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3章後半 『終わり』編

121話

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「時間を戻すだけが取り柄じゃないという事は、時間を進めることも出来るのですか?」

私は相変わらず察しがいいフィーナの言葉に笑みを浮かべながら頷いた。

「その通り。私の水魔法と時間魔法を使えば、巨大な岩だろうが、鋭く小さい石だろうが、固い金属だろうが簡単に無力化ができる」

私がそう言うと、ミューが怪訝な顔をしていた。

「水で岩も、石も、金属すら無力化出来るのですか?流石にしないとは思いますが、私達は命懸けでここにいるのですから、実践で実験などはしないでくださいよ?」

「流石に、そんな事はしないよ。私を何だと思ってるの?」

「・・・戦闘狂?」

「・・・」

私の問に簡潔に答えたミューに無言で殺意を覚えていると、コローナが手を上げた。

「あ、あのミュールフィス様とフロービスの精神状態が不安定なのですが」

そう言われて、確かにあの程度のやり取りで殺意を覚えているのはおかしいと思った。
そして、それを自覚して初めて、ミューが空気の効果がこれなのだと理解出来た。

ただ魔獣の巣で感じていた程の物ではないので、抑えようと思えば抑えられる。
なので、数度深呼吸をして感情を抑え込んだ。

こういう時には、無理矢理やらされた王太子妃並びに王妃教育も役に立つ。
というか、王妃教育を受けたことも記憶にあるということは、私も処刑される前はそれなりの地位にいた筈なのに、何故捕まって公開処刑されたのか。

もしも理由が分かって、それがくだらない事なら、私を公開処刑した人間全員殺してやろうか?

私がそんなことを考えていると、コローナが心配そうに私を見つめていた、

「あのフロービス?大丈夫ですか?精神の乱高下が凄いですが」

「え?あぁ、もう大丈夫。それで『終わり』の元へは、どうやっていくの?」

私はコローナの言葉を受けて、今度こそは感情を抑え込み、思考を切り替えた。
そんな私の問に、私と同じように思考を切り替えただろうミューが答えた。

「今周囲を探っています。フロービスさんが黒い何かを止めてくれたので、探りやすくなっていますね。ありがとうございます」

「ん?いや、別にそこまで意識していた訳では無いよ。それに長時間ここにいると周りの冷気で私達にも悪影響があるかもしれないから、今考えると最善手とは言い難いからな」

「確かにそうですが、それでも良い手ではありますよ。流石フロービスさんですね」

「え、う、うん。ありがとう」

私はミューに褒められて変な気持ちになってしまった。

もちろん、負の方向でおかしな気持ちなのではなく、正の方向におかしな気持ちである。
ミューには色々と振り回されているので、私はミューに遠慮を無くし、むしろ若干ではあるが憎まれ口を叩くくらいには遠慮がない。

嫌いな訳では無いので、ミューも私に憎まれ口を叩くこともあるが、私を褒めたりすることもある。
ただ、それが若干の憎まれ口も含まれているので、何時もは喜ばない。
しかし、今は素直に嬉しかった。

これも特殊な空気の効果なのだろう。
しっかり気を引き締めないと、下手をすれば敵にも気を許しそうだ。
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