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未来の揚羽の里✨✨✨
真相✨✨✨
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俺たちが本家の屋敷へ戻ると、ヤケに邸内が騒がしい。
どうやら怪我人が運ばれて来たようだ。
すぐさまお松が駆け寄ってきて事態を報せた。
「清雅様、信乃介先生。早くいらっしゃってください! 早く怪我人を診てほしいのです!」
急患のようだ。
「ええェ……、わかりました」
信乃介はふたつ返事で引き受けた。
「清姫様が、秘密の地下牢で見つかりました。怪我の容態を診てもらいたいんです」
「ぬうぅ、まだ別の地下牢があったのか」
いったいこの屋敷はどれだけ複雑な迷宮なんだろう。
「ッで清姫様は、何処《いずこ》に?」
返事もそこそこに、信乃介は手当に向かった。
「あ、信乃介先生! 私も行きます!」
お蘭のあとから美鬼等も血相を変えて続いた。
未だに、清斎《キヨとき》も瀕死の重態で意識不明らしい。
本家の邸宅内は、さながら野戦病院だ。空き部屋では怪我をした村人や土蜘蛛衆の応急手当がなされていた。
俺が邸内を開放し、積極的に怪我人を受け入れたからだ。もはや敵も味方もない。救える命なら全力で救おう。
信乃介は清姫の容態を診て、ひと安心した。
「どうですか。清姫様のお加減は……」
美鬼が心配そうに訊いた。
「ええ、美鬼ほど拷問されてはいないようだ。薬で眠らされているだけで、傷もほとんど軽傷だ」
「そうか。良かった……」美鬼もホッと安堵したみたいだ。
「……」信乃介は眉をひそめ美鬼を見つめた。
何か言いたい事があるようだ。
しかしその後も、信乃介は昼夜問わず治療に当たった。怪我人は後を絶たない。
だが彼等をいつまでもここに逗留めておくことは出来ないだろう。
源内やヒデは江戸が恋しくて仕方ない様子だ。
その後、信乃介から声を掛けられた。
「ちょっと訊きたい話しがある」
「ええェ……、俺にですか」いったいなんだろう。
別の空き室で事情を訊かれた。信乃介も疲れているのだろうか。少し憂鬱そうな顔だ。
「清雅様……。思い出して欲しいんだ」
「ええェ、何をでしょうか?」
「貴方は嵐の晩、旅籠で足止めを食った時、本陣へ向かう乙女を見たって云ってたな」
「え、ああァ……、確かにあの時、高貴な乙女を見たような」
本陣で闇御前が殺害された際の一件だ。ずっと前の話しのようだ。
「その乙女は、誰だったのか。思いだしてくれ」
「ううゥ、それは……」そうだ。あのときはわからなかったが。彼女は。
「誰だったんだ? 今ならわかるはずだ!!」
信乃介は厳しい眼差しで俺を問い詰めた。
「それは……、清姫です」
そう、今こそ思い出した。
あのとき、俺の目に映った高貴な乙女は清姫だった。
「そうか。ありがとう。これで、あのカラクリの真相がわかったよ」
とても真相がわかってよろこんでいるような顔ではない。どちらかと言えば哀しそうな笑顔だ。
「まさか……」真相ッて。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
どうやら怪我人が運ばれて来たようだ。
すぐさまお松が駆け寄ってきて事態を報せた。
「清雅様、信乃介先生。早くいらっしゃってください! 早く怪我人を診てほしいのです!」
急患のようだ。
「ええェ……、わかりました」
信乃介はふたつ返事で引き受けた。
「清姫様が、秘密の地下牢で見つかりました。怪我の容態を診てもらいたいんです」
「ぬうぅ、まだ別の地下牢があったのか」
いったいこの屋敷はどれだけ複雑な迷宮なんだろう。
「ッで清姫様は、何処《いずこ》に?」
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「どうですか。清姫様のお加減は……」
美鬼が心配そうに訊いた。
「ええ、美鬼ほど拷問されてはいないようだ。薬で眠らされているだけで、傷もほとんど軽傷だ」
「そうか。良かった……」美鬼もホッと安堵したみたいだ。
「……」信乃介は眉をひそめ美鬼を見つめた。
何か言いたい事があるようだ。
しかしその後も、信乃介は昼夜問わず治療に当たった。怪我人は後を絶たない。
だが彼等をいつまでもここに逗留めておくことは出来ないだろう。
源内やヒデは江戸が恋しくて仕方ない様子だ。
その後、信乃介から声を掛けられた。
「ちょっと訊きたい話しがある」
「ええェ……、俺にですか」いったいなんだろう。
別の空き室で事情を訊かれた。信乃介も疲れているのだろうか。少し憂鬱そうな顔だ。
「清雅様……。思い出して欲しいんだ」
「ええェ、何をでしょうか?」
「貴方は嵐の晩、旅籠で足止めを食った時、本陣へ向かう乙女を見たって云ってたな」
「え、ああァ……、確かにあの時、高貴な乙女を見たような」
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「その乙女は、誰だったのか。思いだしてくれ」
「ううゥ、それは……」そうだ。あのときはわからなかったが。彼女は。
「誰だったんだ? 今ならわかるはずだ!!」
信乃介は厳しい眼差しで俺を問い詰めた。
「それは……、清姫です」
そう、今こそ思い出した。
あのとき、俺の目に映った高貴な乙女は清姫だった。
「そうか。ありがとう。これで、あのカラクリの真相がわかったよ」
とても真相がわかってよろこんでいるような顔ではない。どちらかと言えば哀しそうな笑顔だ。
「まさか……」真相ッて。
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