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見本で踊らされました
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『アイリスの、アイリスによる、借金返済の為の計画』――ベールに包まれたその壮大な計画が、今明らかになる!
なんて煽ってみても、盛り上がっているのは今のところ言い出しっぺの私ただ一人である。
悲しい。
「うーん、いまいち歌って踊るっていうのがよく掴めないんだよね。三人でやる意味がわからないし」
ルカリオが困惑気味に眉をひそめる。
確かに日本では当たり前な、あのキャッチーでポップな曲調とダンスはこの世界には存在していないのだから当然だ。
彼が戸惑うのも無理はない。
「俺ちょっと思ったんだけどさ、そのアイドルっつーの? 男だけで女はやらないのか?」
おっ、キースから質問が飛び出しました!
疑問を持つのはいいことですよね。
しかも、なかなかいいとこついてるじゃないですか。
「いえ、女の子のアイドルもいっぱいいましたよ。可愛い女の子たちが可愛い衣装を着て、可愛く、時にカッコ良く歌って踊るのです」
「そうか……。よし! お前ちょっとやってみろ。俺たちはそれを元にイメージを掴むから」
はいぃぃぃぃぃ?
私にアイドルの真似をしてみろと仰る??
「む、無理です! 私なんぞが披露しても、イメージどころか目の毒にしかなりません!」
「アイリスがお手本を見せてくれないと、僕たちはずっと先に進めないですよ? それでもいいのなら」
レン、あなた私を脅していませんか?
いや、絶対脅していますよね?
ここ、ルカリオの私室で披露するのは、カラオケで女友達とキャッキャ踊るのとは訳が違うと思う。
音楽も流れてはくれないし、これはなかなかのハードルの高さだ。
しかし、私は腹を括った。
返済計画を成功させる為にも、ここはやるっきゃないのです!
さて、何の曲がいいのやらと私は思案する。
うーん、では少し古いですが、恋するおみくじクッキーの曲にしましょう。
某アイドル集団が一世を風靡し、日本全国でみんなが踊ったあの曲。
あれなら昔たくさん踊ったからいける気がします。
……韓国アイドルは難しすぎて私の手に負えませんし。
「一度しかやりませんからね?」
裾が長いワンピースでは踊りづらいし、何より一人では心細いが仕方がない。
私は覚悟を決めて、歌い出した。
「チャラチャララーチャラチャララー、あ、ここは前奏なので。歌の始まりはもう少し後です」
説明を入れながら私は歌い、踊った。
私、なんで王宮でこんなことをしているの?
恥ずかしすぎて泣ける……。
「フゥー!」
くるっと回ってラストのポーズを決め、なんとか歌いきった。
やったよ、私!!
恐る恐る三人の反応を伺えば、皆一様に視線を泳がせ、顔を手のひらで覆ったりしている。
どうしてそんな反応なの?
あ、やっぱり見ていられないくらい酷かったのかもしれないわ。
確かに私はアイドルみたいに可愛くないし、歌詞にはわからない単語も多かったでしょうし……。
でも三人そろって顔や耳が赤くなっているのはどういうこと?
じっと彼らを見つめながら感想を待っていると、ようやくルカリオが口を開いた。
「いや、うん。最高だったよ」
え? 本当に?
「ああ、いいもん見た」
あら、キースまで?
「水晶に記録しましたが、二人もいりますか?」
そう、水晶に……って!
レン、あなたまさかーー
「何!? 今の録ってたのか! レン、お前やるな! 俺にくれ!」
「僕も欲しいな。ぜひ頼むよ」
今のを録画しちゃったの?
うぇぇぇ、アレは絶対に残しちゃダメなヤツでしょう。
黒歴史確実の代物です。
「レン、今すぐ消して下さい! 二人とも欲しがっちゃ駄目です!」
私が必死になっているのに、三人は全く取り合ってくれない。
そのうちルカリオが飄々と話し出した。
「今の勘が鈍らないうちに、僕たちのアイドルグループについて話を詰めてしまおう」
「そいつはいいな」
「アイリス、まずは何をしましょう?」
私の要望は有耶無耶にされましたとさ。
ちっくしょぉぉぉぉ。
なんて煽ってみても、盛り上がっているのは今のところ言い出しっぺの私ただ一人である。
悲しい。
「うーん、いまいち歌って踊るっていうのがよく掴めないんだよね。三人でやる意味がわからないし」
ルカリオが困惑気味に眉をひそめる。
確かに日本では当たり前な、あのキャッチーでポップな曲調とダンスはこの世界には存在していないのだから当然だ。
彼が戸惑うのも無理はない。
「俺ちょっと思ったんだけどさ、そのアイドルっつーの? 男だけで女はやらないのか?」
おっ、キースから質問が飛び出しました!
疑問を持つのはいいことですよね。
しかも、なかなかいいとこついてるじゃないですか。
「いえ、女の子のアイドルもいっぱいいましたよ。可愛い女の子たちが可愛い衣装を着て、可愛く、時にカッコ良く歌って踊るのです」
「そうか……。よし! お前ちょっとやってみろ。俺たちはそれを元にイメージを掴むから」
はいぃぃぃぃぃ?
私にアイドルの真似をしてみろと仰る??
「む、無理です! 私なんぞが披露しても、イメージどころか目の毒にしかなりません!」
「アイリスがお手本を見せてくれないと、僕たちはずっと先に進めないですよ? それでもいいのなら」
レン、あなた私を脅していませんか?
いや、絶対脅していますよね?
ここ、ルカリオの私室で披露するのは、カラオケで女友達とキャッキャ踊るのとは訳が違うと思う。
音楽も流れてはくれないし、これはなかなかのハードルの高さだ。
しかし、私は腹を括った。
返済計画を成功させる為にも、ここはやるっきゃないのです!
さて、何の曲がいいのやらと私は思案する。
うーん、では少し古いですが、恋するおみくじクッキーの曲にしましょう。
某アイドル集団が一世を風靡し、日本全国でみんなが踊ったあの曲。
あれなら昔たくさん踊ったからいける気がします。
……韓国アイドルは難しすぎて私の手に負えませんし。
「一度しかやりませんからね?」
裾が長いワンピースでは踊りづらいし、何より一人では心細いが仕方がない。
私は覚悟を決めて、歌い出した。
「チャラチャララーチャラチャララー、あ、ここは前奏なので。歌の始まりはもう少し後です」
説明を入れながら私は歌い、踊った。
私、なんで王宮でこんなことをしているの?
恥ずかしすぎて泣ける……。
「フゥー!」
くるっと回ってラストのポーズを決め、なんとか歌いきった。
やったよ、私!!
恐る恐る三人の反応を伺えば、皆一様に視線を泳がせ、顔を手のひらで覆ったりしている。
どうしてそんな反応なの?
あ、やっぱり見ていられないくらい酷かったのかもしれないわ。
確かに私はアイドルみたいに可愛くないし、歌詞にはわからない単語も多かったでしょうし……。
でも三人そろって顔や耳が赤くなっているのはどういうこと?
じっと彼らを見つめながら感想を待っていると、ようやくルカリオが口を開いた。
「いや、うん。最高だったよ」
え? 本当に?
「ああ、いいもん見た」
あら、キースまで?
「水晶に記録しましたが、二人もいりますか?」
そう、水晶に……って!
レン、あなたまさかーー
「何!? 今の録ってたのか! レン、お前やるな! 俺にくれ!」
「僕も欲しいな。ぜひ頼むよ」
今のを録画しちゃったの?
うぇぇぇ、アレは絶対に残しちゃダメなヤツでしょう。
黒歴史確実の代物です。
「レン、今すぐ消して下さい! 二人とも欲しがっちゃ駄目です!」
私が必死になっているのに、三人は全く取り合ってくれない。
そのうちルカリオが飄々と話し出した。
「今の勘が鈍らないうちに、僕たちのアイドルグループについて話を詰めてしまおう」
「そいつはいいな」
「アイリス、まずは何をしましょう?」
私の要望は有耶無耶にされましたとさ。
ちっくしょぉぉぉぉ。
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