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平家伝説財宝殺人事件✨✨
お蝶✨✨✨
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明くる朝、柿の木長屋に小気味よいトントンと云う音が響いた。
包丁で野菜を刻む音だろう。おっ母ぁであろうか。
まさか、そんなはずはない。
おっ母ぁが亡くなって、すでに三年の月日が流れていた。だが懐かしい音だ。
そう言えば昨夜はお蝶と酒を酌み交わしている途中、知らぬ間に寝落ちしてしまったようだ。
あれからお蝶はどうしたんだろう。
まさか。
「ン……!」
ようやく俺は目が覚めた。
「ううゥ……」かすかに目眩がするようだ。頭を押さえ包丁の音のする方を見た。
「フフ、起きられましたか」
お蝶が振り返って俺に微笑んだ。
「あ、ああァ……!」
夢ではないようだ。香ばしい味噌汁の香りが漂っていた。
「ううゥ……、お蝶さん!」良かった。まだ家に居てくれたようだ。
まるで御伽話の『鶴の恩返し』のように目覚めたら、居なくなっているのかと思った。
「フフ、お蝶と呼んで下さい」
「お蝶ですか……」
「ハイ、申し訳ございません。清雅様」
お蝶は恭しく傅いた。
「え、いや、あの清雅様ッて、俺は……」
「ご無礼を深くお詫びいたします」
お蝶は俺の前に平伏し頭を下げた。
「ちょっと待って下さい。手を上げて……、どういうことなんですか」
起きた途端、謝られても困惑してしまう。
「お酒の中に眠り薬を仕込んでおいたのです」
「な、そうですか。道理で変な酔い方を……」
今も頭がぼんやりしている。軽く頭を振ってみた。
「申し訳ありません。確認のためです。ご容赦を……、清雅様」
なおも平伏したままだ。
「いや、その事は良いですよ。わかりましたから手を上げて。それに、俺は清雅と言う名前ではありませんから」
確かにおっかぁからは本当の名前は清雅だと聞いた事がある。
「いえ、あなた様は清国様のご落胤……。清雅様に間違いありません」
「ええェ……、清国様というのは、どなたでしょうか」
「少々、込み入った話しですがよろしいでしょうか」
「え、ああァ、ハイ。どうぞ」
ここまで聞いたら続きを聞かないワケにはいかないだろう。
「わかりました。平家の落人の谷に『揚羽の里』と言う集落がございます」
「ぬうぅ、揚羽の里ですか……?」
夢で何度も見た覚えがある。
幼き日に俺は母親とともに小高い丘から眺めていた。
里に数えきれないほどの揚羽蝶が舞っている。
紅い花の咲き乱れた花畑を揚羽蝶の群れが飛んでいた。あの絶景が揚羽の里なのだろうか。
「ハイ、そこの本家の当主、清国様とお女中のお雅様との間に出来た子が、あなた様でございます」
「ううゥ……、俺が?」
その当主の清国の子だと言うのか。
「この先は、少々、話しが長くなりますので朝食の後でよろしいでしょうか」
「ええェ……、まァ、そうですね。せっかく作ってくれたのですからメシを食ってからにしましょう」
美味そうな香りが鼻孔をくすぐっていく。今にも腹の虫が騒ぎ出しそうだ。
「ハイ、ただちに」
まるで高貴な武家に仕える女中のようだ。
俺は用意された朝食を食べ話しの続きを聞いた。
しかしあまりにも荒唐無稽なので、そのあと源内邸へ出向き源内や信乃介等にも聞いて貰った。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.
包丁で野菜を刻む音だろう。おっ母ぁであろうか。
まさか、そんなはずはない。
おっ母ぁが亡くなって、すでに三年の月日が流れていた。だが懐かしい音だ。
そう言えば昨夜はお蝶と酒を酌み交わしている途中、知らぬ間に寝落ちしてしまったようだ。
あれからお蝶はどうしたんだろう。
まさか。
「ン……!」
ようやく俺は目が覚めた。
「ううゥ……」かすかに目眩がするようだ。頭を押さえ包丁の音のする方を見た。
「フフ、起きられましたか」
お蝶が振り返って俺に微笑んだ。
「あ、ああァ……!」
夢ではないようだ。香ばしい味噌汁の香りが漂っていた。
「ううゥ……、お蝶さん!」良かった。まだ家に居てくれたようだ。
まるで御伽話の『鶴の恩返し』のように目覚めたら、居なくなっているのかと思った。
「フフ、お蝶と呼んで下さい」
「お蝶ですか……」
「ハイ、申し訳ございません。清雅様」
お蝶は恭しく傅いた。
「え、いや、あの清雅様ッて、俺は……」
「ご無礼を深くお詫びいたします」
お蝶は俺の前に平伏し頭を下げた。
「ちょっと待って下さい。手を上げて……、どういうことなんですか」
起きた途端、謝られても困惑してしまう。
「お酒の中に眠り薬を仕込んでおいたのです」
「な、そうですか。道理で変な酔い方を……」
今も頭がぼんやりしている。軽く頭を振ってみた。
「申し訳ありません。確認のためです。ご容赦を……、清雅様」
なおも平伏したままだ。
「いや、その事は良いですよ。わかりましたから手を上げて。それに、俺は清雅と言う名前ではありませんから」
確かにおっかぁからは本当の名前は清雅だと聞いた事がある。
「いえ、あなた様は清国様のご落胤……。清雅様に間違いありません」
「ええェ……、清国様というのは、どなたでしょうか」
「少々、込み入った話しですがよろしいでしょうか」
「え、ああァ、ハイ。どうぞ」
ここまで聞いたら続きを聞かないワケにはいかないだろう。
「わかりました。平家の落人の谷に『揚羽の里』と言う集落がございます」
「ぬうぅ、揚羽の里ですか……?」
夢で何度も見た覚えがある。
幼き日に俺は母親とともに小高い丘から眺めていた。
里に数えきれないほどの揚羽蝶が舞っている。
紅い花の咲き乱れた花畑を揚羽蝶の群れが飛んでいた。あの絶景が揚羽の里なのだろうか。
「ハイ、そこの本家の当主、清国様とお女中のお雅様との間に出来た子が、あなた様でございます」
「ううゥ……、俺が?」
その当主の清国の子だと言うのか。
「この先は、少々、話しが長くなりますので朝食の後でよろしいでしょうか」
「ええェ……、まァ、そうですね。せっかく作ってくれたのですからメシを食ってからにしましょう」
美味そうな香りが鼻孔をくすぐっていく。今にも腹の虫が騒ぎ出しそうだ。
「ハイ、ただちに」
まるで高貴な武家に仕える女中のようだ。
俺は用意された朝食を食べ話しの続きを聞いた。
しかしあまりにも荒唐無稽なので、そのあと源内邸へ出向き源内や信乃介等にも聞いて貰った。
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