迷子の天使の話~王子妃セスから冒険者レノになった話 シリーズ第4弾~

氷室 裕

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33 ふたりの婚約

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 今宵、王城内で煌びやかな祝賀パーティが開催されている。西国タリアネシアの王城にある晩餐の間には、多くの貴族が集まっていて美しい音楽が流れている。

 毎年舞踏会が行われていた場所ではあるが、現在は特別な外賓の接待と王族の大きな祝いごとがある際に使用されている豪華絢爛な場所だ。

 そこは王城の1階ではなく大階段を上った先にあるため、多くの貴族は宮廷勤めでもしていなければ、大階段を上る機会さえない。

 王城内には、そうそう立ち入る機会が来ないため、浮かれた貴族や不審者が王城内に忍び込まぬよう、大階段の下に警備兵が立ち並んでいる。

 貴族にとっては非日常の晴れ舞台であり、招待された多くのもの達が煌びやかに着飾った姿で、誇らしげに参加している。

 もちろんアンティジェリア王国からの賓客であるレオナルド王子と王子妃、それに俺や愛するノアもここに立ち会う。

 壇上にはアリア王女の兄君であるヒューベルト王子殿下が、晴れ晴れしい顔をしながら二人を見守っている。

 会場に隣接した部屋も開放されており、椅子の置かれたテーブルに軽食とグラスが用意されている。来賓も俺たちも、西国タリアネシアの国王の言葉を今は今かと待っている。

「皆、本日はよく来てくれた!長い挨拶など今日はやめて、大事なことを伝えておく。我が国の王太子であるソルヴィンと、リティニア王国のアリア王女の2人が、国法により、本日無事に婚約した事をここに公表する。長い間待たせて悪かった。さあ、祝おうではないか!婚約おめでとう!我が息子ソルヴィン、そして王女アリア!」

 王の宣言により、会場に大きな拍手が巻き起こる。

 以前から結婚の話があった隣国リティニア王国には俺との話で進んでいた。しかしソルヴィン兄上とアリア王女には7才の年の差があるにも関わらず密やかに愛し合い、年の差など感じさせぬほど2人は仲睦まじく、お互いに惹かれあってこの日を迎えたのだと伝えられ、会場となったホールは歓声に包まれたのだった。

 リティニア王国の王命により参じたヒューベルト殿下が続いて宣言する。

「リティニア王国の代表として参上した。王命によりこのヒューベルトが、ふたりの婚姻を承認する。ソルヴィン王太子、我が妹アリア、婚約おめでとう。この先、互いに誠心誠意支え合い、王国の発展に努めてくれることを願おう。新たな門出に際し、幸多からんことを祈念する」

 リティニア王国の美しい王子の宣言に、厳かで幸福な雰囲気で満たされて、会場にいる誰もがその凛々しい姿に息を呑んだ。

 ヒューベルト殿下は天井に両手を向け、会場いっぱいに虹を作り出し、心からの祝福を示した。

 ソルヴィン王子25歳。春到来に表情を柔らかくし、左手を愛しいアリア王女の腰に添え、ふたりは微笑み合った。

 










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