黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

文字の大きさ
22 / 38
1章

22話 先天性の能力

しおりを挟む
「さて、アリアさん。
とりあえず、ドリスを治せるか試してみてくれるかしら?」

「あ、はい」

ミュディー様が凄いと思っていると、そのミュディー様から魔法を使うように言われた。
その言葉で、この場に来た理由を思い出した。

それから、私達に近づいて来ていた【付与師】さんに手を向けて【回復】属性の魔法を使うイメージをした。
具体的には、傷が綺麗になるイメージをした。

しかし、暫くしても【回復】属性の魔法は使えなかった。
それに驚きつつ、焦っているとエクス様が私の肩を叩いた。

「とりあえず、落ち着け。
通常の魔法じゃないんだ、一回で使えなくとも仕方ない。

むしろ公の場に出る前に今のままでは発動出来ない事が分かったのは良いことだ。
それに発動方法については、ドリスが分かるかもしれない。

ドリス、父上に言われて色々と調べていただろう?
その中に魔法発動に関する事はあったか?」

「あるにはありましたけど、魔法使い毎に違うので、さして参考になりそうにありませんよ?」

「それでも良いんだよ。
魔法はイメージの部分が大きい。
既に発動させているイメージを知れば、参考に出来るかもしれない」

「なるほど。
そういば私の師匠にも、そんな事を言われましたね。

それで例の魔法の発動方法ですが、本当に様々です。
傷に直接触って目を瞑り、その部分を治すイメージや人間の構造の知識を元にして、どの部分をどのように治すかを正確にイメージする魔法使いもいたそうです。
他にも遠距離から魔法を発動させた者も居たそうで、その者は傷の浅い者達を同時に幾人も治していたのだとか」

「なるほどね、聞いているだけでも様々な方法があるのね。
アリアさん、どれか発動出来そうなイメージはあったかしら?」

ミュディー様にそう言われたので、今聞いたイメージで試そうかと思った。
しかし、イメージしようとしても、あまり上手くいくイメージが沸かなかった。

それでも【付与師】さんに触って発動出来ないか試したものの、やっぱり上手くいかなかった。

「す、すみません」

「いいえ、良いのよ。
むしろ魔法使いになって1週間の貴方に無理をさせてしまったわね。
ごめんなさい」

「い、いえ、そんな」

ミュディー様が謝罪をしてきたので、その事にとても動揺しながら私は首を横に振った。
そんな私を見て、ミュディー様は苦笑いをしていた。

そんな中、エクス様が私に話しかけてきた。

「1つ良いか?」

「あ、はい。
何でしょうか?」

「先に言っておくが、あくまでも確認の為の質問だから、気を落とさなくて大丈夫だ。

確か先天性ギフトで、その人の疲れや怪我を黒いモヤとして視覚化出来るだろう?
だから、その黒いモヤを消す、もしくは綺麗にするイメージをすると発動しやすい可能性が高いという話だったが、それでも駄目だったのか?」

「あ、いえ、傷が綺麗になるイメージをしてました」

「なら、黒いモヤを綺麗にするイメージを試してくれないか?

ああ、魔法を使う時には先天性ギフトを使う事は難しいから、先に黒いモヤを確認してから、魔法に専念してみてくれ」

「は、はい。
分かりました」

私はエクス様の言葉に頷いてから、【付与師】さんを見た。

すると、切り傷が出来ている所にはあまり濃くない黒いモヤモヤがあり、打撲の所には多少濃いモヤモヤがあった。
一気に黒いモヤモヤを消すのは難しそうだったので、とりあえず一番濃いモヤモヤがある場所を治せるか試そうと思った。

私は一番濃い黒いモヤモヤの場所に手を当てて、体に魔力を流してから触れている部分の手に魔力を集めた。
それから黒いモヤモヤが消えて、綺麗になるイメージをした。

そのイメージをしていると、今までは感じなかった体から魔力が抜けるような感覚があった。
それから私が手を当てている部分が光った。
その光は決して目を瞑ってしまう程の強い光ではなく、月明かりもないような暗い夜に火が灯るような暖かさを感じる淡い光だった。

そして、その光が収まった時には黒いモヤモヤは消えていた。
それを見た事で、【回復】属性の魔法が発動したという事を理解して、力が抜けた。

「よ、良かった」

私の力が抜けてしまい、そんな事を言いながら息を吐いた。
そんな私の様子を気にしながらも、ミュディー様が【付与師】さんに質問した。

「魔法が発動出来たようで良かったわ。
魔法使いには、たまに魔法の発動が出来ない事を気に病む人もいるから、どうなるかと思ったけど杞憂だったわね。

それで、ドリスはどう?」

「凄いですね。
一番痛みがあった場所の痛みが引きました。

しかも、何も言わずに一番痛みがあった場所に魔法を使ったという事は、黒いモヤは怪我や疲労の大小を判断しやすいという事でしょう。

そうなると、魔法を使わなくとも良い物と使わなくてはいけない物の見分けを付けやすく、魔力の無駄な消費を抑えられるます。
戦場では大きく役に立つ能力です。

更に疲労も見えるという点に着目した場合、気が付いていなかっただけで病気も見えているかもしれません」

「そうなると、エクスの第一夫人候補者になって貰ったのは正解だったわね」

「ええ、仮に病気まで見えていたら先天性ギフトだけでも、どれほど危険だったか。
しかも、病気まで魔法の効果内だとすると命を狙われる危険性もありますね」

「そうね。
ただ、仮に病気まで見えていたら、それは確実に秘匿事項ね。
流石に、この場には病気の者が居ないから確かめようがないけれど、見るだけなら日常生活でも出来るでしょう?」

ミュディー様はそう言いつつ、私に視線を向けた。
その視線で、私が質問されたのだと気づき、急いで頷きつつ答えた。

「は、はい、もちろんです」

「それなら、怪我をしていない人を見てもらえばいいかしら?」

「いえ、それでは疲労も見えてしまうので、あまり差が感じられないのではありませんか?」

「確かに確認は必要ですが、それは『タートル』を倒してからでも良いのでは?」

ミュディー様と【付与師】さんの言葉を聞いていると、エクス様が手を上げながら、そう言った。
その言葉に対して、ミュディー様と【付与師】さんは考え込むように手を口にあてた。

エクス様は、その隙に更に言葉を続けた。

「確かにアリアの能力を正確に把握するのは必須事項でしょう。
ですが、その必須事項は『タートル』戦前に行わなければならない必須事項ではありません。

今はアリアの魔法を鍛え、少しでも多く希望と勝機を与えられるようにならなければ、どんなアリアが能力を持っているにしろ終わりでしょう?」

「確かにそうね。
まずは『タートル』を撃破し、その後で能力の確認をしましょう」

ミュディー様はそう言って言葉を締め、訓練は再開された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...