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勇者パーティーとの出会い
――村はどこ?――
しおりを挟む俺の身長より高い雑草をかき分けながら道なき道を進む。
「あ、ちょうちょ」
「こら、そっち行っちゃダメだ、ちゃんと俺についてこい――えと――」
緑の子が蝶々を追いかけて道をそれる。名前を呼ぼうとして、今更ながらに聞いてないのを思い出した。
「俺の名前は、由井 凜太朗(ゆい りんたろう)っていうんだ。お前たちの名前も教えてくれよ」
ピンクの髪にピンクの瞳の子が「ユーチャなの!」
青色の髪に青の瞳の子が「マーチャでつ!」
緑色の神に緑色の瞳が「ケンチャなのー」
そして最後、黄色の髪に黄色の瞳が……「キーチャ……」
ふむ。覚えた。ピンクが一番けたたましくて黄色が一番大人しい。四つ子でもずいぶん性格にばらつきがあるんだな。
「あ、とんぼー」
「だからはぐれちゃダメだって、『並んで歩く』ぞー!」
虫を追ってばらばらになってた子供たちが俺の後ろにてこてこと並び始める。
な、なんて便利なんだ『並んで歩く』。確かにアステリアの言うとおり保父のスキルとしては最強だな。こんな場所ではぐれられたら二度と探し出せる気がしない。
もし、見つからなくなったら……。
こんな小さな子が森の中で餓死するだなんて考えるだけでもぞっとする。
この子たちの頼りは俺だけなんだ。しっかりしなきゃな。
「よーし、皆でお山をくだろうな! お兄ちゃんについてこいよー!」「あーい」「ふふ、たのちねー」
「きつくなったら言えよ。特別に抱っこしてやるからな」
「はーい!」
草をかきわけ、ゆっくり歩きながら空を見上げるが、うっそうと茂る葉が邪魔をする。
「くそ……手鏡を持ち歩く習慣ぐらいつけておけばよかった……こんなに葉が多いんじゃ、ヘリが来ても合図を送ることさえできないじゃねーかよ……」
この世界にヘリがあるのかどうかもわかんないけど。
「おにちゃ、葉っぱさんが邪魔ーなの?」
「ん? ああ、葉っぱさんは悪くないんだけどな。邪魔ーなの。道が見つかればいいけどな……」
「みち? みちなら、ユーチャがつくうのー」
「え?」
俺のすぐ後ろにいたピンクが手をかざすと、頭上に魔法陣が現れ、触るだけでも指が落ちそうな透明な刃を持った剣が下りてきた!!
刃の根元には小さな刃がうめこまれていて、まるで天然の水晶のような形をしている。チビの身長より長い剣だ!
「えーい!」
ユーチャは軽々と剣を振り下ろした――と同時にドン!!!と爆発が起こった。
「う――うわあああ!!!」
目が眩み、体が簡単に宙に浮いて飛ばされた。
「おみち、できたの」
山がえぐれて、行き止まりさえ見えないぐらいに真っすぐとした『道』が出来ていた。
子供たちがきゃっきゃとはしゃぐ。
中肉中背とはいえ、大人の俺が飛ばされたっていうのに、他の子たちはその場に平然と立って居る。
ま、まさか……
ぶるぶる震える手で、ゆうちゃの頭を撫でる。ブン、と音がしてパソコン画面に似たウインドウが開いた。
名前の欄は空欄だった。
だが職業の欄にはしっかりと書いてある。『この世界を統べる全ての神に愛されし勇者 ランクSSR』――――!!!
ユ、ユーチャって勇者ってことかああ!!
ってことは!
マーチャ『攻撃と守護を併せ持つ魔法使いSSR』!ケンチャ『世界のすべてを知る賢者SSR』!!キーチャ『大地も空さえも割る騎士SSR』!!!!!!!!
こっち(チビども)がチートだったあああああああああ!!!!!
「おにちゃ、じゃまーなくなったの! うれち?」
無邪気なチビに、俺の目に涙が出てきた。
「う、う、う、うん、お兄ちゃん嬉しいなー。ありがとうな。じゃあいくぞ、ならべー」
「「「「はーいの!」」」」
やばいぞ。ユーチャのうっかり一撃で消し飛ばされる未来が見える。
たしかに死体さえ残さず逝っちゃうタイプのモブだ……。
ケンチャのスキルに『蘇生』があるのだけが救いだな。というか、こいつら、俺をプチっと殺しちゃってもちゃんと生き返らせてくれるのか?
いや、きっと生き返らせてくれるはず。頼んだぞ賢者ことケンチャ!
最早消し飛ぶこと前提で生きるのを決めた俺の横で『並んで歩く』のランクが上がりました。と電子音声が上がった。
「へー、こんなスキルでもランクがあるんだなぁ。疲れたらいえよ。抱っこしてやるからな」
「はいのー」「の」「……」
? あれ? い、一匹足りないいいい!!! 誰だ誰が居ないんだ――ピンクだ! ユウチャが居ない!!!
「みんな、ユウチャはどこに行ったんだ!?」
「マーチャは知らないの」「むしちゃんが居たって、あっちに行ったよ」「あちー」
キーチャとケンチャが森を指さす。
「ユーチャを連れてくるから、皆はここで待っててくれ!」「あいー」
並んで歩くは永久に続くわけじゃなかったのか!――って当然だよな、そのためにランクがあるってのに! 完全に油断していた……!
森の中は歩くことさえ覚束ないぐらいに低木が生い茂って俺の視界を邪魔してくる。
「ユーチャ! ユーチャ――!!」
返事はどこからもない。
「そうだ……!」
スキル、『見つける』!
「いた……!」
俺が頭の中で無意識に予測していたよりずっと遠くで一瞬だけ反応があった。反応時間が短すぎる……!!
「『見つける』! 『見つける』! 『見つける』!!」
連続で使いながら――「おにちゃー……」
「居た……良かった……ケガして無い?」
「ないの……」
勝手に離れたことが悪いことだったのは分かっているのか、木の陰に隠れてしまっている。
「おいで、皆のとこに戻ったらお説教だからな」
「う、う……」
ユウチャがいる場所から光がほとばしり、天を突き破った。
今度はなんだ!?
俺の十倍はあろうかというお爺さんが光の中を降りてきた。白い髪にたっぷりの白い髭。見るからに神様だ。
『ワシはこの世界の全能神であるディーンイーシアムだ』
ただ立ってるだけだっていうのに圧迫感が凄い。光にまで圧力があって思わず一歩下がりそうになってしまう。
神様は地を揺るがすような低音で言った。
『その……勇者も反省しているようなので、今回の迷子は許してやってくれんか?』
「おじいちゃんに謝らせちゃいけません!!!」
草むらに隠れた勇者を怒鳴る。ユウチャの姿は見えないのに、汗のマークが飛んでいるのがわかる。 全能神も何してんだ! 保父に謝るためにわざわざ降臨しないでくれ!!
「まったくもう……、怒ってないから出ておいで。二度とはぐれるなよ。心臓が止まるかと思っちまった」
「……ごめんなさいの……。これ、おにちゃんにお詫びの品なの」
「なんだ?」
何気なく差し出した掌の上に、蜘蛛とムカデを足したような虫が乗せられた。
ぎゃああああ。という俺の悲鳴が山に木霊したのは言うまでもないだろう。
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