3 / 37
私の幼馴染たち
しおりを挟む
私は王妃様に見送られながら退室すると、まずはルカリオ王子の部屋に向かった。
ルカリオはチェスター王国の王太子で、次期国王となる人物だ。
――この国が乗っ取られなければの話だけれど。
最悪、借金が返せなくても隣国の第一王女と結婚すれば、国王にはなれるのですよね。
……あぁ、想像しただけでムカムカするのはなぜかしら。
根っからの真面目であるルカリオは、立派な国王となるべく日々懸命に学び、公務をこなしてきた。
そのひたむきな姿が国民にも愛され、その人気は既にアイドル級である。
コンコココンコン コンコン
ルカリオ用のノックをする。
王妃様専用より無駄に長いが、ルカリオが気に入っているから止め時がわからないまま今に至る。
「ん? アイリスかい? 入っておいで」
すぐに私だと気付き、ルカリオは入室を許可してくれた。
扉を開けると、騎士団長息子のキースと、魔術師団長息子のレンの姿もあった。
ここで三人が揃っているのを見るのは久しぶりな気がする。
「あら、二人もいらしていたのですね」
「おう、借金の話を聞いちまったからな。そういうアイリスだってルカリオを心配して顔を見に来たんだろ?」
「この国始まって以来の危機ですからね。心配にもなりますよね」
キースとレンはルカリオを案じてやってきたらしい。
三人の絆を感じて私は思わず笑みを零した。
騎士団長息子のキースは、現在彼の父と同じ騎士団に所属し、一人前の騎士になろうと奮闘中だ。
勇猛果敢なところが父親そっくりだと評判である。
レンも父が団長を務める宮廷魔術師の一員として働いているが、魔術の実力が子供の頃から群を抜いていた為、若手のホープと呼ばれている。
熱血で明るいキースと、物静かで繊細なレンは全くタイプは違うが、その才能や優れた容姿、家柄からそれぞれに根強いファンが付いていて、社交界ではとりわけ有名な存在だった。
「うーん、もちろん心配はしているのですけれど――それより、借金返済に向けての前向きな相談に伺ったといいますか」
「「「は?」」」
三人の声がハモった。
揃って目を丸くするイケメンが可愛らしい。
「借金返済計画? そんなものがあるんですか?」
「アイリス……もしかして君の前世の記憶でどうにかしようとか考えていないよね?」
「うわ、それは嫌な予感しかしねーな」
レン、ルカリオ、キースの順で喋り出したが、なんだか若干しかめ面をしている。
嫌な予感だなんて、キースったら失礼しちゃうわ。
でもルカリオはさすが長い付き合いだけあって、理解が早くて助かりますね。
思いっきり前世の記憶を活用する気ですから。
「王妃様には先に許可をいただいちゃいました。私の計画が嫌だったら三人とも結婚ですって」
「はあ? ルカリオだけじゃなく、レンと俺も結婚しなきゃなんねーのか?」
「はい。ルカリオ大好きな隣国のお姫様の妹たちが、キースとレンにぞっこんなのでしょう? 第二王女がキース、第三王女がレンと結婚したがっていると聞きました」
「やめてくださいよ。僕はその三女と結婚なんてしませんよ」
「俺だって次女の姫なんてごめんだぜ」
「いやいや、僕も第一王女との結婚なんて考えてないよ!」
三人ともお姫様との結婚には気が乗らないらしく、必死に否定している。
私は呑気にも、三人が三姉妹と結婚したらみんな義理の兄弟になるのねぇなんて考えていたのだが、ふとあることに気付いてしまった。
「そういえば三人ともモテるのに、いまだに婚約者すらいませんものね」
『『『誰のせいだと!!』』』
三人が何かを言いたげな反応を見せたが、意味がわからない私はただ首を傾げていた。
ルカリオはチェスター王国の王太子で、次期国王となる人物だ。
――この国が乗っ取られなければの話だけれど。
最悪、借金が返せなくても隣国の第一王女と結婚すれば、国王にはなれるのですよね。
……あぁ、想像しただけでムカムカするのはなぜかしら。
根っからの真面目であるルカリオは、立派な国王となるべく日々懸命に学び、公務をこなしてきた。
そのひたむきな姿が国民にも愛され、その人気は既にアイドル級である。
コンコココンコン コンコン
ルカリオ用のノックをする。
王妃様専用より無駄に長いが、ルカリオが気に入っているから止め時がわからないまま今に至る。
「ん? アイリスかい? 入っておいで」
すぐに私だと気付き、ルカリオは入室を許可してくれた。
扉を開けると、騎士団長息子のキースと、魔術師団長息子のレンの姿もあった。
ここで三人が揃っているのを見るのは久しぶりな気がする。
「あら、二人もいらしていたのですね」
「おう、借金の話を聞いちまったからな。そういうアイリスだってルカリオを心配して顔を見に来たんだろ?」
「この国始まって以来の危機ですからね。心配にもなりますよね」
キースとレンはルカリオを案じてやってきたらしい。
三人の絆を感じて私は思わず笑みを零した。
騎士団長息子のキースは、現在彼の父と同じ騎士団に所属し、一人前の騎士になろうと奮闘中だ。
勇猛果敢なところが父親そっくりだと評判である。
レンも父が団長を務める宮廷魔術師の一員として働いているが、魔術の実力が子供の頃から群を抜いていた為、若手のホープと呼ばれている。
熱血で明るいキースと、物静かで繊細なレンは全くタイプは違うが、その才能や優れた容姿、家柄からそれぞれに根強いファンが付いていて、社交界ではとりわけ有名な存在だった。
「うーん、もちろん心配はしているのですけれど――それより、借金返済に向けての前向きな相談に伺ったといいますか」
「「「は?」」」
三人の声がハモった。
揃って目を丸くするイケメンが可愛らしい。
「借金返済計画? そんなものがあるんですか?」
「アイリス……もしかして君の前世の記憶でどうにかしようとか考えていないよね?」
「うわ、それは嫌な予感しかしねーな」
レン、ルカリオ、キースの順で喋り出したが、なんだか若干しかめ面をしている。
嫌な予感だなんて、キースったら失礼しちゃうわ。
でもルカリオはさすが長い付き合いだけあって、理解が早くて助かりますね。
思いっきり前世の記憶を活用する気ですから。
「王妃様には先に許可をいただいちゃいました。私の計画が嫌だったら三人とも結婚ですって」
「はあ? ルカリオだけじゃなく、レンと俺も結婚しなきゃなんねーのか?」
「はい。ルカリオ大好きな隣国のお姫様の妹たちが、キースとレンにぞっこんなのでしょう? 第二王女がキース、第三王女がレンと結婚したがっていると聞きました」
「やめてくださいよ。僕はその三女と結婚なんてしませんよ」
「俺だって次女の姫なんてごめんだぜ」
「いやいや、僕も第一王女との結婚なんて考えてないよ!」
三人ともお姫様との結婚には気が乗らないらしく、必死に否定している。
私は呑気にも、三人が三姉妹と結婚したらみんな義理の兄弟になるのねぇなんて考えていたのだが、ふとあることに気付いてしまった。
「そういえば三人ともモテるのに、いまだに婚約者すらいませんものね」
『『『誰のせいだと!!』』』
三人が何かを言いたげな反応を見せたが、意味がわからない私はただ首を傾げていた。
63
あなたにおすすめの小説
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる