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オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》

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ロリコン万堂……

矢作警部補……(三人称)

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 横浜市中区山手町。初夏の日差しは容赦なく降り注いでいた。


 昨夜の台風がウソのように空は青く澄みわたっていた。



 高級住宅街が建ち並ぶ一件の邸宅の前に覆面パトカーが停車していた。



「ああァ、頭痛ッてえェ……」
 助手席で矢作警部補が左手でコメカミを押さえて呻いた。



 アラサーで、かつてはイケメンだったみたいだ。

 けれども今は見る影もない。
 無精ヒゲを生やし、刑事というよりも反社のような風貌をしている。
 



「もぉ、ハギさん。だから飲みすぎなんですよ。少しはお酒を控えて下さい」
 運転席の新人刑事の富田が忠告した。ジャ○ーズ系のイケメン刑事だ。



「フフゥン、ッせぇな。なんだよトミー。オレのオフクロか!」



「ジョークでしょ。ハギさんみたいな手の掛かる子供の世話なんて、まっぴらですよ」


「ハッハハ、言うじゃねえェか……。毛も生え揃ってねえェガキのクセにィ……」
 左手で股間を掴もうとした。
 だが痺れたのか、途中で諦め手を握ったり開いたりした。



「ちょっと、どこを掴む気ですか。
 そんなことより到着しましたよ。ハギさん!!
 ここですよ。ここ!!」
 イケメン刑事の富田はアゴで大きな屋敷を差した。



「はァ、なんだよ。ここは?  どこの国だよ。欧米か」
 邸宅は高い壁に囲まれ、堅牢な門を通り抜け邸内へ入った。


「嫌ですねえェ……。ここは横浜ですッて。被害者の万堂さんのご自宅です。さァ、入ってください」
 富田が先導して邸内を案内した。


 アールデコ調の高級な調度品が並んでいた。


「ッたく、イヤになりますね。見てくださいよ。ハギさん。これ全部、親の遺産らしいですよ」
 邸内を見回し、富田は愚痴を漏らした。


「フフゥン、だったらお前の親父にもセレブになって貰えよ」
 矢作警部補は違和感があるのか、少し左手が気になるようだ。

 盛んに手を握ったり開いたりしていた。



「いやいや、その親の遺産を元手に電子マネーで億り人ですからね。地道に働くのがイヤになりますよ」


「フフゥン、言っとくがオレはお前のカウンセラーじゃないんだ」
 矢作はそっぽを向いて応えた。



「わかってますよ。こんな毒舌カウンセラーなんて、すぐに廃業ですよ」




「ふぅン、ッでセーラームーンだっけ?」
 左手を気にしつつ、矢作が訊いた。


「いやいや、違いますよ。セーラームーンじゃなくッてセーラーエンジェルですよ」


「天使だろうと妖精だろうと。構わねえェだろォォ……」


「はァ、知りませんよね。ハギさんの歳じゃァ」

「フうゥン、ジジー扱いするな」


「あッ、こっちですよ。二階だそうですよ」
 富田が先導して邸内の階段を軽快に昇っていった。



「フウゥン、セーラーエンジェルでもグレーテルでも、どっちだって構わねえェよ」
 面倒くさそうに、矢作は富田の後を着いていった。











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