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嵐の中の惨劇✨✨✨
嵐の中で……
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夜になり俺たちは旅籠へ逗留する事となった。
相変わらず雨は激しく降っている。
蒼白い稲妻が閃光を発し大地を切り裂くような雷鳴が轟いた。
轟音を立てて雨が滝のように地面を叩いた。
どうやら闇御前は本陣へ逗留しているらしい。
屈強な護衛が見張りについているので俺たちは近寄れない。
その時、身なりの好い乙女とすれ違った。顔はよく見なかったが、お姫様のような高貴な乙女だ。甘い匂いが俺の鼻孔をくすぐっていく。
「ン……」誰なんだろう。
「どうした? 清さん。いや清雅様か」信乃介が俺に尋ねた。
「気兼ねなくキヨで構いませんよ。それよりあの娘は……」
俺は美少女の後ろ姿を指差した。
「ああァン……、あの娘?」信乃介もチラッと美少女の姿を見た。だがすぐに本陣の方へ消えていった。
「あの娘が、どうかしたのか」
「いえ、別に、どこかで見たような……」それもつい最近だ。
「フフゥン、その歳で、もう乙女の顔が見分けられなくなったのか」
「そうですね」
「まァ、お蝶って云う極上の美女を射止めたんだ。もう若い乙女に興味はないだろうがな」
「いやァ……、別に射止めたワケじゃないですよ」
まだ正式には彼女に夫婦《めおと》になろうとは申し込んでいない。彼女の方が遠慮しているようで、肝心な時にはぐらかされた。
風呂を上がるとさっそく源内やヒデは飯盛女と酒を酌み交わしている。
まるで宴だ。こんな嵐の晩は酒を飲んで騒ぐしかないだろう。
俺は信乃介と相部屋だったが気をきかせ、お蘭が連れ出そうとした。
「ほらァ、信さん。ここにいたらキヨさんの邪魔よ」
「えッええェ……、なんだよ。じゃァ、俺はどこで寝ろって云うんだ」
不満を漏らした。
「まったく大人のクセに気がきかないわね。信さんは!! キヨさんとお蝶さんを二人にしてあげなさいよ」
強引に腕を掴んで引っ張り、他の部屋へ連れ出そうとした。
「ぬうぅ……、わかったよ」信乃介も観念したようだ。
憤懣やるかたない様子の信乃介とお蘭が出ていくと入れ替わるようにお蝶が部屋へ入って来た。
「清雅様……。宜しいでしょうか」
お蝶は恭《うやうや》しく頭を下げた。
「ええェ……、ハイ、どうぞ。そんなに堅苦しい挨拶は止してください」
俺は、こんな扱いは馴れていない。
「ご一緒しても宜しいでしょうか」
「えッ、いや、そうですね」
「向こうの部屋は信乃介先生とお蘭さんが使うそうです」
「はぁ、じゃァ、他に行くとこがないならどうぞ」
それも仕方あるまい。
慌てて俺は隣りの布団をズラし彼女を招いた。その間も雷鳴が轟いた。
「スゴい嵐になりましたね」
お蝶は用心のため仕切りに内鍵をするようにつっかえ棒を立てた。
これで、もう外からは仕切りを壊さない限り入っては来れないだろう。
「ゴックン……」
思わず俺は生唾を飲み込んだ。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
相変わらず雨は激しく降っている。
蒼白い稲妻が閃光を発し大地を切り裂くような雷鳴が轟いた。
轟音を立てて雨が滝のように地面を叩いた。
どうやら闇御前は本陣へ逗留しているらしい。
屈強な護衛が見張りについているので俺たちは近寄れない。
その時、身なりの好い乙女とすれ違った。顔はよく見なかったが、お姫様のような高貴な乙女だ。甘い匂いが俺の鼻孔をくすぐっていく。
「ン……」誰なんだろう。
「どうした? 清さん。いや清雅様か」信乃介が俺に尋ねた。
「気兼ねなくキヨで構いませんよ。それよりあの娘は……」
俺は美少女の後ろ姿を指差した。
「ああァン……、あの娘?」信乃介もチラッと美少女の姿を見た。だがすぐに本陣の方へ消えていった。
「あの娘が、どうかしたのか」
「いえ、別に、どこかで見たような……」それもつい最近だ。
「フフゥン、その歳で、もう乙女の顔が見分けられなくなったのか」
「そうですね」
「まァ、お蝶って云う極上の美女を射止めたんだ。もう若い乙女に興味はないだろうがな」
「いやァ……、別に射止めたワケじゃないですよ」
まだ正式には彼女に夫婦《めおと》になろうとは申し込んでいない。彼女の方が遠慮しているようで、肝心な時にはぐらかされた。
風呂を上がるとさっそく源内やヒデは飯盛女と酒を酌み交わしている。
まるで宴だ。こんな嵐の晩は酒を飲んで騒ぐしかないだろう。
俺は信乃介と相部屋だったが気をきかせ、お蘭が連れ出そうとした。
「ほらァ、信さん。ここにいたらキヨさんの邪魔よ」
「えッええェ……、なんだよ。じゃァ、俺はどこで寝ろって云うんだ」
不満を漏らした。
「まったく大人のクセに気がきかないわね。信さんは!! キヨさんとお蝶さんを二人にしてあげなさいよ」
強引に腕を掴んで引っ張り、他の部屋へ連れ出そうとした。
「ぬうぅ……、わかったよ」信乃介も観念したようだ。
憤懣やるかたない様子の信乃介とお蘭が出ていくと入れ替わるようにお蝶が部屋へ入って来た。
「清雅様……。宜しいでしょうか」
お蝶は恭《うやうや》しく頭を下げた。
「ええェ……、ハイ、どうぞ。そんなに堅苦しい挨拶は止してください」
俺は、こんな扱いは馴れていない。
「ご一緒しても宜しいでしょうか」
「えッ、いや、そうですね」
「向こうの部屋は信乃介先生とお蘭さんが使うそうです」
「はぁ、じゃァ、他に行くとこがないならどうぞ」
それも仕方あるまい。
慌てて俺は隣りの布団をズラし彼女を招いた。その間も雷鳴が轟いた。
「スゴい嵐になりましたね」
お蝶は用心のため仕切りに内鍵をするようにつっかえ棒を立てた。
これで、もう外からは仕切りを壊さない限り入っては来れないだろう。
「ゴックン……」
思わず俺は生唾を飲み込んだ。
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この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
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