上 下
35 / 188
1章 王国編

34話(フィーナ視点)

しおりを挟む
※ここから7話程閑話になります。
4話程は、フィーナ視点の閑話になります。




何処か遠く高い所から、今の私では無い私を見ていた。
その私ではない私は、分厚そうな雲が空を覆い雨が降りしきる王都の処刑台の周りで、狂気のように喜んでいる民衆の少し後ろで、膝を地面に付き、四つん這いになっていた。

その私を見ると、唐突に様々な記憶が一気に流れ込んで来た。
そのせいで頭に痛みが走る。

(うぐっ、ここは?)

そう呟こうとして、私が話せないのに気が付いた。
それに気が付いてから、私が周りを見回して居ると、処刑台に目が行った。

(え?あれはまさか)

少し遠目であり片目は白い布で覆われていたものの、ここ最近は毎日顔を見ている人物だったので、処刑台で処刑されていた人物が誰なのかが分かった。

(ローニャ様)

私が見慣れているローニャ様ではなく、成長しているがきちんも面影があるローニャ様の首と胴体が、ギロチンの刃で切断されていた。
それを見た周りの民衆は、更に盛り上がる。
しかし、そこで悲鳴が聞こえてきた。

そちらに目を抜けると、そこは王族とその婚約者しか居ることが出来ない場所にいる少女が右目を押さえながら叫んでいた。

「痛いっ、痛いっ、痛いっ、痛いっ~!!」

そして、その少女の右目は唐突に黒く輝きだし、その黒い光はローニャ様に注ぎ込まれた。
光が収まると、ローニャ様の右目を覆っていた布が外れた。
すると、そこには今のローニャ様と同じ様に、魔眼があった。

私はその事に疑問を持たなかったが、民衆や貴族達は違った。
民衆や貴族達はざわめき、口々に先程の黒い光はなんのかとなぜ先程までローニャ様の目に布が掛けられていたのかと、話し合っている。

そして、そこまで見ていた私はある一つの予測に辿り着いた。
それはローニャ様が魔眼を奪われていた可能性だ。
魔眼とは他人への移植は不可能であり、魔眼の所持者が死亡すると効力が消失する。

しかし、昔に他者へと魔眼を移植出来ないかを、貴重な魔眼所持者を使って、一万にも届くかという程の犠牲者を出した人体実験がされたことがあったらしい。
その結果、血が繋がっている人間に限り、可能だという事が判明した。

ただ、その結果も決して、当時の者達が望んでいた結果ではないだろう事だけは明らかである。
何故ならば、魔眼の移植はまず魔眼所持者の魔眼を直接抉り出し、それを血が繋がっている親族の抉り出した魔眼と同じ方の目に押し付ける(移植される方に痛みはない)というもの。

しかも、元々の魔眼所持者が死亡した場所は、移植した魔眼は強制的に元々の魔眼所持者の元へと戻り、移植されていた方は死んだほうがマシな激痛を、魔眼が移植されていた場所に受けるという。
因みに、移植されていた方が先に死んだ場合でも、元々の魔眼所持者の元へと戻るらしいが、痛みは殆どないらしい。

これらの結果を得た国はこの結果が公表された時期に、この人体実験が大々的に行われていた為に反乱が起こり、既に消えてしまっているが、この結果は忌まわしき人体実験の結果として今も語り継がれている。
しおりを挟む

処理中です...