異世界チートスキル持ちの奴隷は逆異世界転移させられる

ロシキ

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2章 拠点編

27話 元奴隷は模擬戦を終わらせる

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「ロキ!!10分経過したぞ!!」

その声が聞こえて来た瞬間に、地面を全力で蹴って、後衛の前に躍り出た。
俺の移動速度に前衛、後衛ともに反応出来ていなかったので、後衛の回復役と魔法攻撃役の顔面を掴み、そのまま地面に叩き付けて気絶させた。

その事に一番早く気が付いたと弓を持っていた男が、こちらに弓を向けようとした瞬間に右手で頭を鷲掴みにし、この男も地面に叩き付けて、気絶させた。

そこでようやく前衛も俺の行動に気が付いたが、前衛がその場から動く前に、それぞれ一発づつ腹に打撃を入れて気絶させた。


全員が地面に倒れたことを確認して、ムタイは再び大声を出した。

「それまで!!この模擬戦、ロキの勝ちとする!!」

「「「「うおぉぉぉぉ~!?」」」」

ムタイが宣言した瞬間、周りからは驚きの声が上がった。
その声を聞きながら、10分間の回避は疲れたと左手で首裏を揉みながらため息を付いた。

「ふぅ」

そんな俺にムタイが近付いて来た。
ムタイは俺の側に立つと、周りの人間に問い掛けるように話し出した。

「みんな!!今の模擬戦で彼の、ロキの強さを見たと思う。ロキは接近戦において、私よりも強い。

更に、ロキはある可能性を私達に示してくれた!!それは魔物が食べれるかもしれないという可能性だ!!」

ムタイの言葉で周りは絶句した。
ムタイから、拠点の人間は魔物を食えるとは知らないと言っていたから、絶句する程の事なのだろう。

そんな風に考えていた俺の隣で、ムタイは言葉を続けた。

「もちろん、どの魔物のどの部位が食べられるかは、これから調べなければならない!!だが、魔物を食べることが出来れば、私達の食料事情は一気に改善できる!!

その可能性を示し、そして私と同等以上の力を持つロキを、独立遊撃部隊に入れたい!!これに異論のあるものは居るか!!」

ムタイが言った『俺を独立遊撃部隊に入れたい』という言葉で、今度は周りがざわざわとうるさくなった。
ムタイからは部隊がある事自体は聞いていたが、どんな部隊がどれだけあるか聞いていなかった。
後で聞いておかないといけないだろう。

俺がそんな事を考えていると、ムタイは俺の正面に立った。

「異論は無いようだな。それならロキ、これはお前は私が隊長の独立遊撃部隊の人員だ。これからもよろしく頼むぞ」

ムタイはそう言って、俺に右手を出してきた。
その右手を見て、ムタイは握手を求めているのだと理解した。
正直、なぜ今更握手が要るのかと思ったが、大人しくムタイに従って、俺も右手を出してムタイと握手した。

すると、その握手を見た周りが拍手を始め、拍手が始まった数秒後には、ホールが拍手の音で包まれた。




あの後、色々な人から声を掛けられたものの、常識がないことを出さないように必死に取り繕いながらムタイに付いて行った。
ムタイは俺を連れて、どんどん階を上がり、屋上まで来て、屋上に6個あった一軒家の1つに入った。

そんなムタイに付いて一軒家に入ると、色々な家具があり、ここで生活している感じがあった。
それを見て、ここがムタイの家かと考えて、ムタイに質問した。

「ここがムタイの家か?」

「ああ、そうだ。各部隊の隊長には、屋上に一軒家を与えているんだ。他の者は仕切りこそあるものの、モールの中で雑魚寝に近いからな。隊長達はかなり優遇されているな。まあ、その分責任もかなり重いが」

「モールの中で雑魚寝?下にあった外の一軒家は使ってないのか?」

「いや、あれは子供達を朝から夜まで遊ばせたり、学ばせたり、後は病人が出たときに護衛付きで隔離しておく用だな。

一応、このモールの敷地内に限っては結界があるお陰で、かなり安全ではあるが、それでも万が一を考えなければならないからな。寝る時は基本的に固まっておく様に指示をしている」

「へ~、そんな物か、ストレスが凄そうだが」

「確かにそうだが、ロキが奴隷だった時よりはマシだと思うぞ?」

「うん、それはそうだな。奴隷はまともな服や飯、下手したら睡眠時間すらないしな」

俺が昔の事を思い出しながら遠い目をしていると、ムタイが苦笑いをした。

「それにしても、ロキはかなり強気だな。奴隷を長く経験していたなら、もっと萎縮しても良さそうなものだが」

「ん?ああ、俺の場合は奴隷時代の事を他人の様に思ってるしな」

「他人ごと?ロキ自身が経験したのだろう?それなのに、なぜだ?」

「俺は最初の内は貴重な存在だったから、下手な貴族と同じくらいの生活をさせてもらった。逆に生活が悪くなってからは、脱走しないように思考を鈍化させられたから、奴隷は時代の記憶が薄いんだ。

で、元の性格が強気だったから、強気な性格に戻ったということだな」

「なるほど、あの奴隷の首輪は中々恐ろしいものだな。思考すら操れるのか」

「いや、思考すら操れる奴隷の首輪は中々金が掛かるから、そうそう着けられない。まあ、俺は着けられたけど」

俺がため息を付きながら言うと、ムタイは苦笑いをしていた。
そんなムタイを見ていて、さっきの一幕を思い出して、質問した。

「そう言えば、あの模擬戦を利用して、俺をお前の部隊に入れるなんて聞いていなかったぞ。せめて説明くらいしておけよ」

「ああ、それか。悪かったな、あのタイミングが一番良いと思ったんだ。通す事が面倒な案件は勢いが大事だろ?」

「いや、そんなの知らないし」

「あはは、ロキも覚えておくといい。いつか、人を纒めるときが来るかもしれないぞ」

「うへ~。そんな時が来ないのを祈るよ」

「強い力を持つ者は、厄介事に巻き込まれやすい上に、厄介事に首を突っ込まざるおえない時が多いぞ?」

ムタイが言った言葉に、今度は俺が渋い顔をする番だった。
そんな俺を見て、ムタイはさっきまでの緩い空気から、緊張感を漂わた空気に変えてから言った。

「ロキ。これは真面目な話だ。もしかしたら、この拠点を捨てる必要性が出るかもしれん」

真面目な空気に変わったのを感じ取り、更にムタイの言葉に驚いて俺は眉を顰めた。

「は?捨てる?この拠点をか?ざっと見た感じだが、あの白い光が魔物を弾いているお陰で、この拠点には魔物に襲われ辛い。それなのにか?」

「ああ、確かに結界によって魔物は結界を発生させている魔道具の魔石が切れない限り問題ない。更に研究が進んだ今では、そこらの魔物から取れる魔石でも、発動している魔道具に入れれば、魔石の問題もない。

そのお陰で、この拠点は1年間保った。それでも、可能性がある限り、私は最善手を何時でも打てるように準備をしておく必要がある」
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