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✨ユウキ✨💕

第14話 『ラブソングは歌えない』

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 ようやく落ち着きを取り戻した頃、ユウキの母親、美幸が証拠となるモノを持ってきた。



「そう言えば、織田さんはミュージシャンをやりながら弁護士もしているとか……。
 ユウキが言ってましたけど」


「ええ……、世界で、ただ一人の『ビジュアル系弁護士』です」


「フフ……、日本に何人もビジュアル系弁護士が居たら大変だけどねェ✨🤭✨✨」
 背後でヒデが茶化した。


「……」チラッとヒデを睨んだ。
 ヒデは、舌を出しておどけてみせた。



「はァ、ビジュアル系弁護士……さんですか。
 こちらです。どうぞ。
 遺書のオリジナルは、まだ証拠として戻って来ませんが、コピーで宜しければ」
 母親から封書を手渡された。



「ええ、もちろんコピーで構いません。
 ちょっと中身を拝見します」
 遺書を受け取り、中身を確かめた。


「ン……」ひと通りユウキの遺書に目を通した。

 クリスとヒデも背後から覗き込んだ。


 オレの二の腕にクリスの柔らかな胸の膨らみが押しつけられた。
 おそらくワザとだろう。困ってしまう。



「字は、ユウキのモノに間違いないと思います」
 母親は気づかぬ振りをして補足した。



「そうですねェ……」オレも納得して頷いた。
 確かに、ユウキの直筆なのだろう。




 しかし……。



「ン…… これは……!!」オレは小さく唸った。


「ええ……、そうなんです」
 母親も気づいているみたいだ。


「これは、遺書じゃなくッて……。
 歌詞じゃないですか……!!」


「ハイ、私もこれを読んだ時、なんとなく違和感を覚えました」



「うゥ~ン……」


 ユウキの書いた遺書を要約すると、愛する彼女が自分の元を去っていき、残された自分は夢が破れ、最後には死を選ぶという話しだ。



 確かに、いくつか自殺を連想する文言は並んでいる。


 

『ラストソングは歌えない』
 そう文章は締めくくってあった。








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