上 下
113 / 188
3章後半 『終わり』編

112話

しおりを挟む
フィーナが『身体強化・腕』という魔法を発動させたと思った瞬間、私が凍らせた黒い何かは真っ二つになると共に私達の前から吹き飛ばされた。

普段ならば、特に何も感じないその行動だが、今回は私も驚いた。

何故なら、剣を鞘から抜き、私が凍らせた黒い何かを吹き飛ばすまでの動作を捉えることが出来なかったからだ。
見えた光景といえば、フィーナが魔法名らしきものを叫び、その後にはフィーナが剣を振り抜いている姿だった。

私は今まで生きてきた人生の中では短い時間しか関わっていないとしても、密度と言う意味ではフィーナが一番だと自負している。
そして、戦闘中などはフィーナと動きを合わせる為に、よくフィーナを見ている。
そのフィーナの動きは一番早くとも、私が捉えきれない事が無かった。

それなのに今回は捉える事が出来なかった。
それはつまりフィーナが、私が知っている頃よりも確実に強くなっているということ。
恐らく、新しい魔法だろう。

私も新しい魔法を作ったけど、それは対魔法用が多い。
『永久氷結』も私のペアの子、名前が出て来ないけど、その子が植物を成長させているのを見て、相手の魔法の面積が増えれば氷結が無効化されると思ったから、作った魔法。
他にも、戦闘では応用できるものもあるけど、殆どは相手の魔法に作用する物になっている。

こんな事になるならば、もう少し戦闘用の魔法を作っておけば良かった。
私がそんな事を考えていると、ミューが言った。

「ここからは出来るだけ急ぎます。しかし、コローナさんは私達の感情の監視だけはしっかりとお願いします」

それだけ言うとミューは走り出し、次々に襲い掛かってくる黒い何かを繋ぎ止めていった。
それを見て、すぐに私とフィーナも走り出し、コローナも走り出した。







「はぁ、はぁ。流石にそろそろキツイわね」

私は汗をハンカチで拭きながら、扉の中に入ってから真っ白になった周りを見ながら、まだ走っていた。
フィーナも元々体を鍛えていたものの鎧と抱えている荷物が重いのか息が切れてきている。
コローナはかなり前にバテて、しかし魔法を使いながら先に進むために、フィーナが心臓と手足だけに魔法を使って荷物のように運ばれている。

因みに、心臓と手足だけに魔法を掛けるのは、『身体強化・腕』の応用らしい。
『身体強化・(体の部位)』は、必要な箇所にのみを魔力で保護し、魔力を集中させる事で体を保護する力を上げ、身体能力の強化倍率を上げる魔法らしい。

例えば、『身体強化・腕』は心臓、両腕両足、腰、眼球、脳、脳からの司令を体に伝える器官だけに魔力を集める。
更に心臓と両腕両足、腰に通常の『身体強化』集める魔力の9割を集中させ、体を反応させるために残りの1割を眼球、脳、脳からの司令を体に伝える器官だけに集中させることで、通常の『身体強化』と同じ魔力量で1.5倍の倍率を負荷なく出せるのだとか。
しおりを挟む

処理中です...