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さぁ、領地改革を始めよう!
領地に水路がやってきた!
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当初の予定通り、工事班を二つに分けた。
一つは予定通り貯水池を掘り進める班。
もう一つは、岩場で石を切り出す班だ。
貯水池を掘る工事に関しては、フランがしっかりと測量して数値を叩き出して行ってくれている。
水盛り遣り方? 基準値誤差三センチ以内?
さっぱり分からないが、段取りよく進んでいる。
それにしても、人間が自分の手を使って土を掘り進んでいく様は、ある意味で圧巻だ。
きっと、道具を使うことを習得する前の人類というのは、色々試行錯誤して掘っていたに違いない。
道具を編み出したことは、人類の進化の大いなる飛躍といっても過言ではないな。
それにしても、道具を使うよりも早く工程が進むとは……
そりゃ、現場の規模に対して七人ほどっていうのはどう考えてもキャパ不足なんだろうけども。
魔法で強化した工員の作業スピードは、それを補っても余りまくるほどに早い!
犬が穴を掘るような動きで、七人の「穴掘り師」たちは、フランの指示の元、正確に土を掘って掘って掘りまくっている!
俺は安心してその場を任せ、岩場へと向かった。
そこでは、これまた七人の男たちが岩場の岩を斬りまくっている。
「アチョォォォォォォォ!!」
「ハイヤァァァァァァァァァ!」
「うぬらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「バジュラァァァァァァァ!!」
「ゥオォォォォォォォォムゥゥゥゥ……!」
「チョリソォォォォォォォ!!」
……
なんだここ……
各々が各々の掛け声で岩場の岩を手刀でスパスパと斬りまくってるが……
どうにかならないか、あの掛け声……
なんか、どっかの荒れた大地で世界の覇権を賭けて戦う拳法集団みたいだ…
どことなく世界の終わりのような香りが漂うのは何でかな?
そんな連中もいれば…………
俺はそれまで連中に向けていた、自分でも考えている以上に冷たい視線を、ある男に向けた。
「ふしゅぅぅぅぅぅぅ……」
一人の男が、崖っぷちギリギリのところに背を向けて立っていた。
両手を頭の上に上げ、片手を手刀にして、その手首をもう片方の手で掴んでる。
もう、何してるかさっぱりだ。
と言うよりも、何がしたいのかが皆目見当がつかない。
あれは一体何をしているのだ?
「うぅぅぅ……む!!」
そして、閉じていた目を「クワッ!」と開くと、その場で飛び上がり。
「てぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と握っていた手を離し、手刀の方の手を横一文字に振り抜いた!
いや、それって手首握ってる必要あったのか?
そして、目の前の岩場を飛び越え、華麗に着地を決めると、背中の岩がゴゴゴ……と音を上げながら、横一文字に崩れていく。
「ふっ、またつまらぬ物を斬ってしまった……」
と決め台詞……
いやいや、カッコつけてるとこ悪いけど、それ岩だから。
つまらんも何も、ただの岩ですからね、ただの。
「おや? そこにおられるのは領主殿でござるな? 拙者、斬鉄剣の使い手、小早川五右衛門でござる」
ーービクっ!
いやいやいやいや!
何それ、自己紹介のつもりかぁ!?
「そんな、木陰に身を隠さずとも、拙者からは丸見えでござるよ」
木陰も何も、普通に見てましたからね。
別に隠れてもないですから。て言うか、隠れる場所なんざありゃしねえから。
それより、勝手に自分に都合の良い物語を語らないでくれるかな?
「む? こんなところで与太話をしている時間はござらん。早く仕事を済まさなければ、日が暮れるでござる! ごめん!」
と言って小早川殿は足並み早くその場を立ち去り、次の岩場へと向かったでござる。
いやいかん、あのござる野郎の口癖が移っちまった!
それにしても、何か個性豊かな奴らが集まっちまったなぁ……
こんだけ能力が高かったら、魔法をかける必要なくね?
それとも、魔法をかけたせいでこうなったのか?
そうなると、責任は俺にあるのか……
良かれと思ってやったのに、それって何か複雑だ……
そうして岩場から切り出された石を、今度は間知石の形に整えていく。
形の整った石から、貯水池の現場に運び出し、設置する。
あとはひたすらこの工程を繰り返すだけ。
そして、補助魔法の効果は長くて約四時間ほど。
効果が薄まると、立ち所に能力低下があるから、その時は一旦休憩してから再度魔法をかけて働いてもらった。
さて、その結果だが……
一日目ーー集合して移動、それぞれの配置につき作業開始。
二日目ーー貯水池予定地の掘削作業、岩場の石の切り出し。
三日目ーー貯水池予定地の掘削作業が大方形を成してくる。
四日目ーー神がかった速度で間知石を整形していく。
五日目ーー間知石を運搬、貯水池予定地に設置していく。
六日目ーー間知石の運搬、設置続く。
そして迎えた七日目ーー
「あ、ありえねぇ……!」
作業開始から一週間、貯水池の工事はその工程をほぼ消化し、大詰めのところまで来ていた。
どいつもこいつも、携わった連中はやりきったって顔をしている。
「いやぁ、さすが俺たちだ。領主の兄貴、俺たちが本気出せばこんなもんよ!」
ドヤ顔でそう言うトム君だが、違うぞ。
俺が皆に身体強化の魔法をかけたからだ。
そこんとこ忘れんじゃねぇ!
「とにかく、社長。いや、領主。そのなんとかって石、さっさと置いて来やがれよ」
フラン、今出し抜けに「社長」っつったか?
俺は土木会社の社長じゃないからな!
領主、領主!
「そ、そうだな。ではこの魔力結晶を貯水池のそこに……」
「お待ち下さい、ご当主!」
はっ!? そ、その声は……
声のした方向を振り返ると、トム君の横にそれまでいなかったバイゼルの姿があった。
「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
トム君、驚くのも無理はないな。
神出鬼没の名執事、それがバイゼルだ。
……まぁ、俺も驚いたけど……
「どうした、バイゼル?」
「ご当主。まだ仕事は終わっておりませんぞ」
「と言うと?」
「貯水池の整備は終わったようですが、肝心の水路がまだ残っております。水路の整備も終わった後に、その魔力結晶とやらを動かせばよろしいかと」
あ、そっか。
貯水池だけ出来ても、水を流す水路が整ってなけりゃ意味ないじゃん!
「いっけね! バイゼルの言う通りだわ! よっし、みんな! あと一踏ん張り! 領地にある水路を見つけて補修! それが終わったら開通式するぞーーー!」
俺が手のひらを天高く掲げ、そう告げると!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「領主さまぁぁぁぁぉぁぁぉ!」
「酒酒酒酒ぇぇぇぇぇ!」
「うぬらぁぁぁぁぁぁぁ!」
などと、怒涛のように押し寄せる男共の雄叫び!
それから一週間後。
身体強化魔法を常に施したせいもあってか、尋常じゃないスピードで元水路のチェック、補修が終わり、貯水池のそこに魔力結晶を設置。
晴れて貯水池には水が満たされ、領内の水路には並々と水が行き渡り、耕作地帯へと流れていった。
作業に携わった男共はと言うと、全行程が終わったと共に例の酒場へと流れ込み、朝まで飲むわ飲むわ!
お陰で俺の財布もスッカスカ……
と言いたいところだが、あまり減らなかった退職金。
どうやら、アルブラム領の物価は相当な低いようだ。
そして、この工事で岩場の作業に関わった者たち。
彼らはいずれ、このアルブラム領において鉄壁の守備を誇る、「星屑の七星」と言う異名を持つことになる。
それはまた、後々のお話……
一つは予定通り貯水池を掘り進める班。
もう一つは、岩場で石を切り出す班だ。
貯水池を掘る工事に関しては、フランがしっかりと測量して数値を叩き出して行ってくれている。
水盛り遣り方? 基準値誤差三センチ以内?
さっぱり分からないが、段取りよく進んでいる。
それにしても、人間が自分の手を使って土を掘り進んでいく様は、ある意味で圧巻だ。
きっと、道具を使うことを習得する前の人類というのは、色々試行錯誤して掘っていたに違いない。
道具を編み出したことは、人類の進化の大いなる飛躍といっても過言ではないな。
それにしても、道具を使うよりも早く工程が進むとは……
そりゃ、現場の規模に対して七人ほどっていうのはどう考えてもキャパ不足なんだろうけども。
魔法で強化した工員の作業スピードは、それを補っても余りまくるほどに早い!
犬が穴を掘るような動きで、七人の「穴掘り師」たちは、フランの指示の元、正確に土を掘って掘って掘りまくっている!
俺は安心してその場を任せ、岩場へと向かった。
そこでは、これまた七人の男たちが岩場の岩を斬りまくっている。
「アチョォォォォォォォ!!」
「ハイヤァァァァァァァァァ!」
「うぬらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「バジュラァァァァァァァ!!」
「ゥオォォォォォォォォムゥゥゥゥ……!」
「チョリソォォォォォォォ!!」
……
なんだここ……
各々が各々の掛け声で岩場の岩を手刀でスパスパと斬りまくってるが……
どうにかならないか、あの掛け声……
なんか、どっかの荒れた大地で世界の覇権を賭けて戦う拳法集団みたいだ…
どことなく世界の終わりのような香りが漂うのは何でかな?
そんな連中もいれば…………
俺はそれまで連中に向けていた、自分でも考えている以上に冷たい視線を、ある男に向けた。
「ふしゅぅぅぅぅぅぅ……」
一人の男が、崖っぷちギリギリのところに背を向けて立っていた。
両手を頭の上に上げ、片手を手刀にして、その手首をもう片方の手で掴んでる。
もう、何してるかさっぱりだ。
と言うよりも、何がしたいのかが皆目見当がつかない。
あれは一体何をしているのだ?
「うぅぅぅ……む!!」
そして、閉じていた目を「クワッ!」と開くと、その場で飛び上がり。
「てぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と握っていた手を離し、手刀の方の手を横一文字に振り抜いた!
いや、それって手首握ってる必要あったのか?
そして、目の前の岩場を飛び越え、華麗に着地を決めると、背中の岩がゴゴゴ……と音を上げながら、横一文字に崩れていく。
「ふっ、またつまらぬ物を斬ってしまった……」
と決め台詞……
いやいや、カッコつけてるとこ悪いけど、それ岩だから。
つまらんも何も、ただの岩ですからね、ただの。
「おや? そこにおられるのは領主殿でござるな? 拙者、斬鉄剣の使い手、小早川五右衛門でござる」
ーービクっ!
いやいやいやいや!
何それ、自己紹介のつもりかぁ!?
「そんな、木陰に身を隠さずとも、拙者からは丸見えでござるよ」
木陰も何も、普通に見てましたからね。
別に隠れてもないですから。て言うか、隠れる場所なんざありゃしねえから。
それより、勝手に自分に都合の良い物語を語らないでくれるかな?
「む? こんなところで与太話をしている時間はござらん。早く仕事を済まさなければ、日が暮れるでござる! ごめん!」
と言って小早川殿は足並み早くその場を立ち去り、次の岩場へと向かったでござる。
いやいかん、あのござる野郎の口癖が移っちまった!
それにしても、何か個性豊かな奴らが集まっちまったなぁ……
こんだけ能力が高かったら、魔法をかける必要なくね?
それとも、魔法をかけたせいでこうなったのか?
そうなると、責任は俺にあるのか……
良かれと思ってやったのに、それって何か複雑だ……
そうして岩場から切り出された石を、今度は間知石の形に整えていく。
形の整った石から、貯水池の現場に運び出し、設置する。
あとはひたすらこの工程を繰り返すだけ。
そして、補助魔法の効果は長くて約四時間ほど。
効果が薄まると、立ち所に能力低下があるから、その時は一旦休憩してから再度魔法をかけて働いてもらった。
さて、その結果だが……
一日目ーー集合して移動、それぞれの配置につき作業開始。
二日目ーー貯水池予定地の掘削作業、岩場の石の切り出し。
三日目ーー貯水池予定地の掘削作業が大方形を成してくる。
四日目ーー神がかった速度で間知石を整形していく。
五日目ーー間知石を運搬、貯水池予定地に設置していく。
六日目ーー間知石の運搬、設置続く。
そして迎えた七日目ーー
「あ、ありえねぇ……!」
作業開始から一週間、貯水池の工事はその工程をほぼ消化し、大詰めのところまで来ていた。
どいつもこいつも、携わった連中はやりきったって顔をしている。
「いやぁ、さすが俺たちだ。領主の兄貴、俺たちが本気出せばこんなもんよ!」
ドヤ顔でそう言うトム君だが、違うぞ。
俺が皆に身体強化の魔法をかけたからだ。
そこんとこ忘れんじゃねぇ!
「とにかく、社長。いや、領主。そのなんとかって石、さっさと置いて来やがれよ」
フラン、今出し抜けに「社長」っつったか?
俺は土木会社の社長じゃないからな!
領主、領主!
「そ、そうだな。ではこの魔力結晶を貯水池のそこに……」
「お待ち下さい、ご当主!」
はっ!? そ、その声は……
声のした方向を振り返ると、トム君の横にそれまでいなかったバイゼルの姿があった。
「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
トム君、驚くのも無理はないな。
神出鬼没の名執事、それがバイゼルだ。
……まぁ、俺も驚いたけど……
「どうした、バイゼル?」
「ご当主。まだ仕事は終わっておりませんぞ」
「と言うと?」
「貯水池の整備は終わったようですが、肝心の水路がまだ残っております。水路の整備も終わった後に、その魔力結晶とやらを動かせばよろしいかと」
あ、そっか。
貯水池だけ出来ても、水を流す水路が整ってなけりゃ意味ないじゃん!
「いっけね! バイゼルの言う通りだわ! よっし、みんな! あと一踏ん張り! 領地にある水路を見つけて補修! それが終わったら開通式するぞーーー!」
俺が手のひらを天高く掲げ、そう告げると!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「領主さまぁぁぁぁぉぁぁぉ!」
「酒酒酒酒ぇぇぇぇぇ!」
「うぬらぁぁぁぁぁぁぁ!」
などと、怒涛のように押し寄せる男共の雄叫び!
それから一週間後。
身体強化魔法を常に施したせいもあってか、尋常じゃないスピードで元水路のチェック、補修が終わり、貯水池のそこに魔力結晶を設置。
晴れて貯水池には水が満たされ、領内の水路には並々と水が行き渡り、耕作地帯へと流れていった。
作業に携わった男共はと言うと、全行程が終わったと共に例の酒場へと流れ込み、朝まで飲むわ飲むわ!
お陰で俺の財布もスッカスカ……
と言いたいところだが、あまり減らなかった退職金。
どうやら、アルブラム領の物価は相当な低いようだ。
そして、この工事で岩場の作業に関わった者たち。
彼らはいずれ、このアルブラム領において鉄壁の守備を誇る、「星屑の七星」と言う異名を持つことになる。
それはまた、後々のお話……
応援ありがとうございます!
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