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デートのお誘い。
エミリアはダニエルから貰った包みを開けてみることにした。
手作りのハンカチを笑われ、ダニエルが選んだであろうハンカチに、あわよくばケチを付けてやろうという小さな復讐心である。
しかし、ダニエルにはエミリアのハンカチを馬鹿にしたつもりなど少しも無く、嬉しさでヘラヘラしているだけだった。
王妃様のコーディネーターをしている私に、どんなハンカチを選んだのか見物ね。
まぁ、流通しているものは大体把握しているから、想像は付くけど。
エミリアは冷静に包装を解くと、姿を現したハンカチを見て驚いた。
「うわぁ!すごい!かわいい!このししゅう、こんなぎじゅつをもっているひとがいるなんて!」
二枚入っていたハンカチは、ピンク色と黄色の生地に、それぞれウサギと、ニワトリと籠に入った卵を刺繍したものだった。
生地自体はよくあるものだったが、とにかく刺繍が素晴らしい。
こちらの世界でお目にかかったことのないクオリティーである。
思わず立ち上がり、ハンカチを掲げて喜んでいるエミリアに、ダニエルも予想以上の笑顔が見られて、こちらも喜びを隠せない。
「エミィの嬉しそうな顔が見られて良かった。それ、俺の同僚のルシアンの姉貴が刺繍したんだ。昔から趣味でさ、なかなかいい腕してるんだよな。」
「しゅみ!?おしごとにしていないのですか?」
てっきり裁縫の専門店で働いていると思ったエミリアは、話に食いついた。
こんなに腕のいい人間なら、エミリアのチームに入って欲しいと考えたからである。
エミリアは王妃のドレスなどを縫製する、裁縫チームを束ねているのだ。
「いや、趣味だな。町の食堂で働いている。」
聞けば、ルシアンの家は、貴族とは名ばかりの下級らしく、姉は食堂で給仕を、弟は騎士として働いているらしい。
「だにーさま、そのおねえさんとあわせてもらえませんか?すかうとしたいです!」
「スカウト?会わせるのはいいが。ここに連れてくればいいか?」
エミリアは閃いてしまった。
スカウトという名目なら、町に行けるんじゃない?
食堂でお姉さんと待ち合わせをして、行き帰りはちょっと町でお買い物とか。
この前見た出店で、食べ歩きとか出来ちゃうかも?
目的が変わってきている上、ダニエルが訪ねてくる前までの、『一人歩き反省アピール』のことなど、もう少しも頭に無かった。
「わたしがしょくどうへいきます。だにーさま、おてすうですが、ごどうこうねがえますか?まちもあるきたいです。」
エミリアのお願いに、ダニエルは歓喜した。
想定外に、エミリアからデートに誘われたのである。
事実は少し違うが、ダニエルは前向きにデートと捉えた。
「おう!!俺に任せとけ。まずはルシアンの姉貴に予定を訊けばいいか?」
「おねがいします。おねえさんのつごうのいいひに。あ、もちろん、だにーさまもよていがないときで。」
とりあえず、ダニエルがルシアン経由で連絡を取り、エミリアに手紙で伝えることになった。
そうこうしている内に夕食の時間になり、メイドに食堂への移動を告げられる。
「だにーさま、しょくどうはこちらです。」
案内を買って出たエミリアだったが、歩き出してすぐにダニエルに抱っこされてしまった。
「うわぁ、なにをしているんですか!おろしてください!!」
「いや、だって、エミィがちっこくて小走りになってたからさ。抱っこした方が早いだろ。」
そういう問題では全くないと思う!
確かに、足の長さが違いすぎて、ちょっと走ってたけど、だからって抱っこはないでしょ!
一応令嬢なのよ、私は。
エミリアの動揺をものともせず、ダニエルは左腕にエミリアを乗せた。
「やっぱり軽いな。さっき、伯爵がエミィを抱っこしてて羨ましかったんだよな。」
ダニエルは嬉しそうに話しているが、色々おかしい。
この青年、公園では傷付いた儚いイメージだったのに、この変貌は何!?
騎士って、こんなにデリカシーがないの?
食堂に入っていった時の家族の表情は、一生忘れられないと思った。
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