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強力な後ろ盾をゲットしました!
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王妃への手紙を魔法でバビュンと送ったら、瞬く間にバビュンとお返事が届いた。
魔法があるのに手紙なの?と思われるかもしれないが、この国は情緒と風情を重んじているのだーー多分。
王妃様と無事にアポが取れた私は、意気揚々と王宮へ出発した。
これまた馬車というレトロな交通手段だが、これもまた情緒……以下略。
手紙も馬車も、慣れてしまえばなんということもない。
さて、まずは王妃様に許可を貰わなければこのプランは何も始まらないのだが、私は特に心配はしていなかった。
王子ルカリオの母である王妃様とは、昔から実の母子のように親しくしており、しょっちゅうお茶会をしている仲なのだ。
今日も王宮の前でいつものように馬車を降りると、入り口で警固中の騎士が顔パスで通してくれた。
少し微笑んでくれたので、私も令嬢らしくスマイルを浮かべる。
そのまま足取り軽く王妃様の自室へと直行するが、そこは勝手知ったるなんとやら……もはや通い過ぎて緊張することもない。
コンコココン
私と王妃様専用のノックで合図を送ると、すぐに中から声がかかった。
「アイリスちゃん、どうぞ入ってー」
「マリー様、ごきげんよう」
私が丁寧にお辞儀をしてみせると、明らかに不機嫌顔の王妃様。
「あら、嫌がらせのつもり? いつも通りには呼んでくれないのかしら?」
「えへへ。冗談ですよ、マリーママ。お邪魔しまーす」
さすがに人目がある時はキチンと振る舞うが、私と王妃様は二人きりだといつもこんな感じである。
王妃様は『ママ』呼び、国王様は『パパ』呼び。
こんなに親しく出来るのも、国王夫妻には息子のルカリオしか子供がおらず、女の子の私が珍しいからだろう。
ちなみに国王様のことはアランパパと呼んでいる。
「で、アイリスちゃん。今日はもしかしなくても、あのおバカさんがやらかしたことに関してかしら?」
さすがマリーママ、話が早い。
手紙には会いたいと書いただけなのに、訪問の目的に気付いているらしい。
国王であるアランパパをおバカさん呼ばわり出来るのは、しっかり者の奥さんのマリーママだけである。
「お父様から、この国が多額な借金を抱えてしまったと聞きました」
「そうなのよ。到底返せないような金額ね。この国を引き渡すか、あちらの国の姫をルカリオの妻にすれば借金を帳消しにするって言っているの。でもそうやって長女を嫁入りさせて、この国を内側から牛耳るつもりでしょうね」
それではどちらにしろ、この国は乗っ取られてしまうことになる。
「あちらの第一王女って、以前からルカリオに好意を持っていましたよね?」
「あれはもはやストーカーね。次女と三女がそれぞれキースとレンを狙っているのも有名だし、あわよくばこの機会に二人もまとめて手にいれようとしているみたいね」
なんと!
ルカリオだけでなく、キースとレンまで……。
私の大切な幼馴染みたちをお金で手にいれようだなんて、そんなの許せません!!
「マリーママ。私、ちょっとした計画を立ててみたのですけど、聞いてもらえます?」
「まあ! アイリスちゃんの計画なんて、さぞ斬新でしょうね」
ふふっと笑って肯定すると、私は『アイドルグループを作って借金返済しちゃいましょう計画』について説明を始めた――のだが。
「……それで、アイドルっていうのは、格好良くて、歌って踊れる人たちなんですよ! ルカリオとキースとレンをアイドルに……」
「歌って踊る? あの子たちが??」
説明を始めたそばからマリーママは興味深そうに目を輝かせた。
「フフフ……アハハハハハ! 想像しただけで面白いわ、アイリスちゃん。そのアイドルほにゃらら計画? ぜひやってみてちょうだい」
え? まだ本格的な説明はこれからなのですが。
アイドルについて軽く説明しただけで、こんな早くにゴーサインが出るとは。
まさか王妃様、彼らが歌って踊るのを見たいだけなんじゃ……。
「でも本人たちは絶対嫌がると思うんですよね……」
「あら、『嫌なら結婚する?』って言うから平気よ。あの子たち、結婚との二択って言われたら何がなんでもアイドルになって、稼いで借金を返すと思うわ」
あらら、ルカリオたちってばそんなにあの姉妹が嫌なのですね。
でもマリーママの許可さえあれば、結構無茶も出来るのでは?
国王がやらかした今となっては、実質王妃様は裏の番長なので。
「マリーママ、王家の衣装係とか作曲家、魔術師さんたちにも手伝ってもらってもいいですか?」
「もちろんよ。借金のことは位の高い者たちには知らせたのだけど、もう噂が回っているようね。国を乗っ取られるくらいなら皆いくらでも協力してくれるわ。私からもアイリスちゃんを手伝うように言っておくから」
王妃の言質は取りました!
これであとは本人たちの了承を得れば……。
肝心の三人、ルカリオ、キース、レンだけが何も知らされないまま、計画は進んでいくのであった。
魔法があるのに手紙なの?と思われるかもしれないが、この国は情緒と風情を重んじているのだーー多分。
王妃様と無事にアポが取れた私は、意気揚々と王宮へ出発した。
これまた馬車というレトロな交通手段だが、これもまた情緒……以下略。
手紙も馬車も、慣れてしまえばなんということもない。
さて、まずは王妃様に許可を貰わなければこのプランは何も始まらないのだが、私は特に心配はしていなかった。
王子ルカリオの母である王妃様とは、昔から実の母子のように親しくしており、しょっちゅうお茶会をしている仲なのだ。
今日も王宮の前でいつものように馬車を降りると、入り口で警固中の騎士が顔パスで通してくれた。
少し微笑んでくれたので、私も令嬢らしくスマイルを浮かべる。
そのまま足取り軽く王妃様の自室へと直行するが、そこは勝手知ったるなんとやら……もはや通い過ぎて緊張することもない。
コンコココン
私と王妃様専用のノックで合図を送ると、すぐに中から声がかかった。
「アイリスちゃん、どうぞ入ってー」
「マリー様、ごきげんよう」
私が丁寧にお辞儀をしてみせると、明らかに不機嫌顔の王妃様。
「あら、嫌がらせのつもり? いつも通りには呼んでくれないのかしら?」
「えへへ。冗談ですよ、マリーママ。お邪魔しまーす」
さすがに人目がある時はキチンと振る舞うが、私と王妃様は二人きりだといつもこんな感じである。
王妃様は『ママ』呼び、国王様は『パパ』呼び。
こんなに親しく出来るのも、国王夫妻には息子のルカリオしか子供がおらず、女の子の私が珍しいからだろう。
ちなみに国王様のことはアランパパと呼んでいる。
「で、アイリスちゃん。今日はもしかしなくても、あのおバカさんがやらかしたことに関してかしら?」
さすがマリーママ、話が早い。
手紙には会いたいと書いただけなのに、訪問の目的に気付いているらしい。
国王であるアランパパをおバカさん呼ばわり出来るのは、しっかり者の奥さんのマリーママだけである。
「お父様から、この国が多額な借金を抱えてしまったと聞きました」
「そうなのよ。到底返せないような金額ね。この国を引き渡すか、あちらの国の姫をルカリオの妻にすれば借金を帳消しにするって言っているの。でもそうやって長女を嫁入りさせて、この国を内側から牛耳るつもりでしょうね」
それではどちらにしろ、この国は乗っ取られてしまうことになる。
「あちらの第一王女って、以前からルカリオに好意を持っていましたよね?」
「あれはもはやストーカーね。次女と三女がそれぞれキースとレンを狙っているのも有名だし、あわよくばこの機会に二人もまとめて手にいれようとしているみたいね」
なんと!
ルカリオだけでなく、キースとレンまで……。
私の大切な幼馴染みたちをお金で手にいれようだなんて、そんなの許せません!!
「マリーママ。私、ちょっとした計画を立ててみたのですけど、聞いてもらえます?」
「まあ! アイリスちゃんの計画なんて、さぞ斬新でしょうね」
ふふっと笑って肯定すると、私は『アイドルグループを作って借金返済しちゃいましょう計画』について説明を始めた――のだが。
「……それで、アイドルっていうのは、格好良くて、歌って踊れる人たちなんですよ! ルカリオとキースとレンをアイドルに……」
「歌って踊る? あの子たちが??」
説明を始めたそばからマリーママは興味深そうに目を輝かせた。
「フフフ……アハハハハハ! 想像しただけで面白いわ、アイリスちゃん。そのアイドルほにゃらら計画? ぜひやってみてちょうだい」
え? まだ本格的な説明はこれからなのですが。
アイドルについて軽く説明しただけで、こんな早くにゴーサインが出るとは。
まさか王妃様、彼らが歌って踊るのを見たいだけなんじゃ……。
「でも本人たちは絶対嫌がると思うんですよね……」
「あら、『嫌なら結婚する?』って言うから平気よ。あの子たち、結婚との二択って言われたら何がなんでもアイドルになって、稼いで借金を返すと思うわ」
あらら、ルカリオたちってばそんなにあの姉妹が嫌なのですね。
でもマリーママの許可さえあれば、結構無茶も出来るのでは?
国王がやらかした今となっては、実質王妃様は裏の番長なので。
「マリーママ、王家の衣装係とか作曲家、魔術師さんたちにも手伝ってもらってもいいですか?」
「もちろんよ。借金のことは位の高い者たちには知らせたのだけど、もう噂が回っているようね。国を乗っ取られるくらいなら皆いくらでも協力してくれるわ。私からもアイリスちゃんを手伝うように言っておくから」
王妃の言質は取りました!
これであとは本人たちの了承を得れば……。
肝心の三人、ルカリオ、キース、レンだけが何も知らされないまま、計画は進んでいくのであった。
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