スピリット・コードの彼方

変身文庫

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第1章

ハッキングされた現実

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秋葉原の廃ビルに足を踏み入れた瞬間、心臓は急激に鼓動を高め軽い立ち眩みで目の前が歪んだ。彼はまるで過去と未来の境界線を超えたような錯覚に陥っていた。
 かつて秋葉原を代表した『電子のビル』と謳われたその建物は廃ビルとなり、今や静寂の支配する王国と化していた。壁に残るかすれたLED看板や剥がれ落ちたポスター、基板の残骸が、かつての賑わいの遠い記憶を静かに物語っていた。唯一の音は、蛍光灯の微かなチリチリという音だけが、埃っぽいホールにこだましている。松田龍之介の足音がその静けさを断ち切り、彼は小さな鞄を握りしめながら、取引部屋へと向かった。彼の表情には取引への緊張と、かつての一度の不運な失敗が影を落としていた。それが手の震え、声の不安定さに現れていた。鞄をテーブルに置くその手は、取引の重大さに震え、心の奥底に潜む不安を露わにしていた。

 彼が部屋に入ると、待っていたのは怪しげな男たちの一団。彼らの目は獲物を見つけた狼のように輝いていた。その瞳は計算高く、自己の利益を最優先に考える捕食者のそれだった。松田は、彼らの冷たく計算された眼差しに、自身が狙われている感覚を覚えた。無言で鞄をテーブルに置き、ファスナーを開けると、中には中古のルーターがきちんと隙間なく並んでいた。
「ご要望の品です」と松田は言った。
彼の声は低く、何かを秘めているようだった。
 男たちはルーターに熱心に目を通し始めた。松田は静かに目を細め、顎をしゃくった。彼はこのルーターがどんな危険を秘めているかを知っていた。それが悪人の手に渡ると、想像を絶する事態になるかもしれない。しかし、彼にとってビジネスはビジネスだ。
 その中の一人、スーツ姿の男がルーターを手に取り、
「これで十分だ。代表には歌舞伎町に大きな計画がある」と自信満々に言った。
松田はその言葉に戦慄した。彼の手のひらには冷たい汗が浮かんだ。この取引が引き起こすであろう歌舞伎町の混乱を想像するだけで心が重くなった。男たちは、買い取った商品を持って部屋を出ていった。松田は一人で部屋に残された。空っぽになったかばんを見つめながら、彼の心は自らの行いへの後悔と不安で揺れていた。彼は無言で、自分の行動が引き起こしたかもしれない混乱の波紋を想像し、深い孤独を感じた。彼の心には、この取引がもたらす不吉な予感が漂っていた。そして、彼自身がそれを助長してしまったかもしれないという罪悪感があった。廃ビルを出た松田は、秋葉原の暗い通りを歩いた。通り過ぎる人々のざわめきが彼を取り囲む。彼は混乱の中で自分自身を見失いそうになりながら、街を歩き続けた。

気がつけば、彼は歌舞伎町の騒々しい通りに立っていた。周囲はネオンの光と人々のざわめきで満ちており、その喧噪は彼の心の不安を一時的にかき消していた。彼は自分がどのようにしてここに来たのか覚えていないが、その場所の活気が、彼の重苦しい思考から一時的に解放されるような気分にさせた。静寂を求めて、錆びた階段を登り、ビルの屋上に出た。眼下に広がるネオンの海を見下ろし、彼は深く夜の空気を吸い込んだ。
「私の王国を眺めていたの?奇妙な趣味ね」と物陰から声がした。
その言葉には皮肉と自信が混ざり合っていて、自分が支配する街に対する独特な所有感が感じられた。松田が振り向くと女子高生が現れた。彼女の制服は体にゆったりと掛かっていたが、その目は冷たく、計算高く、松田を直視していた。「君は誰だい?」と松田は警戒して尋ねるが、その声には隠し切れない好奇心と恐怖が混ざり合っていた。その彼女の存在が、自分に新たなる謎と挑戦を投げかけていることを、彼自身が感じ取っていた。
「赤城煌子(コウコ)、トー横キッズのリーダー?かな。この街には私の計画があるの」
と、微笑みながら彼女は答えた。松田は緊張を隠せなかった。この女子高生が、あの男たちが話していた代表だったのだ。彼女は自信と力を放っていた。
「そんなに緊張しないで」と煌子は言い、タバコに火をつけた。
その光が彼女の鋭い顔を照らした。
「私たちなら、きっと助け合えるわ」。
松田は、この女子高生が掌中に収める歌舞伎町を見つめた。彼女はタバコを深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出しながら、歌舞伎町のスカイラインを見下ろした。煌子の目には、彼女が見据える街に対する複雑な感情が映っており、その一瞥からは、彼女の野望と、それを成し遂げるための計算高い思考が垣間見えた。
「下を見て。夜を彩るネオンの下、出勤するホストやキャバ嬢、スカウトに誘われる若者たち、飲みに向かうサラリーマン、彼らの華やかな表情の裏には、空虚な瞳。迷子たち。仮面の下に私たちと同じ隠された真実があるの」
煌子は煙草の火を屋根から吹き消し、燃えかすが暗闇に落ちるのを見た。
「でも、私たちは彼らに本当の姿を見せられるの。それはルーターから始まるのよ」
彼女は屋根の縁を歩き、小柄な体には不釣り合いなエネルギーをみなぎらせながら話し続けた。
「アクセスするだけで、彼らを目覚めさせることができる。彼らの平凡な生活を破壊し、夢遊病のように、自分自身から隠れている真実を見せるのよ」。
彼女は松田に振り返り、指をさして言った。
「今日のバイヤーたちは、いわゆる社会の柱よね?彼らも私たちと同じ。意味や混沌、真実に飢えているの」。
煌子は一歩近づき、目には燃えるような熱が宿っていた。
「そう、ルーターには計画があるの。この街の魂をハックして、変化、混乱、革新をもたらす。それが私たちが真に生きる唯一の方法よ」。
彼女は松田の目をじっと見つめた。松田には、自分を拒絶する世界に対する怒りと、壊れた心の痛みが彼女の瞳に映っているように見えた。彼女はすべてを壊し、新たに始めたいと願っていた。
「一緒にいてくれる?」煌子は首を傾げて尋ねた。
松田はためらったが、ゆっくりとうなずいた。この暗い道がどこへ続くのか、今はわからない。しかし、少なくとも今は、この彼女とともに新たな道を歩むことを選んだ。屋上からの眺めは、松田にとって別世界のようだった。下の街は彼が知っている秋葉原とは異なり、それは煌子が語る新しい世界の片鱗を映していた。彼女の計画が歌舞伎町にもたらす変化は、松田には想像もつかなかったが、彼はその一部になることを決めた。
「分かった。一緒にやろう」と松田は言い、煌子に向かって歩み寄った。
彼の心には不安があったが、同時に新しい始まりへの期待もあった。煌子は満足げに微笑んだ。
「素敵。これからが本当のゲームの始まり」と彼女は言い、松田の手を取った。
彼女の手は冷たく、しかし目には確固たる決意が燃えていた。煌子と松田は屋上を後にし、新たな計画に向けて歩き始めた。歌舞伎町の暗い通りを抜け、彼らの足音が未来への一歩を刻んでいった。松田の心には、恐れとともに、歌舞伎町がこれからどう変わるのか、その可能性に対する興奮が渦巻いていた。深夜の街を抜け、彼は再び秋葉原へと戻る道を選んだ。そこには彼のもう一つの顔、もう一つの戦いが待っていた。

松田が廃ビルの階段を降りると、彼の一歩一歩に荒廃した空間が反応した。秋葉原のその場所は、彼にとっては別の世界のように感じられた。昨夜の歌舞伎町での出来事が、まるで遠い夢のようだった。彼の心は未だにその夜の会話と計画に捉われていたが、今はこの場所、この瞬間に集中しなければならなかった。割れた窓からの光が埃を舞い上げ、かつての活気ある賑わいの記憶が、今は色褪せたポスターや壊れた看板にこびりついている。彼はメインフロアへと足を踏み入れ、かつての喧騒が今はただの幽霊のように感じられた。彼の目は、崩れかけた噴水のそばでささやき合う買い手たちに留まり、彼らの表面的な落ち着きの下に隠された緊張と期待を読み取った。表面上は友人同士のように見えたが、松田は彼らがただの羊ではないことを感じ取っていた。彼らの目には何かが潜んでおり、その中には隠された野心がうごめいていた。松田は彼らに歩み寄り、ニュートラルな笑みを浮かべながら挨拶した。
「こんにちは、みなさん。さあ、始めましょうか」
彼の声は落ち着いていたが、内心では緊張が渦巻いていた。一人また一人と、彼らは前に出てきて、松田が持ち込んだ商品に興味を示した。彼らの表情は変わり、本当の目的が徐々に明らかになっていった。松田は静かに見守り、この廃墟に新たな命が吹き込まれる瞬間を感じ取った。廃墟の深部へと彼らを案内する松田の足音は、広大な空間に響き渡った。彼はポケットから鍵を取り出し、扉を開けた。ルーターやネットワーク機器の山が非常灯の下で不気味に輝いていた。
「ご要望のもの全てです」と松田は言い、脇に寄った。
彼らは機器に手を伸ばし始め、その行動は普段の彼らからは想像もつかないものだった。松田は黙って彼らを観察し、彼らがどのような混乱を引き起こすかを想像していた。狼たちはついにハードウェアを手に入れた。彼らの真の目的が明らかになり、松田は自分が動かした駒がどのような結果を生むのかを考えていた。松田は、バイヤーたちがネットワーク機器を丹念に選別し、興奮気味につぶやき合っている様子を静かに観察していた。彼らの真の顔が徐々に現れ、それまでの無害な仮面が剥がれ落ちていく。彼らの内に潜む狡猾な怪物が姿を現し始めていた。教師の服装をした眼鏡の男が、一台のルーターを手に取り、愛おしそうに撫でながらささやいた。
「これさえあれば、制限された記録にやっとアクセスできる。」
彼の眼鏡の奥には、暗く計算高い目が輝いていた。一方、年配の医師がファイアウォールのデバイスを手に取り、狡猾な微笑みを浮かべていた。
「これで病院のデータベースを私の手の中に収めることができる。患者の秘密は今や私のものだ」と年配の医師が独り言のようにつぶやいた。
その隅では、2人の警察官がワイヤレス・シグナル・ブースターを手に取り、陰謀めいた話をしていた。
「これがあれば、市民の秘密をすべて握ることができるね」と片方が笑いながら言った。
松田は表面上は冷静を保っていたが、内心では不安と恐怖が渦巻いていた。彼らがこのツールで何を引き起こすかを考えると、彼の胸は重くなった。バイヤーの一人、平凡なサラリーマンがちらりと松田を見て、疑問を投げかけた。
「驚くべきコレクションだな。どうやってこんな高度な機器を調達したんだい?君の手腕にはいつも驚かされるよ」とサラリーマンが興味深げに尋ねた。
彼の言葉は軽やかだったが、その目には隠された意図があった。松田は簡潔に答えた。
「情報源はいろいろありますよ。」
彼の答えは曖昧だったが、その言葉の裏には、彼自身もこの危険なゲームの一部であるという意識があった。取引が終わり、バイヤーたちは新たなツールを手に満足げに立ち去った。彼らの目には、まだ飽くなき欲求が宿っていた。松田は彼らが去った後、重いドアを閉じた。彼は知っていた。開けてしまったパンドラの箱はもう閉じることができない。彼が引き起こした悪はもはや止められない。

 静かにビルを後にした松田は、これから始まるカオスを予感しながら歩き出した。ゲームは始まった。そして、この闇のゲームで勝つ者は誰になるのか、それはまだ誰にも分からない。彼の足取りは重く、心の重荷は彼を押し下げていた。ビルを離れた後の静寂が、彼の内面の葛藤をより一層際立たせていた。彼の心は、苦悩と後悔の深い海に沈み過去の記憶に満ちていた。
 あの運命の夜、冷酷なスーツ姿の男たちが突然彼の家に押し入り、抵抗する父を容赦なく連れ去ったことを、松田は鮮明に思い出す。父の叫び声が今も耳に響く。
「後悔するぞ!」
彼の父がワゴン車に押し込まれ、夜の街に消えていく様子は、松田の心に深い傷を残した。それ以来、彼は復讐を誓い、裏社会で名を馳せるようになっていった。しかし今、彼は自らの選択に対する疑念を抱き、自分が歩むべき道についての深い葛藤に苛まれていた。これが父が望んだ道だろうか?彼は自問した。復讐の炎は依然として彼の中で燃え続けていたが、その代償はあまりにも大きい。取り返しのつかない事態を苦渋にも受け入れ、自身の計画を最後まで遂行する決意を固めた。
 活気あふれる通りに足を踏み入れると、急ぎ足で行き交う人々の中で、松田は自身の内に秘めた混沌を感じた。彼らは知らない。彼らの中に潜む悪がすぐそこまで来ていることを。松田は深く思索にふけりながら、賑やかな通りを歩いた。彼の心は動揺し、父の仇を討つために自分が辿る道に疑念が生まれ始めていた。長年の復讐の目的が、今、彼の心の中で揺らいでいた。彼は、罪のない人々を巻き込むことになるかもしれない計画を、本当に実行できるのだろうか?父が引きずられていく様子が、彼の脳裏をよぎる。しかし、彼にはもはや後戻りする道はなかった。

無機質なオフィスビルに到着し、エレベーターで最上階に向かった松田。ドアが開くと、白い壁と電子機器の音が彼を迎えた。ホールを歩きながら、彼は『プロジェクト・ムーンアイ』と書かれた扉にたどり着いた。
 扉を開けると彼の目に飛び込んできたのは、コンピューターとサーバーが随所に並ぶ光景だった。しかし、彼の注目を引いたのは、モニターの光だけが照らす部屋の最奥に座る小柄な人物だった。それはトー横キッズのリーダー、赤城煌子だった。煌子は松田を見て、少女のような声で挨拶した。
「松田、ようやく来たわね。ここは私たちの作戦本部。私はここで全てを監視するの」
松田は緊張しながら尋ねた。「準備はいいのか?」
煌子は冷たく微笑んだ。
「もちろんよ。私たちの計画はもう始まっているの。ここから私たちの野望が実現するのよ。ここから、街の全てが変わるの」
彼女はモニターに目を戻し、複雑なコードと回路図を巧みに操り始めた。
松田は拳を握りしめ、決意を新たにした。
「家族を破壊した者たちには、どんな代償を払っても報いを受けさせる」
彼は煌子の計画の一翼を担う覚悟を決めていた。
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