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ビジュアル系弁護士✨シンゴ✨💕💕

第4話 混ぜるな。危険!!

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 オレは玄関の外を確かめた。

 どうやら近所の誰も気づかなかったようだ。
 それとも関わり合いになりたくないのだろうか。


 ゆっくりとドアを閉めカギし、ヒデを室内へ招き入れた。
 


 近所の手前、これ以上、玄関前で騒いでいられると警察沙汰になりかねない。



 なにしろ周辺はセレブばかりだ。



 ただでさえ売れないビジュアル系バンドをやって肩身が狭いのに。


 玄関前でヤンキー風の真っ赤なモヒカン頭のヒデに騒がれては堪らない。



 ヒデの様子からしてジョークを言っているようには見えない。
 だが、まだ全面的に信用をしている訳ではない。


 なにしろヒデの口からは、ジョークと下ネタ以外のフレーズなど聞いたことがないからだ。



 第一、あのユウキが死ぬはずはない。
 何かの間違いだろう。
 そうに決まっている。



 落ち着いて、じっくり話しを聞こうとした。

「おい、ヒデ!! 今なら悪い冗談で済むぞ」



「ン……、オレだって冗談だって言いたいンだけどマジなんだよ……。 
 シンゴ君に電話してもライン送っても、まったく応答がないし!!」
 ヒデは慌てた様子だ。


 仕方なく直接、マンションまで起こしに来たようだ。
 


「あァ……、朝方まで新曲を書いてて、ついさっき寝たばっかなんだ……」
 寝落ちする前に、スマホの電源は切ってある。


 取り敢えず、オレは顔を洗い服を着替えた。
 完全に睡眠不足だ。
 まだ頭がボーッとする。



「まさか、あのユウキ君が死ぬなんて……。
 ギターテクニックは最高だったのに」
 ヒデは勝手に冷蔵庫を開けて、缶コーヒーを取り出した。



「おい、何度も言うがマジなのか。
 ユウキが……」
 死んだと言うのは。

 思わず口に出かかった。
 口にすると本当になりそうで怖い。



「あのねェ。再三言うけど、ジョークでユウキ君が死んだッて言っても笑えないだろう。
 マジに決まってンじゃン!!」
 


「うぅ~ン……」唸るだけだ。
 確かにジョークだとしても笑えない。


「ッで、事故か…… それとも」
 あまり考えたくはないが。



「ン……、どうも自殺らしいよ。コレ貰うね」
 すでに缶コーヒーのプルトップを開け飲んでいた。


「え、自殺……?! そんなはずは……」
 ないとは言い切れない。


 最近、立て続けに芸能人が自殺している。 

 誰から見ても順風満帆にいっているような芸能人が次々と。




「ほら、ユウキ君も…… シンゴ君と同級生タメで来年30歳じゃン……。
 ン……、やっぱ、いろいろ考えることも有るだろう」
 


「いや…… しかし自殺と決めつけるのは、だいたいどうやって」



「ほらァ……、あれだよ。混ぜるな。危険!!」


「ええェ……、硫化水素か……」
 一瞬、クラッと目眩めまいがした。






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