【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ

文字の大きさ
10 / 16

アレクシスはロマンチスト?

しおりを挟む
王太子のアレクシスに見送られながら、いそいそと集合場所となっているスタート地点に向かうと、途中で顔なじみの令嬢集団に囲まれてしまった。
ピンク色のドレスを着た私に、赤や黄色、オレンジ色のドレスが加わって、周囲は一気にカラフルになる。

「セラフィーナ様、今年も大活躍ですわね。どうしたらこんな楽しいゲームを考え付くんですの?」
「わたくし、今から胸がドキドキしてしまって。ああ、私のカードにはなんて書いてあるのかしら?」
「楽しみだけれど、少し怖い気もしますわ。これを機に、あの方とお近付きになれたら最高ですけれど、とんでもないものが書かれていたらどうしましょう?」

不安そうな目が向けられているが、私だって令嬢の部のカードに書いてある内容など知らない。
無地の共通カードを使うことと、おおよその形式を定めた以外は、各担当に任されていたからだ。

アレクたちが準備したものだから、そこまで変なことは書いていないと思うんだけれど……多分。
というか、そう信じたい!
なんだか夫人らが考えてくれた破天荒な借り物のせいで、楽しい余興の範疇を軽く超えて、ハードで疲れる競技になってしまった感があるんだもの。
いや、もはやこれは競技じゃないな、罰ゲームか?

そんなことを考えながらも、顔は笑顔をキープしつつ令嬢に答える。

「私も令嬢の部のカードの内容は知らされていないのです。王太子殿下とロイバー様が担当されておりましたので。お二人が何を書かれたのか私も気になりますわ」
「まあ! 殿下自ら?」
「それは楽しみですわ! アレクシス殿下はロマンチストなところがおありですから、きっとみやびで情緒溢れる展開になることでしょう」
「あら、じゃあ今宵のゲームをきっかけに、何組もカップルが出来上がるかもしれませんわね」
「「「きゃ~~っ!!」」」

頬を染めながら、照れたような可愛らしい声を上げる令嬢をよそに、私は別のことを考えていた。

え、アレクがロマンチスト?
初耳だわ……。
え、口の中にマドレーヌを突っ込んでくるような男なのに?

なんだか釈然としないが、気付いたらスタート地点へ辿り着いていた。
前回の部の整列係からそのままこの場に留まっていたグレースと合流し、二人かがりで皆を整列させていく。

「うーん、人数は思ったより少なかったわね」
アレ一般男性の部を見た後じゃ、こんなものではないかしら」

さきほど行われたレースの内容を思い出し、グレースと顔を見合わせて苦笑してしまった。
さすがにあのドタバタを見せられては躊躇ってしまい、出場するには勇気がいることだろう。
まだ社交界経験も浅い、うら若き令嬢にはハードルが高いし、ましてや婚約者のいる令嬢にとってはメリットも少ない。

でも、集まったこのメンバーはさすがというか……。
社交的でメンタルが強そうな娘ばかりな上、あわよくば婚約者を見つけてやろうというガッツが漲っているわ。
え、絶対勝てないでしょ、これ。

令嬢たちの気迫に押されつつも、整列を終えた。
参加者が二十名だった為、五名ずつ四レースを行うことにする。

「ねえ、セラフィーヌ。私、最初のレースに出てもいいかしら?」
「ええ、別に構わないわよ。じゃあ私は残って最終の四レース目にするわね」
「お願い。なんとしてでももう一回ロイバー様とゴールしてみせるわ!」
「……ロイバー様に関するカードが引けるといいわね」
「任せておいて!」

これでグレースが『賑やかな人』とか引いたら面白いのに。
ロイバー様とは正反対のやつ。

などと、ちょっと意地悪なことを考えて心の中で笑った後、私は準備が整った合図をアレクシスに送るべく顔を上げた。
すると、アレクシスはとっくにカードを並べ終わっていたようで、すぐに目が合った。

『こっちはいいわよ!』
『そうか。了解』

頷いたアレクシスが、いつものように微笑みながらも何かを企んでいるような気がして、私は首を傾げる。

なに、今の表情かお
さては、私に変なものを借りさせようとしてるわね?
やっぱりアレクはちっともロマンチストなんかじゃないわ!

私とアレクシスが視線で会話をするのを、国王以下貴族全員が意味ありげに眺めていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。 特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。 だがある日、突然の婚約破棄通告――。 「やはり君とは釣り合わない」 そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。 悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。 しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。 「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」 「よければ、俺が貰ってやろうか?」 冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!? 次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには 「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」 ――溺愛モードが止まらない!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

処理中です...