黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

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1章

19話 説明②

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私がゾッとしたのを見ていたエクス様は、一度頷いてから言った。

「『光』は本当に貴重だ。
そこら辺の貴族くらいなら、頭を垂れる。

だが、そこら辺の貴族ではない、有力な貴族達や王族、更に他の国の人間には狙われるだろう。
それは、何処かの組織や貴族家に所属しても変わらないだろう。

だからこそ、『光』は自身である程度の実力を付けるか、自身を生涯を通して守ってくれる人間を見つけるまでは公表しない事が多い。

俺は、その方が良いと考えている。
幸い先天性所持者ギフテッドだから、訓練を続けていけば『光』でもドーラス家の主力である魔法騎士くらい強くなれる余地がある。
だからこそ、強くなれば公表しても問題ない筈だ。


だが、今回は時間が圧倒的に足りない。
このまま公表すれば、公表は1週間後になるだろう。
更に公表の際には『タートル』の恐怖がある為に広まるのも早く、危険度15の『タートル』を撃退出来れば神聖化もされるだろう。

そうなれば不特定多数の相手側に広まるのに1ヶ月も掛からないだろう。
そこから狙う側は動き始めると仮定しても、最短で1ヶ月半で危険が迫る可能性がある。

もちろんドーラス家から公表する以上は守る体制も整えている。
だが、その体制を超えてくる可能性が無いとも限らない。
だから、少なくとも1年は訓練の時間にあてた方がいいと、俺は思う」

エクス様はそう言って、私に対して忠告をした。
その忠告には、何処か重みが有って、公表に関して真剣に考えないといけないという気持ちにさせられた。

そんな私の心境の変化を感じだったのか、領主様がエクス様に問いかけた。

「エクス、昨日は公表に対して特に反対意見は出して居なかっただろう?
それなのに、何故急に反対とも取れる発言をする?」

「確かに今回の件に関して、辺境伯家ひいては街の安全を最優先にするならば、公表をした方が良いでしょう。

ですが、公表のリスクを伝えずに公表する許可を得るのは違うでしょう?
リスクを伝え、納得して貰った上で公表しなければドーラス辺境伯家は貴重な魔法使いと敵対する事になると判断しました」

「それはドーラス家への裏切りではないのか?」

「いいえ、違います。
確かに今回の襲撃も、必ず乗り越える必要があります。
ですが、乗り越えた後も考えた上で行動しなければ、近い未来にドーラス家は存続させる事が出来なくなる日が来るでしょう」

私が公表について考えている間に、エクス様と領主様が不穏な空気を作り出していた。
それに驚いていると、ミュディー様が2人を宥めた。

「2人共、そこまでよ。
確かにエクスの言う通り、旦那様がリスクを伝えずに公表の許可を取ろうとした事は許せない事よ。
でも、旦那様の言う通り、危険度15の魔物を前にして、普段通りでは騎士や兵士達は立ち上がれないのも事実。

だからこそ、両方の案を採用しましょう」

ミュディー様はそう言ってから、私に向き直った。
それから私の両手を取り、微笑みながら言った。

「とりあえず私の娘にならない?」

「「は?」」

ミュディー様の言葉に私とエクス様は首を傾げた。
しかし、部屋に居た他の人達は、なるほどと納得するように頷いたり、少し考え込むように口に手を当てたりしていた。

そんな様子の中で、エクス様は首を傾げたまま、ミュディー様に言った。

「一体何を言っているのですか、母上。
貴族の養子は、とりあえずでなれる物ではありませんよ?」

「そんな事は分かっているわよ。
養子以外でも、私の娘になる方法があるでしょう?」

「それはどういう?」

「エクス、貴方が彼女と婚約するのよ」

ミュディー様は笑顔でそう言った。
その言葉にエクス様と【付与師】さんが眉を顰め、領主様とエステールさんは理解したように頷いていた。

それからすぐに、エクス様がミュディー様に言った。

「それは父上の案と本質的な結果は変わらず、リスクは更に増すと思いますが?」

「ええ、確かに私の案ではリスクは多すぎる。
でも、それ以上に彼女を守る事が出来るのよ」

「それは俺の婚約者として、ドーラス家に縛り付ける事と変わりません」

「そうね、変わらないわ。
でも、ドーラス家に縛り付けるのが悪い事かしら?

仮にドーラス家に縛り付けられなくとも、絶対に貴族のと関係は持つことになるわ。
その際に、関係を持つ貴族に騙されないと言えるかしら?

いいえ、言えないわ。
それならば今後、貴族と関わる為の適切な教育を施す事を約束した上で、彼女をドーラス家長男の第一夫人候補者の最有力候補として公表すれば、誰も悲しまない結果を手に入れられるわ」

「っ!!

確かに、それならばドーラス家が全力で護衛をするのも、他家からの干渉を跳ね除ける口実にはなります。
ですが、彼女は自由恋愛が基本の平民です。
突如として、身が危険になるから権力がある貴族と婚約しろなどと言う言葉は聞き入れ難いでしょう」

「ええ、聞き入れ難いでしょうね。
でも良いのよ、聞き入れ難くとも」

ミュディー様の言葉に部屋に居た誰もが首を傾げた。
唯一首を傾げていないミュディー様は、私を見た。
それから提案するように、しかしこれが最上の提案であり、断らせる気はないのだと感じさせる声色で私に言った。

「平民の子が政略結婚を理解出来ないのも、受け入れられないのも分かるわ。
だからこそ、第一夫人になって欲しいの」

「こ、候補、ですか?」

「ええ、あくまでも候補よ。
候補であるのなら、ドーラス家として未来の第一夫人になる可能性が高い娘を守るという大義名分を得る事が出来る。

逆に貴女も、候補であるお陰で自由恋愛が可能よ。
本当ならエクスを好きになってくれるのが、私としては嬉しいわ。
でも、それとは限らないし、その可能性も半々といった所でしょう。

だから、貴女は誰を好きになっても良い。
ただし、貴女の場合はそれ相応の権力を持っている相手でないと危険でしょうね。
それにドーラス家の第一夫人候補なのに近付いていくる男は、関わるに値しない男が多いでしょうから、自由恋愛をする相手を見つけるのは難しいでしょう。
でも、それは仕方のない事。

そして、エクスも早く婚約者を作れと言われている声を、多少は緩和させる事が出来るわ。

これには色々な面でデメリットがあるけれど、逆に色々な面でメリットも多い。
だからこそ、これは私が考えられる一番確実で、一番安全で、みんなが幸せになれる可能性が高い方法よ。

ああ、最悪貴女が第一夫人候補を外れても、既に次の当てはあるから心配しないで」

ミュディー様はそう言ってから、私から視線を外した。
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