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女子会参加のはずだったのですが・・・その4
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先ほど起こった甘々熱々の大恋愛状況にヘロヘロで、ぐったりしてしまったサクラは早々に女子友づくりに白旗を上げ休憩することにした。
「私ここで休んでいるから、ミセイエルさんはみなさんと楽しんできて」
「あれくらいで?もうヘロヘロ?ダメだよあれくらいでへばってたら。今日はもっとすごいことをする予定なんだ。最後まで、ね」
最後までって、その意味今は考えたくないんですけど。
異議ありの意思表示の意味を込めてしかめっ面で睨んでみたのだが、何気にスルーされた。
「ハナ、可愛いい。疲れたのなら空間移動してそのまま予定の場所で休む?」
それって、考えたくない先の、スチュエーションの提示ですか?
とんでもない!と思いっきり顔を左右に振った。
「じゃあもう少しこの場に付き合って。今ここにいるのは日頃は皇宮に顔を出す必要のない家に縛られない者だが能力が高いんだ。使える逸材がいるか確認しておきたい」
そう言えば、今日はゼウス様の誕生日会が皇宮で盛大に行われているんだった。
「祝賀会に主役がいなくて大丈夫なの?」
「高い特殊能力持ちは、僕が影を残して抜けたことをすぐに察知するだろうから、後に続くだろうな。大勢が祝賀祭を抜け出したことが皇家の重鎮にバレるとそれなりの騒ぎになるかなぁ」
眉尻を下げて、ため息交じりに言うが、ちっとも深刻そうではない。
誕生祭の祝賀に皇宮に呼ばれ、何日も前から準備をして、何時間もかけて身なりを整え盛装したヨンハがイヤイヤ出かけていく朝の光景が頭に浮かんでこっちの方がめまいがしそうだ。
「どの程度抜けても大丈夫なの?」
「まず、僕は1時間ぐらいでアウトかな。今は側近が慌てているぐらいだが、もう少ししたら捜査がかかって皇家の近衛が動く」
それって、重大事件に発展しつつあるってこと?
「当の僕がいない事に気がついた天界人はこれ幸いと能力の高い順に抜け出してるだろうな」
この人は、自分の一挙手一投足がどれほど周りを振り回すか分かっているにもかかわらず、それを気にせず行動しているふしがある。
襲ってくる頭痛に顔を顰めるサクラとは対照的にいたずらっ子のような笑顔でミセイエルが笑う。
「今頃は、ヨンサンあたりが僕が抜けた後に誰がどのタイミングで姿を消したかを念入りに調べているよ。影を置いてトンズラしたのを見破るにはそれなりの能力が必要だからね。僕の予想では1番ヨンハ2番アサファ。ノアは分かっていても状況把握のためにその場に留まっている。今頃は5族の当主達が騒いでいるかな」
君の所在さえばれなければ、僕の所在なんか誰にばれたって大したことじゃない。
クスリと笑った能天気な反応にサクラが雷を落した。
「笑い事じゃありません!」
それって皇宮は蜂の巣を突いたような騒ぎになるってことじゃん!
「さっきの認証でここにいる事も直に足がつくだろうから、見つかったら君も一緒にしょっ引かれるだろうな」
げ、私を巻き込むつもりですか!
「大丈夫。逃げ足には自信あるから。誰か押しかけて来たらすぐに移動する」
ここの滞在時間はあと30分を予定しているからそのつもりでと念を押された。
動くのもおっくうで壁際の椅子に腰かけていると隣のミセイエルが会場の中にいる10人に次々と眼差しを向けた。
すると向けられた順番に彼らが次々にやって来て自己紹介をする。
嶺家の3分家の次男のヨソントです、桜家の2分家のカリンです、炎家の分家のシリウスです、孫家のセイレイです。
ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!
最後に名乗った人物に目を剥いた。
あなた、セイレイさんというんですか?
彼は誰あろう私の皇領お出かけ計画に協力してくれたかの庭師さんだ。
サーヤですと自己紹介をすれば、初めましてとニッコリと微笑み返される。
知り合いだとばれてはまずいということか。
私の様子を不審な眼で見ていたミセイエルもミセルだとそつなく返したから、ギリギリセーフ?
改めて周りを眺めれば、美男美女揃いでご子息とご令嬢ばかりだ。
着ている物は高級且ハイセンスで、所作も美しいし、会話も話題豊富でそれなりに楽しい。
そんな集団に囲まれて、ホント場違いというか、ハクチョウ集団の中にいるアヒルの気分だ。
アヒルの子はいいよ、大きくなったら立派なハクチョウになるんだから。
でも私はもう育っちゃてるから変身の見込みはないし。
そんな彼らの中で威風堂々と上から目線を送るミセイエルに、お声掛けを頂いて光栄ですと言う者までいる。
「え?いつ声かけたの?」
驚く顔でミセイエルを見上げたら、セイレイさんが答えた。
「さっき、『こちらに来て』って念話はあったんです。この10人のメンバーは有無を言わさず彼に集められたものばかりです」
それって、まるっきり個人の意思無視ってことですか?
「彼の力はゼウス様並です。地上ならいら知らず、天界では拒否権などありません」
こっそりと、彼って何者なのと尋ねられても...
私も、さっき会ったばかりで詳しくは知りません・・・などとお茶を濁し、この話題は終了した。
視線を彷徨わせる私の視野に入ったお嬢様はミルクティー色の髪を夜会巻きにした美人さんです。
10mぐらい離れたところから探るような視線で見つめられると痛いのを通り越して怖いです。
なんとか視線を合わさないように視野の片隅追いやっているとフフフと小さく笑う声が頭上から聞こえた。
「さっき、入り口でキスしてたでしょ?あれでここにいる男はあなたを口説けなくなったことに気がついている?」
えっ?いつの間に?見上げると隣に美人さんがいてビックリ!ああ、空間移動したんですね。
先ほどとは違って柔らかな笑みを浮かべた美人さんはポカンと口を開けたサクラをさらに驚かせた。
「こんにちは。お久しぶりね。今日はサーヤさんという名前なのね」
久しぶり??今日は?どういうこと?
「忘れているみたいだけれど、前に一度お目にかかったことがあるのよ。あの時は確か別の名前を名乗ったと思うわ」
えっ、こんな知的な美人さんに会ったことあるかな?
ウンウン唸りながら記憶の底を引っ掻き回してみるのだが思い出せない。
「ああ、そう言えば自己紹介がおざなりだったわね」
笑顔な彼女が極々小さな声で自己紹介をしてくれた。
「前に地上のリーク本社で名乗ったと思うけど、私はリーナ・リューツよ。仕事はリークグループのCEO秘書をしているの。改めてよろしくね」
げ、髪の色と肌の色素が随分抜けているから気がつかなかった。
あの時の秘書さん!
「その節は大変失礼いたしました」
大声でぺこりと頭を下げると、美人さんは目玉をひん剥き、隣の男は手で口をふさぐ。
目を白黒させる一般人と、記憶、戻ったの?と唇だけで問いかける美人さんと、それを見る苦虫を噛みつぶしたような眉目秀麗な男。
三者三様のなかで、平常心を崩さないミセイエルが不機嫌極まりない声で問う。
「指名した覚えのない君がどうしてここにいる?」
押しかけ秘書ってところかしらね、と明後日の返事を返されたミセイエルの機嫌が益々急降下する。
それをリーナさんがフンと鼻で笑った。
「元々琉家の顔を立てて渋々参加したあん式典、あなたが抜けたと気づいた時点でホールアウトしたわよ。立場上当主達は座っていたけれど、次期は私が抜ける前に影を残して出て行ったから、今頃、璃波宮はどうなっているのかしらねぇ」
え~ぇ!それって私大ピンチじゃない!どうか、入れ替わりが朝までばれませんように!
ひたすら祈る私とは違い、楽しそうにコロコロ笑うリーナさんは優秀で超の付く大物に違いない。
「ジュべリやシオンの行った女子会に行こうかとも思ったのだけれど、こっちに来て大正解だったわ。私ともお友達になってね。ハナちゃん、じゃなかった。サーヤちゃん」
ニッコリ笑って、差し出しされた手には白くて長い指が付いていて、一も二もなくそれを両手でギュと握ってブンブンと振り頷いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
やった!憧れの超お嬢様天界人の女子友ゲット!でも、リセさん大丈夫?かな?
***
『白ネコのポケットの中を見て』
迎えに来た侍女達に支えられてサクラの部屋に戻ったリセが、すぐに侍医を呼びますという侍女達の言葉を首を振って拒絶すると、困った顔はされたが否とは言われなかった。
念話に出て来た白ネコを探すと、ピンクのTシャツにブルーの短パンを履いた抱き枕型のぬいぐるみが可愛い姿勢でベッドに寝そべっている。
天蓋幕を引いて欲しいとお願いすると、すぐに侍女さんの一人がザーと音を立てて閉めてくれた。
これで侍女達の視界は遮断できた。
白ネコの着ているTシャツの胸ポケットに手を伸ばせばメモがあり取り出し内容をチェックする。
『ヨンハさんの名前を出せば大抵の要求は通るから深夜まで寝たふりでなんとか乗り切って。
ヨンハさんの帰宅は深夜を過ぎる予定なの。深夜になればヨンハさんの訪問は貞操観念の高い侍女長のマチルダさんが阻止してくれるはずよ。でももしもの時は布団を目深くかぶって顔を見せず声を出さず首振りだけで返事をして』
(注)彼の耳は人間にあらずで声を出せば一発でばれるよ。
ポケットの中にはメモと一緒になぜかイチゴミルクの飴が入っていた。
大ピンチになったらこれが助けてくれるって!?と、リセはそこにいない天界のお姫様にツッコミを入れた。
メモに目を通す間、天蓋の向こうから何度も、すぐに侍医をお呼びしますという侍女。
「ヨンハさんに相談してからにしたいです。少し眠ってもいいですか」
指示どおりヨンハの名前と暗黙の出ていけ要求を出すと、彼らは渋々ながらも承知いたしましたと言い退室した。
的確なアドバイスにリセの口角が上がる。
埃一つ見逃さないであろう侍女たちへの隠し事を抱き枕のネコのポケットに隠すとは考えたものだ。
彼女達もそこまでは確認しないだろう。
ポーっとしているようで璃波宮の侍女の扱い方を短時間で習得していることに感心する。
こうして、入り口に背を向けて何度か様子を見に来る侍女たちを寝たふりでかわしながら夜になるのをひたすら待った。
だが、そうそう計画は思い通りには進まない。
なぜなら夜半を過ぎて帰って来る予定だったヨンハが夕方に璃波宮に帰還してしまったから。
「サクラは?」
「私ここで休んでいるから、ミセイエルさんはみなさんと楽しんできて」
「あれくらいで?もうヘロヘロ?ダメだよあれくらいでへばってたら。今日はもっとすごいことをする予定なんだ。最後まで、ね」
最後までって、その意味今は考えたくないんですけど。
異議ありの意思表示の意味を込めてしかめっ面で睨んでみたのだが、何気にスルーされた。
「ハナ、可愛いい。疲れたのなら空間移動してそのまま予定の場所で休む?」
それって、考えたくない先の、スチュエーションの提示ですか?
とんでもない!と思いっきり顔を左右に振った。
「じゃあもう少しこの場に付き合って。今ここにいるのは日頃は皇宮に顔を出す必要のない家に縛られない者だが能力が高いんだ。使える逸材がいるか確認しておきたい」
そう言えば、今日はゼウス様の誕生日会が皇宮で盛大に行われているんだった。
「祝賀会に主役がいなくて大丈夫なの?」
「高い特殊能力持ちは、僕が影を残して抜けたことをすぐに察知するだろうから、後に続くだろうな。大勢が祝賀祭を抜け出したことが皇家の重鎮にバレるとそれなりの騒ぎになるかなぁ」
眉尻を下げて、ため息交じりに言うが、ちっとも深刻そうではない。
誕生祭の祝賀に皇宮に呼ばれ、何日も前から準備をして、何時間もかけて身なりを整え盛装したヨンハがイヤイヤ出かけていく朝の光景が頭に浮かんでこっちの方がめまいがしそうだ。
「どの程度抜けても大丈夫なの?」
「まず、僕は1時間ぐらいでアウトかな。今は側近が慌てているぐらいだが、もう少ししたら捜査がかかって皇家の近衛が動く」
それって、重大事件に発展しつつあるってこと?
「当の僕がいない事に気がついた天界人はこれ幸いと能力の高い順に抜け出してるだろうな」
この人は、自分の一挙手一投足がどれほど周りを振り回すか分かっているにもかかわらず、それを気にせず行動しているふしがある。
襲ってくる頭痛に顔を顰めるサクラとは対照的にいたずらっ子のような笑顔でミセイエルが笑う。
「今頃は、ヨンサンあたりが僕が抜けた後に誰がどのタイミングで姿を消したかを念入りに調べているよ。影を置いてトンズラしたのを見破るにはそれなりの能力が必要だからね。僕の予想では1番ヨンハ2番アサファ。ノアは分かっていても状況把握のためにその場に留まっている。今頃は5族の当主達が騒いでいるかな」
君の所在さえばれなければ、僕の所在なんか誰にばれたって大したことじゃない。
クスリと笑った能天気な反応にサクラが雷を落した。
「笑い事じゃありません!」
それって皇宮は蜂の巣を突いたような騒ぎになるってことじゃん!
「さっきの認証でここにいる事も直に足がつくだろうから、見つかったら君も一緒にしょっ引かれるだろうな」
げ、私を巻き込むつもりですか!
「大丈夫。逃げ足には自信あるから。誰か押しかけて来たらすぐに移動する」
ここの滞在時間はあと30分を予定しているからそのつもりでと念を押された。
動くのもおっくうで壁際の椅子に腰かけていると隣のミセイエルが会場の中にいる10人に次々と眼差しを向けた。
すると向けられた順番に彼らが次々にやって来て自己紹介をする。
嶺家の3分家の次男のヨソントです、桜家の2分家のカリンです、炎家の分家のシリウスです、孫家のセイレイです。
ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!
最後に名乗った人物に目を剥いた。
あなた、セイレイさんというんですか?
彼は誰あろう私の皇領お出かけ計画に協力してくれたかの庭師さんだ。
サーヤですと自己紹介をすれば、初めましてとニッコリと微笑み返される。
知り合いだとばれてはまずいということか。
私の様子を不審な眼で見ていたミセイエルもミセルだとそつなく返したから、ギリギリセーフ?
改めて周りを眺めれば、美男美女揃いでご子息とご令嬢ばかりだ。
着ている物は高級且ハイセンスで、所作も美しいし、会話も話題豊富でそれなりに楽しい。
そんな集団に囲まれて、ホント場違いというか、ハクチョウ集団の中にいるアヒルの気分だ。
アヒルの子はいいよ、大きくなったら立派なハクチョウになるんだから。
でも私はもう育っちゃてるから変身の見込みはないし。
そんな彼らの中で威風堂々と上から目線を送るミセイエルに、お声掛けを頂いて光栄ですと言う者までいる。
「え?いつ声かけたの?」
驚く顔でミセイエルを見上げたら、セイレイさんが答えた。
「さっき、『こちらに来て』って念話はあったんです。この10人のメンバーは有無を言わさず彼に集められたものばかりです」
それって、まるっきり個人の意思無視ってことですか?
「彼の力はゼウス様並です。地上ならいら知らず、天界では拒否権などありません」
こっそりと、彼って何者なのと尋ねられても...
私も、さっき会ったばかりで詳しくは知りません・・・などとお茶を濁し、この話題は終了した。
視線を彷徨わせる私の視野に入ったお嬢様はミルクティー色の髪を夜会巻きにした美人さんです。
10mぐらい離れたところから探るような視線で見つめられると痛いのを通り越して怖いです。
なんとか視線を合わさないように視野の片隅追いやっているとフフフと小さく笑う声が頭上から聞こえた。
「さっき、入り口でキスしてたでしょ?あれでここにいる男はあなたを口説けなくなったことに気がついている?」
えっ?いつの間に?見上げると隣に美人さんがいてビックリ!ああ、空間移動したんですね。
先ほどとは違って柔らかな笑みを浮かべた美人さんはポカンと口を開けたサクラをさらに驚かせた。
「こんにちは。お久しぶりね。今日はサーヤさんという名前なのね」
久しぶり??今日は?どういうこと?
「忘れているみたいだけれど、前に一度お目にかかったことがあるのよ。あの時は確か別の名前を名乗ったと思うわ」
えっ、こんな知的な美人さんに会ったことあるかな?
ウンウン唸りながら記憶の底を引っ掻き回してみるのだが思い出せない。
「ああ、そう言えば自己紹介がおざなりだったわね」
笑顔な彼女が極々小さな声で自己紹介をしてくれた。
「前に地上のリーク本社で名乗ったと思うけど、私はリーナ・リューツよ。仕事はリークグループのCEO秘書をしているの。改めてよろしくね」
げ、髪の色と肌の色素が随分抜けているから気がつかなかった。
あの時の秘書さん!
「その節は大変失礼いたしました」
大声でぺこりと頭を下げると、美人さんは目玉をひん剥き、隣の男は手で口をふさぐ。
目を白黒させる一般人と、記憶、戻ったの?と唇だけで問いかける美人さんと、それを見る苦虫を噛みつぶしたような眉目秀麗な男。
三者三様のなかで、平常心を崩さないミセイエルが不機嫌極まりない声で問う。
「指名した覚えのない君がどうしてここにいる?」
押しかけ秘書ってところかしらね、と明後日の返事を返されたミセイエルの機嫌が益々急降下する。
それをリーナさんがフンと鼻で笑った。
「元々琉家の顔を立てて渋々参加したあん式典、あなたが抜けたと気づいた時点でホールアウトしたわよ。立場上当主達は座っていたけれど、次期は私が抜ける前に影を残して出て行ったから、今頃、璃波宮はどうなっているのかしらねぇ」
え~ぇ!それって私大ピンチじゃない!どうか、入れ替わりが朝までばれませんように!
ひたすら祈る私とは違い、楽しそうにコロコロ笑うリーナさんは優秀で超の付く大物に違いない。
「ジュべリやシオンの行った女子会に行こうかとも思ったのだけれど、こっちに来て大正解だったわ。私ともお友達になってね。ハナちゃん、じゃなかった。サーヤちゃん」
ニッコリ笑って、差し出しされた手には白くて長い指が付いていて、一も二もなくそれを両手でギュと握ってブンブンと振り頷いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
やった!憧れの超お嬢様天界人の女子友ゲット!でも、リセさん大丈夫?かな?
***
『白ネコのポケットの中を見て』
迎えに来た侍女達に支えられてサクラの部屋に戻ったリセが、すぐに侍医を呼びますという侍女達の言葉を首を振って拒絶すると、困った顔はされたが否とは言われなかった。
念話に出て来た白ネコを探すと、ピンクのTシャツにブルーの短パンを履いた抱き枕型のぬいぐるみが可愛い姿勢でベッドに寝そべっている。
天蓋幕を引いて欲しいとお願いすると、すぐに侍女さんの一人がザーと音を立てて閉めてくれた。
これで侍女達の視界は遮断できた。
白ネコの着ているTシャツの胸ポケットに手を伸ばせばメモがあり取り出し内容をチェックする。
『ヨンハさんの名前を出せば大抵の要求は通るから深夜まで寝たふりでなんとか乗り切って。
ヨンハさんの帰宅は深夜を過ぎる予定なの。深夜になればヨンハさんの訪問は貞操観念の高い侍女長のマチルダさんが阻止してくれるはずよ。でももしもの時は布団を目深くかぶって顔を見せず声を出さず首振りだけで返事をして』
(注)彼の耳は人間にあらずで声を出せば一発でばれるよ。
ポケットの中にはメモと一緒になぜかイチゴミルクの飴が入っていた。
大ピンチになったらこれが助けてくれるって!?と、リセはそこにいない天界のお姫様にツッコミを入れた。
メモに目を通す間、天蓋の向こうから何度も、すぐに侍医をお呼びしますという侍女。
「ヨンハさんに相談してからにしたいです。少し眠ってもいいですか」
指示どおりヨンハの名前と暗黙の出ていけ要求を出すと、彼らは渋々ながらも承知いたしましたと言い退室した。
的確なアドバイスにリセの口角が上がる。
埃一つ見逃さないであろう侍女たちへの隠し事を抱き枕のネコのポケットに隠すとは考えたものだ。
彼女達もそこまでは確認しないだろう。
ポーっとしているようで璃波宮の侍女の扱い方を短時間で習得していることに感心する。
こうして、入り口に背を向けて何度か様子を見に来る侍女たちを寝たふりでかわしながら夜になるのをひたすら待った。
だが、そうそう計画は思い通りには進まない。
なぜなら夜半を過ぎて帰って来る予定だったヨンハが夕方に璃波宮に帰還してしまったから。
「サクラは?」
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