【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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バカップルの串焼きタイム。

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リリーはラインハルトに連れられ、串焼きの屋台の前まで歩いてきた。
もちろん、手はずっと繋いだままである。

「ハルト様、とてもいい匂いがしますね!お腹が空いてきちゃいます。」

言ったそばから、リリーのお腹が鳴った。

キュルル・・・

きゃーっ、本当にお腹が空いて、鳴っちゃいました!
ハルト様には聞こえてないといいのですが・・・

祈る気持ちでチラッとラインハルトを見ると、リリーから顔を背けているが、その肩は震えている。

「もう!ちゃんと笑うなり、聞かなかったフリをするなりして下さい!」

リリーが拗ねて、ラインハルトの腕をペチペチ叩く。

「あはははは!ごめんごめん、あまりに可愛い音だったから、気付かないフリが出来なかったよ。」

楽しそうにラインハルトが笑うので、つられてリリーも笑っていると、屋台の店主が声をかけてきた。

「お二人さん、仲がいいねぇ。うちの串焼き食べていかないかい?サービスするよ?」

「では2本下さい。」

ラインハルトが店主に答えて、肉と野菜が交互に刺さっている串焼きを受け取った。

もちろん、この串焼きを食べることも、このやり取りも、事前に決まっていたことである。
この店で串焼きを食べることは、国王のお忍びデートの時からもはや王家の伝統になっており、店主の演技もどんどん上手くなっている。

ラインハルトに1本手渡されたリリーは、躊躇なく齧りついた。
ここが今までの令嬢達とは違う点である。
同じやり取りを見慣れていた店主も、リリーの大きい一口目に驚いていた。

「美味しい!!」

頬にタレを付けながら肉を頬張るリリーを、愛おしげに眺めるラインハルト。
リリーはこの味付けが気になるらしく、独り言が口を出ていた。

「とっても美味しいけれど、このソースは何が入っているのかしら?この照りはジャム?でも一体何のジャムが・・・」

ブツブツ呟いているリリーに、ラインハルトが提案した。

「店主に訊いてみたら?」

「そんなこと出来ません!ソースというのは店の命ですよ?一子相伝の秘伝の味に決まっています!!」

「いやいやいや、そんな大袈裟な。訊けば教えてくれるって。ねぇ、店主?」

屋台の店主は必死に笑うのを堪えていた。

一子相伝って!!
よくある屋台の串焼屋だし!!

誉めてもらえるのは嬉しいが、そこまで秘密がある訳でもない。
あっさりと答えを口にした。

「いちじくのジャムが入っているんだよ。お嬢さんはもしかして料理をするのかい?試してみるといいよ。」

「いちじく!!ありがとうございます。ハルト様、私が作ったら食べてくれますか?」

「もちろんだよ。楽しみだな。」

ラインハルトはリリーに答えると、今度は店主に向かって言った。

「うちの可愛い妻は、料理が得意なんですよ。」

「妻!?」

「それは羨ましいなぁ。また寄ってくれよ。」

リリーは妻と言う言葉に赤くなり、照れ隠しで串焼きをまた食べ始めた。


その頃二人に追い付いたアーサーとジェシーは、笑顔でリリーの頬のソースをハンカチで拭いているラインハルトを見て驚愕していた。

「バカップルって、ああいうのを言うのよね?」

「そうだね。あんな甲斐甲斐しい王子を見たことないよ。あーあ、みんな動揺しちゃって。」

サクラの人々が、あちらこちらで躓いたり、物を落としたりしていた。


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