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平家伝説財宝殺人事件✨✨

揚げ羽の里✨✨✨

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 ヤケに蝉の声が耳を煩わせる。
 真夏の日差しが肌を焦がしていく。

 さっそく俺とお蝶は神田にある源内邸へ赴き、彼女から話しの続きを聞いた。
 源内も腕を組み眉をひそめた。

「ぬうぅ、『揚げ羽の里』か……。全国各地に平家の落人による郷があると言う噂は、小耳に挟んだことがあるが実在したとは、なぁ……」

「ハイ、私はその『揚げ羽の里』より参りました。皆様には数々のご無礼、深くお詫びいたします」
 お蝶は深々と頭を下げた。

「フフゥン、良いッてェ……。そんな硬い話しは抜きにしていこうぜ。もっと楽にしてくれよ」
 信乃介は苦笑し、くつろぐように言った。

 彼は医者としても腕もたつし器量良しなのだが、なぜか美女には縁がない。
 詳しくは話さないが、かつて愛し合った美女もいたが亡くなったと聞いた。

「ああァ、お蝶。ワシも肩が凝っちまうぜ」
 源内もくだけた表情でもてなした。
 
「そうですよ。源内先生は、それでなくても肩こりなんですから……」
 お蘭は源内の背後に回り、肩を揉んで笑った。
 みんな、お蝶が話しやすいように気を使っているようだ。

「ハイ……、実は揚羽の里の本家の当主、清国様には、これまで何人もの正妻や側室がおりました」

「へえェ……、そいつァ、羨ましいねェ」
 信乃介は愉しげに微笑んだ。

「もぉ、信さん!」途端に、お蘭が睨みつけた。
「ハッハハ、冗談だよ。お蘭!!」
 信乃介は肩をすくめ苦笑した。最近、お蘭は信乃介の女性関係の事を聞くと怒り出す。もちろん彼女なりに嫉妬しているのだろう。

「まァ、平家の落人が全国各地の村に流れ着いたと言う話しは残ってはいるが……」
 源内もおどけて笑った。

「当主、清国様は正妻、お春様と結婚されましたが、お春様は伏しがちで子宝に恵まれず、側室をめとったのです。
 その中のお一人がお女中のおマサ様でした」

「おマサ……、まさか俺のおっぁか?」
 清雅が眉をひそめ聞き返した。

「ハイ、そしておマサ様との間に双子が誕生したのです」
「ぬうぅ、双子が……」

「ハイ、お一人は清貴様……、そしてもう一人のお子様の名前が『清雅』様なのです」
「ぬうぅ、清雅……。それッて、俺のことなのか」

「ハイ、ところが、お春様の祟《たた》りでしょうか。それとも跡目争いなのでしょうか。
 清国様のお子や側室が、次々と変死していったのです」
「ぬうぅ、変死……?」

「ハイ、そこで清国様は双子の兄の清貴様だけ屋敷へ残し、おマサ様や清雅様を江戸へのがしたのです。もちろんお二人の身を案じての事でしょう」

「じゃァ、本当なの……。キヨさんが、その清国様のご落胤らくいんだって話しは……」
 お蘭は目を丸くして訊いた。

「ええェ……、清雅様が清国様のお子様で平家の末裔であることは間違いないと思われます」

「フフゥン、しかし何を証拠に……」
 さすがに彼女の話しだけでは信乃介も信じられない口ぶりだ。俺もそう思う。
 なにか、他にも確証があればよいのだが。

「それはお母様が遺したとされる羽子板です」
「ン、あの羽子板か……」
「ハイ、そして何よりの証しが清雅様の胸にある刻印です」
「ええェ……?  刻印!!」
 驚いてすぐに胸元を確認した。
「ンうゥ……、刻印なんて何もないが」
 今は着物を剥いでも見えないようだ。

「それは、特殊な彫師陰郎カゲロウによる陽炎彫カゲロウぼりとして幼少のみぎり、つけられた刻印です」
 お蝶が説明した。

「ぬうぅ、陽炎カゲロウ彫りか……。噂には聞いたことがあるが」
 源内も半信半疑だ。

 男女が交わり、絶頂に達すると刻印が浮き出るというモノらしい。

「そのため、昨夜は清雅様のお酒に眠り薬を混入し眠っている間に確認をしました」
「ン……」俺も眉をひそめお蝶を見た。

「フフゥン、眠り薬か。怖いねェ。やっぱ美女は」
 信乃介は苦笑を浮かべた。
「フフ、たしかにな」源内も肩をすくめた。

「清雅様……、平に、ご勘弁を……」
 またお蝶が丁寧に土下座をした。
「まァまァ、もう良いですよ。その件は。手を上げてください」
 しかしそうは云っても、交わって絶頂を迎えた時と云うのは赤面モノだ。まだ俺は女性と交わった試しがない。

「そうだぜ。まァ、男冥利に尽きるな。お蝶みたいな美女に一服盛られて、交わるなんて」
 信乃介も明るくなだめた。










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