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旅路✨✨✨

旅立ち✨✨✨

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 ついに俺たちが江戸を出立しゅったつする日がやって来た。
 朝の未明から長屋の子供たちが別れを惜しむように鶴を折って来てくれた。

「キヨ兄ちゃん。行かないでくれよう」
 馴染みの子供たちの泣き顔を見ると旅立つのを躊躇ためらってしまう。赤子の頃から血を分けた兄弟のように育ったのだ。
 やはり心残りがあった。

「大丈夫だ。きっと帰ってくる」  
 約束したものの心許こころもとない。
 果たして平家の里で待ち構えて居るのは文字通り鬼か、魑魅魍魎ちみもうりょうか。いずれにしてもタダでは済まないだろう。

「ハイ、キヨちゃん。これは少ないけど長屋のみんなで……」
 隣りのオバちゃんが餞別をくれた。
「いえ、こんな大層な……」
 みんなカツカツの生活だ。余裕などない。

「キヨちゃん。お蝶さんと末永く幸せにねェ……」
「うッ、ううゥ……、あのねェ」
 別に祝言を上げるワケではない。照れてしまった。

「ありがとうございます」しかしお蝶は丁寧に深々と頭を下げた。
「いや、それじゃァ、まるで……」
 本当に夫婦めおとになるようだ。
 名残り惜しいが源内や信乃介たちをこれ以上、待たせるワケにはいかない。

「では、行って参ります」
 俺たちは後ろ髪をひかれる思いで柿の木長屋をあとにした。

 おそらくもう二度と、ここへ舞い戻って来ることはないだろう。
 おっぁと暮らした十余年の日を思い出した。
 砂を噛むように辛い事も苦しい事もたくさんあった。だが、今となっては全てが良い思い出だ。

 未練がないと言えば嘘になる。
 しかしもはや後戻りは出来ない。

 平家の落人の『揚羽の里』へ退路を断って突き進むしかない。
「ありがとう。おっかぁ……」
 俺は振り返って小さくつぶやいた。

「清雅様……」
 お蝶は半歩引いて俺についてくる。
「行こう。お蝶!」 
 しっかり俺も頷いてみせた。もうここから先は振り返ることはしない。前だけを向いて歩こう。

 おっぁ、俺とお蝶の行く末を見守っていてくれ。











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