1 / 37
ひらめきました!
しおりを挟む
「た、大変なことになったぁーーー!!」
突然、まるでこの世の終わりを迎えたかのような悲痛な声が屋敷中に響き渡った。
その声には嫌というほど聞き覚えがあるし、間違えようがない。
あら、お父様の声だわ。
読書を中断した私は、意識をそちらへ向けた。
すると、なおも続く父の声……。
「うわぁぁぁ……。もうこの国はおしまいだぁーーー!!」
自宅に帰ってくるなり、大の大人が玄関で叫ぶとはただごとではない。
しかも、曲がりなりにも父はここ、チェスター王国の宰相を務めているのだ。
取り乱したところなど見たことがないし、王宮でよほどのことがあったに違いない。
すぐさま自室を飛び出した私は、マナーを無視して階段を駆け降りると、玄関で膝を突いたまま動かない父の元へと走り寄った。
「お父様、どうされたのですか? 王宮で一体何があったのです?」
傍らに同じように膝を突き、顔を覗き込むと、父が泣きそうな声で教えてくれた。
「こ、国王が隣国の詐欺被害に遭われたのだ。期限までに金を支払えなければ、この国は隣国に乗っ取られてしまう。アイリス、何かいい案はないか? すぐに稼げるいい方法が!」
アイリスとは私の名前である。
父はかなり追い詰められているらしく、なんとただの令嬢の私に意見を求めてきた。
お父様、尋ねる相手を間違えていらっしゃいますよ……と思いつつ、私は頭をフル回転させる。
そんな由々しき事態の打開策を急に尋ねられても……。
国を動かすほどの大金を稼げるうまい話が、その辺にホイホイ転がっているはずがないのでは……ん?
あるかも?
――私、思い付いちゃいました!
「お父様、どんな方法でもよろしいですか?」
「手だてがあるのか!? 今は非常事態だ。手段など選んではおれん。何か思い付いたのなら教えておくれ」
「では、アイドルグループを作りましょう! メンバーは王子と騎士団長の息子、宮廷魔術師団長の息子の三人です!!」
「は? アイドルグループ?? ……なんのことだか全くわからんが、それを作ったら金が入るのか? 国家予算の何倍もの金額だぞ?」
「おまかせ下さい! あの三人でしたら可能性は未知数ですもの」
「そうか……。ではやってみろ。あ、王妃に許可だけは取るのだぞ?」
「了解ですわ。それでは早速王妃様に面会希望のお手紙を書きましょう」
こうして私の勝手な思い付きだけで、『アイドルグループを作って借金返済しちゃいましょう計画』は幕を開けたのだった。
◆◆◆
私、アイリスはマーティン侯爵家の一人娘だ。
小さい頃から宰相の父に連れられ、王宮に遊びに行く機会が多かったからか、王子のルカリオ、騎士団長息子のキース、宮廷魔術師団長息子のレンとは今でも兄妹のように仲がいい。
私は彼ら三人より一つ年下だが、年齢の近い私はいつも三人に付いて回っていた。
いわゆる幼馴染みの関係である。
そして、ここが重要なのだが、私にはちょっと他の人とは違うところがあった。
生まれつき前世の記憶――つまり、日本で生活した記憶を持っているのだ。
特に隠す必要もなかったので、このことは両親と三人の幼馴染み、国王夫妻だけには伝えてある。
私に日本の記憶があったからといって、今までその知識を役立てたことはなかった。
なぜならこの世界には魔法が存在しており、特に不便に思うことも無く、知識を披露する必要性を感じなかったからである。
むしろ魔法の便利さに今でも慣れず、新鮮に驚いてしまうことがあるくらいだ。
たまに前世の記憶のせいで素っ頓狂なことを言ってしまい、皆に変な目で見られることはあるが、まあそれは置いておこう。
問題は、いかにして借金を返済するかである。
とうとう前世の記憶を生かせるチャンスがやってきたと、私は燃えていた。
なんてったって、前世の私はバリバリのアイドルオタクだったのだから。
ふっふっふ。
ようやくこの世界で私の記憶を役立てる時がやってきたみたいですね。
アイドルの概念がないこの世界で、初のアイドルグループを私が作っちゃいましょう!
なんせルカリオ、キース、レンはとーーってもイケメンで、アイドル性抜群なんだもの。
目指せ、一攫千金です!!
私は気合を込めて、グッと拳を握った。
突然、まるでこの世の終わりを迎えたかのような悲痛な声が屋敷中に響き渡った。
その声には嫌というほど聞き覚えがあるし、間違えようがない。
あら、お父様の声だわ。
読書を中断した私は、意識をそちらへ向けた。
すると、なおも続く父の声……。
「うわぁぁぁ……。もうこの国はおしまいだぁーーー!!」
自宅に帰ってくるなり、大の大人が玄関で叫ぶとはただごとではない。
しかも、曲がりなりにも父はここ、チェスター王国の宰相を務めているのだ。
取り乱したところなど見たことがないし、王宮でよほどのことがあったに違いない。
すぐさま自室を飛び出した私は、マナーを無視して階段を駆け降りると、玄関で膝を突いたまま動かない父の元へと走り寄った。
「お父様、どうされたのですか? 王宮で一体何があったのです?」
傍らに同じように膝を突き、顔を覗き込むと、父が泣きそうな声で教えてくれた。
「こ、国王が隣国の詐欺被害に遭われたのだ。期限までに金を支払えなければ、この国は隣国に乗っ取られてしまう。アイリス、何かいい案はないか? すぐに稼げるいい方法が!」
アイリスとは私の名前である。
父はかなり追い詰められているらしく、なんとただの令嬢の私に意見を求めてきた。
お父様、尋ねる相手を間違えていらっしゃいますよ……と思いつつ、私は頭をフル回転させる。
そんな由々しき事態の打開策を急に尋ねられても……。
国を動かすほどの大金を稼げるうまい話が、その辺にホイホイ転がっているはずがないのでは……ん?
あるかも?
――私、思い付いちゃいました!
「お父様、どんな方法でもよろしいですか?」
「手だてがあるのか!? 今は非常事態だ。手段など選んではおれん。何か思い付いたのなら教えておくれ」
「では、アイドルグループを作りましょう! メンバーは王子と騎士団長の息子、宮廷魔術師団長の息子の三人です!!」
「は? アイドルグループ?? ……なんのことだか全くわからんが、それを作ったら金が入るのか? 国家予算の何倍もの金額だぞ?」
「おまかせ下さい! あの三人でしたら可能性は未知数ですもの」
「そうか……。ではやってみろ。あ、王妃に許可だけは取るのだぞ?」
「了解ですわ。それでは早速王妃様に面会希望のお手紙を書きましょう」
こうして私の勝手な思い付きだけで、『アイドルグループを作って借金返済しちゃいましょう計画』は幕を開けたのだった。
◆◆◆
私、アイリスはマーティン侯爵家の一人娘だ。
小さい頃から宰相の父に連れられ、王宮に遊びに行く機会が多かったからか、王子のルカリオ、騎士団長息子のキース、宮廷魔術師団長息子のレンとは今でも兄妹のように仲がいい。
私は彼ら三人より一つ年下だが、年齢の近い私はいつも三人に付いて回っていた。
いわゆる幼馴染みの関係である。
そして、ここが重要なのだが、私にはちょっと他の人とは違うところがあった。
生まれつき前世の記憶――つまり、日本で生活した記憶を持っているのだ。
特に隠す必要もなかったので、このことは両親と三人の幼馴染み、国王夫妻だけには伝えてある。
私に日本の記憶があったからといって、今までその知識を役立てたことはなかった。
なぜならこの世界には魔法が存在しており、特に不便に思うことも無く、知識を披露する必要性を感じなかったからである。
むしろ魔法の便利さに今でも慣れず、新鮮に驚いてしまうことがあるくらいだ。
たまに前世の記憶のせいで素っ頓狂なことを言ってしまい、皆に変な目で見られることはあるが、まあそれは置いておこう。
問題は、いかにして借金を返済するかである。
とうとう前世の記憶を生かせるチャンスがやってきたと、私は燃えていた。
なんてったって、前世の私はバリバリのアイドルオタクだったのだから。
ふっふっふ。
ようやくこの世界で私の記憶を役立てる時がやってきたみたいですね。
アイドルの概念がないこの世界で、初のアイドルグループを私が作っちゃいましょう!
なんせルカリオ、キース、レンはとーーってもイケメンで、アイドル性抜群なんだもの。
目指せ、一攫千金です!!
私は気合を込めて、グッと拳を握った。
73
あなたにおすすめの小説
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
氷雨そら
恋愛
本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。
「君が番だ! 間違いない」
(番とは……!)
今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。
本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる