異世界チートスキル持ちの奴隷は逆異世界転移させられる

ロシキ

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2章 拠点編

閑話・2 総隊長は元奴隷を認めている

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「ちょと、ハク。あんな追い詰めていいの?」 

私がロキに飛ぶなと言ってから少しして、私の後ろから開発部隊の隊長が話し掛けてきた。

瀬里香せりかか。まあ、問題ないだろう。現に、今も上手く立ち回っている」

彼女は渡辺わたなべ瀬里香、ここで一番優秀な発明家だ。
彼女が作り出した魔石を動力にする、魔道具には本当に助かっている。

彼女の一番大きな功績は、このモールの敷地内を覆う程に大きな結界を作り出す魔道具を作り出した事。

この結界は魔物を弾く性質を持っているので、モールの防衛が結界が無い時に比べて、格段にやりやすくなった。
更に魔物を弾く性質により、モールの敷地内だけだが、子供達も外に出せるようになったし、使えるスペースに駐車場も増えたので、私達が集めてこれる物資も増え、結界が無いときよりも人も増やすことが出来た。


なにより、彼女は私よりと同じくらいプロポーションも良く、黒髪黒目であることから日本人の民衆受けする顔をしている。
ここの総隊長は私よりも瀬里香の方が良いと思っているが、瀬里香は『戦える人間の方が良い』と言って、一向に総隊長になる気配がない。

そんな瀬里香が私の言葉を聞いて、眉を顰めた。

「問題ないって、そりゃあさ、あの大盾を溶かす火力に、大盾を掴むと同時に短剣も正確に掴み取るのには驚いたけど、6対1で10分間攻撃不可って、模擬戦としての体を成してないでしょ?」

「いや、ロキは強いから問題はない。それに私でも防ぐ時間が3分なら同じ条件でも勝てる。私の前衛をするなら、これくらいはやってもらわなければ困る」

私がそう言い切って模擬戦を見ていると、瀬里香は驚いたように私を見てから言った。

「ふ~ん。でも、ハクが誰かに入れ込むなんて、珍しいね」

「入れ込む?私が?」

「うん、だってほら、ハクの幼馴染の、あの眼鏡君よりも彼を側に置こうとしてるでしょ?それなら入れ込んでるよね?」

「ふむ、そう言われると、そうかもしれないな」

「でしょ?それなら彼にはハクが入れ込む何かがあるって事か」

瀬里香はそう言って、興味津々といった様子で、ロキを見つめていた。
それを見て、私は瀬里香に忠告した。

「瀬里香、興味があるのは分かるが、下手に干渉するのは止めろ。ロキは私と同等か、それ以上に貴重な戦力だ」

瀬里香は私の言葉に肩をすくめてから、私に背後から抱きついて来た。
私はすぐに退けようとしたが、瀬里香は私の耳元で小声で呟いた。

「分かってるよ。最近はなんだか物騒になってきた気がするし、ハク級の戦力は多い方がいい。それでも彼、武器を使ってないのはなんで?いい武器が無いなら、私が急ぎで作るよ?」

私は瀬里香が小声で話し始めた事を、周りに悟られない為だと理解し、弱い力で瀬里香を引き離すアピールをしながら、瀬里香に問い掛けた。

「物騒というのは何故だ?私はそんな報告は受けていないが」

「別に拠点の中の空気は悪くないよ。それに話してみた感じ、他の部隊の隊長は特に何も感じてなかった。

でも、軽く聞き込んでみて、周りに出てくる魔物が増えたかなと思っただけ。それに討伐したみたいだけど、ハクは『名付き』に遭遇してるから、何か起こる前触れかと思って」

「つまり、悪い方に向かっている気がするという事か?」

「うん、いわゆる勘ってやつかな。ただ悪い勘だったから、一応ね。悪い勘程よく当たるって言うしね。武器は作らなくても良いけど、一応頭に留めといて」

「分かった、留めておこう。だが、そろそろ離れろ」

「え~?もう私を支えていて欲しいんだけどな~」

「知らん」

私はそう言い切って、瀬里香を引き離した。
そうしてから模擬戦を見ていると、今度は普通に瀬里香が話し掛けてきた。

「それにしても凄ね、彼。名前なんて言うの?」

「ん?ああ、そう言えば紹介して居なかったか。彼はロキ、レベルは49だったが、『神獣喰らい・デーチェトス』の後は委しくステータスを見なかったから、55は超えているだろうな」

「レベル50超え!?それって凄くない?だって、『名付き』と戦う前にレベル20と30、40の壁を超えたんでしょ?」

「ああ、レベルは10の区切りになるとレベルを上げるのが極端に難しくなるからな。それを1人で達成したんだ、強くて当たり前だ」

「はぇ~、凄な~」

瀬里香の呆けたような声を聞きながら、ロキの戦歴について考えていた。

ロキは最初のモールでオークの群れを壊滅させたと言っていた。
その際にレベル20、30、40に上がるための条件を満たしたのだろう。

レベルアップとはゲームの経験値の様で、基本的に魔物を倒しまくれば出来る。
それに正確な数値は分からないが、相手よりも不利な条件下だと獲得できる経験値が増えるという報告も以前に受けた。

それならオークの巣で、オークの群れを相手にし殲滅すれば、相当な量の経験値が獲得できる。
更に、ロキはオークの上位種やオークの最上位種であるオークキングを倒しているのだから、レベルが1からだろうが49まで上がるのはおかしくない。

因みに、レベル10、20、30、40、50に上がる為の条件は詳しく分かっており、それぞれ異なる。
まず、レベル10だとレベル10以上の相手を1パーティー(最大人数の6人以内)で倒している事、レベル20だと3人以内の人数でレベル20以上の相手のを倒している事、レベル30だと1人でレベル30以上の相手を倒している事。

ここまでは、命を賭ければ出来ないことは無い。
しかし、問題はレベル40からだ。
レベル40に上がるには、1人でレベル45以上の相手を倒している事、レベル50に至っては『名付き』をフルレイド(24人)以内の人数で討伐している事ときている。

以上の事から、レベル40と50に上がるには、相手が完全に格上なので逃げようと背中を見せれば殺されるので、死ぬかレベルを上げるかしか選択肢がない。
もちろん、レベル10、20、30も下手をすれば死ぬが、上手くやれば負けそうになっても逃げればいい。


思考が少しずれてしまったが、私の予想ではレベル60に上がる為には『名付き』を2パーティー(12人)以内で倒さなければならない。
よって、私も条件を満たせているはずなので、レベル60を超えている筈だ。
まあ、ロキと話していて『名付き』討伐後に、確かめるタイミングを失ったのと、今まで超えられなかった壁である60を超えているならば安全な場所で喜びたかったから、ステータスを見ていなかったのだが。

そんな事を長々と考えていると、ようやく10分が経過した。
10分が経過してもロキはかすり傷1つ負っておらず、逆に防衛部隊の6人は肩で息をしていた。

その事で「流石はロキだな」と思いながら、大声を出した。

「ロキ!!10分経過したぞ!!」
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