王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第20章 最終章~幸せの始まり編~

⑤恵まれた日々の形

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 昼下がり、俺はセスとの約束通りシュウの屋敷を訪ねた。レオナルドは公務で王宮に呼び出されていて、当然オットーも側近として王宮に登城し不在にしている。

 ソラルはオットーと結婚して以来、レヴィーの短い子育てを楽しんでいたし、公爵家を盛り立てる役割をたわいなくこなしていた。

 ソラルは才覚を発揮して行き過ぎな程に名を立てたヴァンドーム公爵家については、王都学園を卒業したレヴィーに家業を手伝わせているようで、今ではすっかり隠居して余生を楽しむ貴族のように見える。

 レオナルドは大公殿下としての勤めが多忙になり、セスとの時間が取れないと嘆いているが、セスの隣にいられず守る事ができない分、ソラルがその役目を果たすようになったようだ。

 ソラルもオットーも子供が好きだし、シオンはふたりに懐いていることもあって、共に過ごす時間も長いようだ・・特にレオナルドがセスを独り占めしたい時なんかは、シオンをヴァンドーム公爵家に何泊もさせている・・レオナルドは本当に呆れた男だ。

 今日もシオンはソラルに手を引かれて、まるで親子のように対話している。ソラルは学問についても武術についても能力が高い、きっとこれからも子供たちにとって良い指南役になるのだろう・・ソラルを手放した事を猛烈に後悔するくらいには、実は惜しいと思っていたりする。

 今では俺が手放したソラルの代わりにダリウスが俺の側近として側にいるが、こいつも生まれた時からの友人であり、を知っている厄介で面倒な男だったりするのだ。とにかく、ダリウスは俺の側から一時も離れようとしないんだから。

 サロンから庭園に続く大きなガラス張りの扉から、ソラルとシオンが出て行く。シュウの屋敷には子供の為の遊具の数々か設置してあって、将来子供たちが楽しめるようにと、チキュウの公園と呼ばれる場所にあるものを真似て、シュウが作ったそうだ。

 ブランコに乗るシオンは楽しげに足を漕ぎながら、後から追いかけて行ったシュウに構われて楽しげにしている。

「ほら!来い、シオン!ははっ!お前は何でもすぐに覚えるな。ブランコも上手く漕げるようになったじゃないか!」
「シュウ、次はすべり台で遊びたい!僕、ひとりで出来るから見ててね!」
「シオン様、僕が見本をお見せしますね?」
「だめ!ソラル、僕が先!僕が1番なの!」
「しかし、シオン様、まずは僕が・・」
「いいんじゃねぇの?なあ、シオン。行ってこい」
「うん!」

 大公の嫡男に対する扱いは、ソラルにとって慎重にもなるだろう。その点シュウは自由な考え方を持っているし、子供は子供らしくといいながら、見ているこちらがヒヤリとする事でもさせてしまうのだ。かえってシオンは良い環境で育っているのだろうな。

「カイル、お前も行ってきたらどうだ?楽しそうだぞ?」
「僕も遊んでも良いのですか?」
「もちろんだ。シオンと遊んで来ればいい」
「はい!行ってきます、パパ!」
「ダダ、お前も行ってこい」
「了ー解!行くぜ、カイル」

 カイルは嬉しそうな顔をして、ダリウスと共にシオンのいる遊具に近づいていく。シオンはそれに気が付くと、使い方を教えるようにしてカイルの手を引く。

「あははっ!面白いもんだな!レオナルド殿下とヒューベルトのミニチュアがいる!おい、お前ら!シーソーに乗ってみたらどうだ?さぁて、どっちが重くなったかな?」

 おかしなものだ。シュウが俺やセスの子供たちをこんな風に遊ばせているんだから。セスの顔を見れば、きっと同じような事を思っているのではないかと・・セス?

「セス、どうしたんだ?」
「ひ、ひゅう・・はぁはぁ・・」
「セス!?まさか!」
「ひゅう、ひゅう!」
「だって、まだ半月先じゃ・・!陣痛が始まったのか?」
「そう、みたい・・」

 セスは俺の腕を掴んで苦しげに息を荒らげている。しかし出産にはまだ半月先だと聞いていたが・・

「ソラル!レオナルドを呼んでこい!子供が産まれる!」
「え!?は、はい!!ダリウス!シオン様とカイル様を頼んだよ!!守って!」
「ああ!分かった!」

 セスが俺の腕の中で苦しげな顔をしながら、助けを求めるような顔をする。俺はシュウに促されて、セスを抱き上げて客間の寝台へと運んだ。かつて、どんな時も側にいたいと思っていたが、まさか出産に立ち会う事になるなんて。

「ひゅう!ひゅう・・」
「大丈夫だよ、側にいるからな。レオナルドもすぐにここに来る」
「ひゅう、はぁはぁ・・あ、あ」
「大丈夫だ!ほら、手を握っていてやるから!」

 そのうちシュウの使用人たちがテキパキと出産の為の準備を始める。お産の苦しみに耐えながら辛そうにするセスを見つめる。
 そんなセスの声は聞くに耐えない・・それでも側にいてセスを見守る。

 レオナルドが慌ててシュウの屋敷に着く頃に、俺の目の前でセスは2人の子供を出産した。

「双子・・かよ・・」
「ん、ひゅうに、言ってなかったね」
「腹が大きすぎると、思っていたが・・驚いた。しかし本当に、美しい子供たちだな」

 レオナルドはセスに抱き着いて離さないし「セス!無事で良かった!愛してるよ」と言ってまだ騒がしく泣いている。

 産まれたばかりの双子は先に産まれた金髪碧眼の王子と、俺の腕に抱かれている栗色の髪にエメラルドの瞳の姫だった。二人ともセスの顔立ちによく似ていて、本当に天使のように愛らしかった。

「本当に可愛い子たちだ。栗色の・・エメラルドの姫か・・セスにそっくりで・・まるでレノ、だな。可愛いよ」
「ふふっ!ひゅうったら、レノって・・」

 俺がそう言うと、カイルがそっと横から覗いてきて「とっても可愛いお姫様ですね!レノ、初めまして!レノは僕の運命の人ですか?」と言って頬にキスをした。                                         













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