん~! 魔法の杖よ出てきてです!」
ふぉん!
「あ、出来た……」
「さっすがアイリ―! 初っ端から出来ちゃったじゃない!」
私の利き手の右手には、しっかりと魔法の杖が握られている。
木の棒の先に綺麗な石が光っている。
「この石は?」
私はホワンを見る。
「ピンクダイヤじゃないかしら。アイリ―らしい色だわ」
うんうんと頷くホワンが何だか誇らしげだ。
とにかく私は胸をなでおろしたのだ。
だが。
練習を重ねるごとに、杖の出現率は悪くなる一方だった。
今日だって。
「おかしいです。ホワン」
私は泣きそうになってホワンを見た。
「そうね……」
ホワンも眉根を寄せて悩んでいる。
「おかしいわね」
「そうですよ、なんでです?」
今日は五回に一回しか出せなかった。
私は項垂れた。
ホワンも項垂れていた。
そんな調子がイマイチなまま、『魔女昇格試験』はやって来てしまった。
「さあ、『魔女昇格試験』第二試験へいらっしゃい皆さん。まずは第一試験合格おめでとう。今日の試験は魔法の杖を出すことです」
魔女の試験官の話を、私は上の空で聞いていた。
昨日は一睡もできなかったのだ。
不安で不安で、仕方なかったのだ。
居並ぶ、魔女っ娘たちが緊張した面持ちでその場に集まっている。
アイリ―の顔色は冴えなかった。
隣でホワンが心配げにこちらを見上げている。
私は弱々しく笑顔を見せた。
最初の子が呼ばれて、無事に杖を呼び出せた姿を見ると余計に不安が増してきた。
アイリ―の番は最後から二番目だった。
次々に成功していく魔女っ娘たち。
中には、
「残念だったね。キラリット、不合格」
杖を呼び出せず、がっくりと肩を落として泣く魔女っ娘も居た。
そんな様子を見て、私は。
「ホワン」
と呼んだ。
「なあに、アイリ―」
優しくホワンが私の名を呼ぶ。
「この試験に合格できなかったら、ごめんなさい」
「……アイリ―」
ホワンが肩に乗ってきた。
猫らしいことが嫌いなホワンに私は驚く。
「駄目だったら、またチャレンジすればいいわ。貴女は大丈夫。出来る魔女っ娘よ。胸の中のピンクダイヤモンドの輝きを信じて」
「次、アイリ―ハルルン」
「はい!」
私は覚悟を決めた。
「あいるん、あいるんるん……魔法の杖よ、出てきてなんです!」
ふぉおん!
不思議な音がして……。
私は思わず目を閉じてゆっくりと開いた。
「杖、……あるわ!」
魔法の杖はしっかりとアイリ―の右手にあった。
「よくやったね。アイリ―ハルルン。合格だよ」
試験管の魔女の言葉に涙が目に浮かぶ。
「やったわ、やったわ! ホワン!」
私はホワンに抱き付いた。
ホワンは優しく、頭をポンポンとしてくれた。
さあ、次も頑張らなきゃなんです。
魔女目指して、
「頑張りますよー!」
私は満月の夜空にホワンと手を伸ばしたのでした。
私がこの呪文を唱えると、あーら不思議!
首にかけていた白猫の形のペンダントトップのネックレスが光って……。
魔女っ娘に変身~なんです。
「魔女っ娘のアイリーハルルンことアイリ―なんです」
三角のとんがり帽子の先には星の形の飾りが一つ。
黒いローブには魔女っ娘の証のブローチが光っているんです。
ブローチの一部の水晶の中身がまだ三日月の形だから、これが満ちると完全な魔女になれるんですよ。
先日、私は何とか『魔女昇格試験』の第一関門を突破しました!
もう本当に緊張して、手汗が半端なかったなんですから……。
「とか言って、いつもの笑顔で何とか乗り切ったんだからアンタは大したもんよ、アイリ―」
「ありがとうなんです、ホワン」
ホワンは、私の首に掛かっているネックレスのペンダントが実現した姿の白猫ちゃんなんです。
真っ白な毛並みに、ブルースカイの瞳がとっても綺麗な女の子なんです!
「あら、最大の賛辞をありがとう」
ああ。
ホワンには私の心で思ったことはお見通しなんですね。
さすが、私のお供の猫さん。
「いや……。アイリ―? あなたの心の声は駄々洩れなのよ」
ホワンは呆れ気味に立っています。
その言葉を聞いて、私は思い出します。
小学生の私が、ある日出会った本から登場したホワンに教えられた事。
お供の動物と魔女っ娘は喋らずとも、意思疎通が出来ちゃう事を。
あれ、でもプッティとルンはそんなこと出来ないって喚いていた気が……。
私とホワンが特にこの事に秀でているのは、試験管の魔女様から教えてもらったんだっけ。
「ホワン、次の『魔女昇格試験』の内容は……。あれ、何だったんですっけ?」
ズルっとホワンが器用にコケる真似をした。
「アイリ―……。貴女ボケるのにはまだ早いわよ!」
「別に寝ぼけているつもりはないけれど?」
「ああ、貴女って……ほんっとうに天然ね!」
ホワンが呆れて嘆いている。
天然、ですかー。
何だかクラスの子にも同じこと言われた記憶があるのです。
そんなに私って変かしら?
「アイリ―。次の『魔女昇格試験』は」
そこでホワンが言葉を切る。
ごくり、と私は喉を鳴らした。
「魔法の杖を出すことよ!」
それから数日後。
学校から帰った私は人気のない神社の裏手に居た。
ホワンも一緒だ。
「いい? アイリ―。念じるのよ、箒を出した時と一緒よ基本は」
真面目なホワンを見て、私は真面目に頷く。
「さあ、呪文よ!」
私は頭の中でイメージをする。
この手に杖。
杖を出す!
「あいるん、あいるんるん~! 魔法の杖よ出てきてです!」
ふぉん!
「あ、出来た……」
「さっすがアイリ―! 初っ端から出来ちゃったじゃない!」
私の利き手の右手には、しっかりと魔法の杖が握られている。
木の棒の先に綺麗な石が光っている。
「この石は?」
私はホワンを見る。
「ピンクダイヤじゃないかしら。アイリ―らしい色だわ」
うんうんと頷くホワンが何だか誇らしげだ。
とにかく私は胸をなでおろしたのだ。
だが。
練習を重ねるごとに、杖の出現率は悪くなる一方だった。
今日だって。
「おかしいです。ホワン」
私は泣きそうになってホワンを見た。
「そうね……」
ホワンも眉根を寄せて悩んでいる。
「おかしいわね」
「そうですよ、なんでです?」
今日は五回に一回しか出せなかった。
私は項垂れた。
ホワンも項垂れていた。
そんな調子がイマイチなまま、『魔女昇格試験』はやって来てしまった。
「さあ、『魔女昇格試験』第二試験へいらっしゃい皆さん。まずは第一試験合格おめでとう。今日の試験は魔法の杖を出すことです」
魔女の試験官の話を、私は上の空で聞いていた。
昨日は一睡もできなかったのだ。
不安で不安で、仕方なかったのだ。
居並ぶ、魔女っ娘たちが緊張した面持ちでその場に集まっている。
アイリ―の顔色は冴えなかった。
隣でホワンが心配げにこちらを見上げている。
私は弱々しく笑顔を見せた。
最初の子が呼ばれて、無事に杖を呼び出せた姿を見ると余計に不安が増してきた。
アイリ―の番は最後から二番目だった。
次々に成功していく魔女っ娘たち。
中には、
「残念だったね。キラリット、不合格」
杖を呼び出せず、がっくりと肩を落として泣く魔女っ娘も居た。
そんな様子を見て、私は。
「ホワン」
と呼んだ。
「なあに、アイリ―」
優しくホワンが私の名を呼ぶ。
「この試験に合格できなかったら、ごめんなさい」
「……アイリ―」
ホワンが肩に乗ってきた。
猫らしいことが嫌いなホワンに私は驚く。
「駄目だったら、またチャレンジすればいいわ。貴女は大丈夫。出来る魔女っ娘よ。胸の中のピンクダイヤモンドの輝きを信じて」
「次、アイリ―ハルルン」
「はい!」
私は覚悟を決めた。
「あいるん、あいるんるん……魔法の杖よ、出てきてなんです!」
ふぉおん!
不思議な音がして……。
私は思わず目を閉じてゆっくりと開いた。
「杖、……あるわ!」
魔法の杖はしっかりとアイリ―の右手にあった。
「よくやったね。アイリ―ハルルン。合格だよ」
試験管の魔女の言葉に涙が目に浮かぶ。
「やったわ、やったわ! ホワン!」
私はホワンに抱き付いた。
ホワンは優しく、頭をポンポンとしてくれた。
さあ、次も頑張らなきゃなんです。
魔女目指して、
「頑張りますよー!」
私は満月の夜空にホワンと手を伸ばしたのでした。
1
あなたにおすすめの小説
ノビの大活躍――いくら丼の奇跡【トランザニヤ物語SS】
楓 隆寿
絵本
*カクヨムさんでも掲載中です。
異世界冒険譚【トランザニヤ物語】のSS
絵本にしてみました。
いくら(丼)をフィーチャーした作品です。
この世に、神の涙と呼ばれる食材がある。その正体は、東の国「ヤマト」の古文書に記された「いくら丼」だった!
氷に覆われた王国を救うため、若き料理人ノビは、氷の姫リュミナと共に大冒険へ旅立つ。
魔導鍋を武器に海竜の守護を突破し、氷の大地で幻の穀物を収穫。そして、火山の麓で魂を込めた器を創り上げる。
はたしてノビは、すべての難題を乗り越え、絶望に閉ざされた王国に奇跡を起こせるのか?
料理の力と、小さな勇気が紡ぐ、心温まるファンタジー冒険譚。
#AIイラスト
生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち
はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。
5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。
一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。
それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。
彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
お月様とオオカミのぼく
いもり〜ぬ(いもいもぶーにゃん)
絵本
ある日の雲一つない澄みわたった夜空にぽっかり浮かぶ大きな満月。その下に広がる草原に一匹の…まだ子供の真っ黒なオオカミがちょこんと座っていた。
「今日は、すごい大きくて、すごい丸くて、立派なお月様…こんなお月様の夜は、人間になれるって森の図書室の本で読んだけど…ええっと…えーっと…どうするんやっけ…?」
と、うーんと考え込む子供のオオカミ。
「えーっと、まずは、立つんやったっけ?」
うーん…と言いながら、その場で立ち上がってみた。
「えーっと、次は、確か…えーっと…お月様を見上げる?…」
もしよろしければ、続きは本文へ…🌝🐺
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる