王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

文字の大きさ
163 / 317
第11章 神の暇つぶし編

⑥シュウの覚悟

しおりを挟む
「セス!」「レノ!」
「セスー?目が覚めたー?」
「は・・ぃ」

 俺はどうしたんだっけ・・みんな、いる。
 紅い瞳・・この人は・・会った事がある。

「ははっ!可愛い!俺だよ?久しぶりだねぇ、セス?」
「はい・・」

「んー、まだぼんやりかぁ。セス?気分はどう?ねぇ、俺たち相思相愛だよね?俺のところに来ない?」
「はい・・」
「本当に?嬉し──」
「ロキ!お前、あっちに行ってろ!セス、目が覚めたか?」

 ロキ?・・人間になっていても、俺を見つめる燃えるような瞳の揺らめきは変わらない。
 レイン?ツカサさんは?

「・・白い狼さん?こんにちは・・レイン、ツカサさんは?会えたの?」

 レイン、まさかその顔は・・ツカサさんに会えなかったの?何とかしてあげないと。俺は、ゆっくりと起き上がって座る。

「セスー、人の心配なんてしなくていいんだよ。レインなんてどうでもいいからさ。ねぇ、俺と楽しもうよ」
「俺は・・そんな考え方は好きじゃありません・・レイン、何を困っているのか話して?」

 俺は、河川敷の奥の森にいる白くて大きな狼の事が気になって、頻繁に会いに行くようになった。昔、その狼に・・俺は会った事があった。両親のあの家で俺の事をじっと見つめていたから、また会えたんだとそう思っていた。

 森で会うようになって話しかけてもすぐにいなくなってしまって、ただ見つめるだけだったけれど、狼は何か言いたげな様子だった。

 このロキさんが、あの白い狼だったんだ・・あの狼はずっと魔物だと思っていた。結局どうして俺に会いに来ていたのかな。

「ちぇーっ!振られちゃったなぁ!」
「セス、俺はロキと契約したんだ。またロキの眷属に戻る。お前には迷惑を掛けた・・悪かったな。もし司が転生して来たら頼む。来なければ地球にいるという事だ」

 そんな・・会えないまま、ふたりは引き離されてしまうの?ツカサさんだって、あんなにもレインを求めてた。俺の中で、恋しがって胸が引き裂かれそうだった。もう一度、俺の身体にツカサさんを呼んで、レインと・・

「セス、それは出来ない。そんな事をしたらお前が消えてしまうかもしれない。それに、その体も限界なんだ。もう、お前の体に司を呼ぶ事は出来ない」
「そんな・・!だって最後なんでしょ?だったら俺の体を使ってよ!俺は大丈夫だから!」
「ダメだよー、セスを死なせる訳にはいかないよ?だってせっかくセスに・・おっと、こちらの話・・とにかく、ダメだね」

 ロキさん、どうしても駄目ですか?俺、レインを助けてあげたいんです。例え・・俺が死んでしまったとしても、レインとツカサさんを最後に会わせてあげたい。

「セス!駄目だ!そんな事!」
「セスー・・セスこそ、レオナルドやヒューベルトたちを置いて死ぬっていうの?セスには、まだやるべき事があるんだけどなぁ?まぁ・・でもセスがどうしてもっていうなら仕方ないかぁ」
「ロキ神!やめて下さいっ!私のセスを!セス・・私を置いて死ぬっていうの?ならば私に生きていく意味なんてない・・私もセスと一緒に逝くよ」
「レオ・・そんな事言わないで?」
「セスー、王子たちが3人も死のうとしてるよ?セスのせいだねぇ?」

 そんな・・!レオ・・ひゅう、そんな顔しないで・・エル、泣かないでよ。あ・・ダメ・・この大切な人たちを死なせる事なんて出来ない。他に方法はないの?

「くそ!仕方ないか・・俺なら司の器になれるんだろ?ロキ神」
「柊かぁ・・なれるねぇ。ならばレイン、3日間だけだよ?それが終わったら、レインは俺のものだ。分かった?」
「シュウ、本当に良いのか?3日間、俺と過ごすんだ・・覚悟はいいか?」
「うわぁ・・ヤダ!!頼むから、俺の記憶に残さないでくれよ!」
「あははっ!記憶ねぇ?セスは知っていると思うけど、レインって激しいからさぁ、身体に刻み込まれちゃうなぁ」

 ロキ神がそんな事を言うから、俺は恥ずかしくなって俯いてしまった。シュウがツカサさんの器になって、レインと過ごす。だから、そういうことだよね・・
 愛し合っている魂が再会すれば、お互いに求め合っても仕方がない。

「げー!!レインこそ、見た目は俺だぞ!?司じゃない!」
「俺は、司の心を愛してるんだ。問題ない。3日間だ、我慢してくれ」

 ロキ神は何が楽しいのかお腹を抱えて笑っているし、レオやひゅうたちはシュウに対して同情するような視線を送っている。

「どうせレインの事だからさ、幻視魔法を掛けるんだろうし問題ないよ。さてと、餞別に俺の神殿に素敵な部屋を用意しよう!じゃあねぇ」

 ロキ神が、また指をパチンと鳴らすと、2人の姿が消えていなくなった。

 神の力って、すごいな。俺に掛けられた呪術なんて、あっという間に解けるんだろうな・・呪の迷宮・・俺は紅血のドラゴンに打ち勝つ事は出来るのだろうか・・

「セスー?セスに話したい事があるんだ。俺についておいで?ちょっとセスを借りるから、みんなはここにいてね?」
「ロキ神!必ず!セスを返して下さい!」
「レオナルド・・心配するなよ、分かってるって・・じゃあね」

 俺は、ロキ神に抱き上げられて、一瞬で見たこともないような場所に瞬間移動したのだった。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

処理中です...