ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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アンリの日常

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朝が来た。
今日も一日が始まる

私、アンリの朝は早い。
家族の誰よりも早く起きて、朝御飯を作り、掃除をしてから学校へ行く。
学校から帰ったら、買い物に行き、晩御飯の用意をする。
合間に縫い物や、家庭菜園で野菜を育てる。

この世界は皆、魔法が使える。
その為、魔法がもちろん家事にも用いられ、本来は家事の負担を大きく減らしてくれるはずであった。

ーーアンリ以外は。

アンリは生まれつき魔力が乏しく、小さい魔法しか使えなかった。
使えることは使えるのだが、極端に弱いのだ。

火魔法だと、蝋燭に火を灯すのが精一杯だ。
そんな人間は、他にこの村で見たことがない。

その為、家庭でも学校でも、アンリは虐げられていた。


「まだ、ご飯も炊けていないのかい?そんなちっちゃい火しか出せないなんて情けない。料理にどれだけ時間をかけるつもりだい」

母がやって来た。
いつものお小言だ。
しかし時間がかかるのも事実なので、アンリはいつも謝るしかなかった。

「ごめんなさい、お母さん。もう少し待って下さい」

「ったく、とろいんだから」

「おい、顔を洗う水はまだか」

「お父さん、今すぐ用意します」

「毎朝毎朝同じことを言わせるな!」

父が現れ、父にも怒られる。

父も母も、アンリより遥かに魔力が強い。
自分達でやれば一瞬で済むのだが、一切家事をやろうとはせず、時間のかかるアンリにわざとやらせては、怒っていた。

気付くと兄が側に立ち、馬鹿にした目でアンリを見ている。

「こんな使えない、役立たずが妹だなんて心底恥ずかしいよ。学校では一切声をかけるなよ」

冷たく言い放ち、去っていく。

この家にはアンリの味方などいない。
ただ怒鳴られ、家事をひたすらやらされるだけ。
自由など、どこにもなかった。

学校でも魔力の弱いアンリは馬鹿にされ、嫌味を言われた。
教師も見て見ぬふりで、かばってはくれない。

そんな苦しい毎日の中、優しく接してくれるのは、隣に住む幼馴染みのマイクと、買い物に行く商店のおかみさんだけであった。

アンリの家族は外面が良かったが、二人だけはアンリの境遇にうすうす気付き、虐待ではないかと疑っていた。
この村は特に、虐待への罪が重い。
マイクはアンリに、何かあったら村の神父様に相談するように奨めたが、自分の魔力が弱いせいだからとアンリは自分を責めるだけであった。

私がもっとちゃんと魔法が使えていたら……。
皆をイライラさせてしまう私が全部悪いの。

家庭でも学校でも責められ、アンリはすっかり自己評価の低い、引っ込み思案な性格に育ってしまった。

辛い日々であったが、生きる場所が他に有るわけでもない。
アンリは諦めていた。

ーーその日までは。





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