【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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新しい約束と、幼馴染み。

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チーズケーキのいい香りが漂う頃、厨房にはまた人が溢れていた。

「ここに集まらなくても、ちゃんと全員分あるから大丈夫よ?」

リリーが声をかけるが、皆オーブンから離れようとしない。
出来上がりの瞬間を見逃してはいけない、とでも思っているらしい。


気付けば、父のウィリアムまで一緒に見ている。

「お父様、今日はお仕事ですよね?」

心配になって、リリーは思わず確認してしまったが、

「リリーのケーキを食べたら仕事に行く!」

と、子供みたいな返事をされた。


でも、これは約束だものね。
出来れば皆揃って食べたいわ。

次々と焼き上がるチーズケーキを切り分け、全員に行き渡った後、リリーは改めて皆に向かって言った。

「10年前は皆を困らせてごめんなさい。約束していた、私が作ったチーズケーキです。改めて、ただいま戻りました。」

すると歓声に包まれた後、皆が一斉に食べ始め、感嘆の声をあげた。


「こりゃあ、やっぱり自分も修行に行かなきゃいかんですなぁ。」

ふふっ、レオったら。

コックのレオが冗談を言うので、リリーは笑ってしまう。

「食べたくなったら、私がいつでも作ってあげるわ。」

新しい約束がまた生まれたのだった。



厨房で集まってチーズケーキを食べていたところに、呆れたような声が聞こえた。

「まさか皆で厨房に居るとはね。悪いけど勝手に入らせてもらっちゃったよ。不用心だなぁ。」

この声って?とリリーが思い出していると、

「悪い!オーウェン。リリーのチーズケーキを食べていてね。」

兄のアーサーが男性に謝っていた。


昨日、お兄様と馬車で帰ってきたオーウェン様ね。
私とも幼馴染みのはずよね。

リリーがオーウェンを眺めていると、

「リリー、お帰り。元気になったようで嬉しいよ。僕のこと、覚えているかい?昔、一緒に遊んだんだけど。」

と、朗らかに声をかけられた。

「ご無沙汰しています、オーウェン様。覚えていますわ。いつもお見舞いに来て下さって、ありがとうございました。」

リリーは無難に挨拶したつもりだったが、どこか不満そうをされてしまう。

「ククッ、他人行儀な呼び方と口調はイヤだってさ、リリー。」

「そうだよ、前はオー兄様って呼んでくれていたのに、寂しいじゃないか。」

・・・オー兄様?
そんな呼び方してたかしら?

しかし呼ぶまで納得しなさそうだった為、諦めた。

「わかったわ、オー兄様。今日からまたよろしくね。」

リリーが砕けた口調で微笑むと、満足そうに頷き、アーサーに自分のチーズケーキを要求していた。



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