上 下
34 / 188
1章 王国編

33話

しおりを挟む
何処か音が遠かった。

まるで世界に一人だけ取り残されたような、ひたすらに、ただただひたすらに感じた、この世界には私の味方は一人も居ないという感覚。

そして、私は悟った。
私はフィーナに歪な形で依存していたのだと。

私は正直言って他の人間はどうでもいい。
それは私が人間嫌いになったからだと理解し、私がフィーナを気にかけている理由は私を守ろうとしたからだと思っていた。

しかし、その根底が間違っていた。

私は人間嫌いになっている訳ではなかった。
つまり、私は他の人間が必要無いということではなく、私が心の底から信じられる人間に対する様々な依存度が跳ね上がっているだけ。
人間全てが嫌いになったわけではないものの、依存度が高すぎる程に上がった影響で、他の人間を嫌いだと思い込むほどに、目を向けるのが嫌になっていただけ。

そうで無ければ、フィーナが助からないということに、ここまでショックを受ける訳が無い。
何故なら、フィーナは私の命を何度も救っているものの、フィーナは私に対して私が分かる範囲では仕事で仕えていただけ。
それも国王の命令だったから、私を命懸けで助けただけ。

そう理解しても、私はフィーナを失う事を許容出来なかった。
例え私自身に直接仕えていなくとも、例えフィーナが未来で私以外に仕える道を選んだとしても、例え今後フィーナが私に敵対したとしても、今のフィーナだけに依存している私はフィーナを失えない。
失えば、私がどう行動するか分からないから。

だから私は危険を犯す。

私はいつの間にかやって来ていた騎士達が、フィーナを持ち上げようとしたとき、私は騎士達を押し退けてフィーナの前に立った。

それに驚きつつも、私を退かそうとした騎士達を私とフィーナの周りに分厚い氷の壁を貼ることで阻止した。
氷の壁の外から、何をするのかという声が聞こえてきたが、全て無視する。
何故なら、ここからは全力で集中して魔力を使わなければならず、フィーナを助ける為に邪魔な思考をしている時間はないのだから。

私は左目のカモフラージュを解いた。
何故なら、今のフィーナは既に呼吸が停まっている上に、体を毒の矢と思わしきものに貫かれた後。
それならば、光系統の魔眼で使える回復魔法よりも回復の効果が劣る、水の回復魔法だけでどうにか出来るとは考えられないから。

私はカモフラージュを解いて、目を閉じ集中した。
ひたすらに集中した。

すると、音がさっきよりもどんどん遠くなっていく。
反対に体はどんどんふわふわとした感覚が強くなっていく。
この時、私は以前魔力を使い切った時に、何の問題も無かった理由を悟ったものの、それは今は邪魔な思考なので、すぐに集中を再開する。

そして、暫く集中した後に私は見開き、フィーナに左手を向けた。

「『戻れ』」





※すみません、間違って1日で2話投稿してしまいました。
ですが、一度の出してしまったので、このまま明日からも1日1話投稿をしていこうと思います。
しおりを挟む

処理中です...