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1章
35話
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※お待たせしました。
1章完結までの4話を、4時間毎に投稿します。
4話目に簡単なお知らせもあるので、そちらもご覧ください。
◇
私はエステールさんになんと声をかけて良いのか分からないまま、城壁の外まで連れてこられた。
私が連れてこられた場所には、既に10人が居た。
その人達はローブを来ていたものの、色は黒ではなく濃い緑色だった。
そのローブを着ている人達の中の1人がエステールさんに話しかけた。
「エステール、その娘が【癒し手】様か?
ユーノのような普通の女の子に見えないな」
「ヒューレット、失礼な事は言わないようにして下さい。
アリア様は、今回の作戦で怪我をし、既に後方に下がった精鋭達の治療を終えています。
それはヒューレットも聞いているでしょう?」
「そりゃあ聞いちゃいるが、自分の目で見てないからな」
「それなら、これからじっくりと見ると良いですよ。
それとユーノ、今回は貴女がアリア様を運ぶようにと、既に聞いていますね?」
エステールさんはため息を付きつつ前に出てきた男の人を軽くあしらい、その後に集団の中にいた私と同じくらいの年齢に見える女の子に向かって話しかけた。
その女の子は話を振られると前に出てきて、一度頭を下げてから話しだした。
「はい。
【風】属性の魔法は使っても、負担にならない程度の加速にするようにと、聞いています。
なので、私の全力の半分程の速度での移動速度が妥当だと考えています」
「ええ、そのくらいが適切でしょう」
エステールさんは頷きながら、そう言った。
その後に、最初にエステールさんに話しかけた人が、エステールさんの横に立って大声で言った。
「総員、これから『タートル』を撃破した領主様の元へと向かう。
普段と違い、森には魔物は少ないだろう。
だが我々は【癒し手】様の護衛である為、普段以上に気を抜けん。
更に言えば、前衛の精鋭達が考え得る限り、最速で『タートル』を仕留めたんだ、ここで我々が失態を演じる訳にはいかない!!
分かっているな!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「よろしい、移動開始!!」
そう言ってからすぐに、ローブを着ていた人の半数が飛び出して行った。
それを眺めていると、エステールさんが最初に話しかけれていた人に荷物の様に抱えられているのが目に入った。
その光景に驚いていると、ユーノと呼ばれていた女の子が私の前にやって来た。
「【癒し手】様、失礼します」
「へ?」
私がなんの事か分からずに呆けていると、ユーノと呼ばれていた女の子にお姫様抱っこをされた。
その事で余計に混乱して固まっていると、ユーノと呼ばれた女の子が魔力を使っているのが分かった。
その事に首を傾げる寸前で、ユーノと呼ばれていた女の子が凄い速さで走り始めた。
「っ!?
っ!!?」
その速さは城壁の中に居たにも関わらず、あっという間に城壁の出入り口を超えて、森の中に入る程に早かった。
更に森の中に入ってからは、木々の間をすり抜けるようにして駆け抜けているので、ぶつからないかと心臓がバクバクいっているのが分かった。
私がその速さに声も出せずに驚いていると、周りの人達も同じくらいの速さで動いているのが目に入ってきた。
そんな中でエステールさんと私だけが運ばれていた。
私はただ運ばれるだけで、というかされるがままに運ばれるしかなかったものの、エステールさんはエステールさんを運んでいる人に文句を言っているのが聞こえてきた。
「いつも荷物の様に運ばれる事だけは不満です」
「荷物になるのが不満なら、魔法の同時使用に手を付けたらどうだ?」
「無理です。
主任やエクス様のように、とんでもない才能があるなら、挑戦した可能性もあります。
ですが、そのような才能も無い私が、平均的な魔法使いでは20年掛かって発動しない事が多い事柄に、手を付ける暇は無いのですよ。
ただでさえ魔道具研究室の仕事も溜まってきているのに」
「断れば良いだろうに」
「領主様が王都から取ってきた依頼は断れませんよ。
まあ、主任は全然手を付けませんけど」
「ああ、あの人ならそうだろうな。
興味が無いことには手を付けない人だから。
ただエクス様に言ってもらえば、嫌々でもやるんじゃないか?」
「頼んだ事がバレたら私も、お前も主任に殺されますよ?」
「ああ、それは勘弁してほしいな。
なにせ、今じゃ危険度15の魔物を屠った英雄だ。
相手にしていられないな」
「そうでしょう?
むしろ主任にやらせるよりも、精鋭の皆さんに手伝って貰えれば、即日終わりそうなのですが」
「それは領主様が許可を出しても、奥様やエクス様が許可しないだろ」
「ええ、その通りです」
「それじゃあ、お前が頑張るしかないな。
まあ、お前も喋りながら、【風】属性の魔法を、俺達全員を覆う形で発動し続けられるようになったんだ。
王都からの魔道具製作依頼くらい、大丈夫だろう?」
「はぁ~、この【風】属性の魔法も主任に押し付けられたからですよ。
まあ、今は実感出来るほどに魔法が伸びたので、そちらは文句も言えません。
ただ王都の依頼は、元々は主任に来ていた物を、私がやらされていますから文句も言いたくなりますよ」
「あはは、それは酒が入ったときにでも聞いてやるよ。
それそうと奥様の許可があたったとはいえ、本当にあのお嬢さんを連れてきて良かったのか?」
私は聞こえてきていた会話の中に、私の話題が出て来た事に驚き、体をビクリと反応させてしまった。
私の反応を肌で感じていたのか、ユーノと呼ばれていた女の子が私に話しかけてきた。
「どうしました?
移動速度がキツイですか?」
「あ、い、いえ、そんな事はありません」
「そうですか、それは良かったです。
ただ少しでもキツく感じれば、すぐに言って頂ければ、速度を落としますので、遠慮なく声をかけてください」
「は、はい。
今更ですが、よろしくお願いします」
「いえ、これも命令ですし、新参の私では人を運ぶのが精々ですので、大丈夫です。
それよりも領主様やエクス様の事を、お願いします」
ユーノと呼ばれていた女の子は私の事を見ずに、真っ直ぐに進行方向を向いたまま、私にそう言った。
その言葉には並々ならぬ感情が籠もっていて、私に重く感じられた。
それでも私は、その重みをしっかりと受け止めた上で、返答をした。
「はい、もちろんです」
1章完結までの4話を、4時間毎に投稿します。
4話目に簡単なお知らせもあるので、そちらもご覧ください。
◇
私はエステールさんになんと声をかけて良いのか分からないまま、城壁の外まで連れてこられた。
私が連れてこられた場所には、既に10人が居た。
その人達はローブを来ていたものの、色は黒ではなく濃い緑色だった。
そのローブを着ている人達の中の1人がエステールさんに話しかけた。
「エステール、その娘が【癒し手】様か?
ユーノのような普通の女の子に見えないな」
「ヒューレット、失礼な事は言わないようにして下さい。
アリア様は、今回の作戦で怪我をし、既に後方に下がった精鋭達の治療を終えています。
それはヒューレットも聞いているでしょう?」
「そりゃあ聞いちゃいるが、自分の目で見てないからな」
「それなら、これからじっくりと見ると良いですよ。
それとユーノ、今回は貴女がアリア様を運ぶようにと、既に聞いていますね?」
エステールさんはため息を付きつつ前に出てきた男の人を軽くあしらい、その後に集団の中にいた私と同じくらいの年齢に見える女の子に向かって話しかけた。
その女の子は話を振られると前に出てきて、一度頭を下げてから話しだした。
「はい。
【風】属性の魔法は使っても、負担にならない程度の加速にするようにと、聞いています。
なので、私の全力の半分程の速度での移動速度が妥当だと考えています」
「ええ、そのくらいが適切でしょう」
エステールさんは頷きながら、そう言った。
その後に、最初にエステールさんに話しかけた人が、エステールさんの横に立って大声で言った。
「総員、これから『タートル』を撃破した領主様の元へと向かう。
普段と違い、森には魔物は少ないだろう。
だが我々は【癒し手】様の護衛である為、普段以上に気を抜けん。
更に言えば、前衛の精鋭達が考え得る限り、最速で『タートル』を仕留めたんだ、ここで我々が失態を演じる訳にはいかない!!
分かっているな!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「よろしい、移動開始!!」
そう言ってからすぐに、ローブを着ていた人の半数が飛び出して行った。
それを眺めていると、エステールさんが最初に話しかけれていた人に荷物の様に抱えられているのが目に入った。
その光景に驚いていると、ユーノと呼ばれていた女の子が私の前にやって来た。
「【癒し手】様、失礼します」
「へ?」
私がなんの事か分からずに呆けていると、ユーノと呼ばれていた女の子にお姫様抱っこをされた。
その事で余計に混乱して固まっていると、ユーノと呼ばれた女の子が魔力を使っているのが分かった。
その事に首を傾げる寸前で、ユーノと呼ばれていた女の子が凄い速さで走り始めた。
「っ!?
っ!!?」
その速さは城壁の中に居たにも関わらず、あっという間に城壁の出入り口を超えて、森の中に入る程に早かった。
更に森の中に入ってからは、木々の間をすり抜けるようにして駆け抜けているので、ぶつからないかと心臓がバクバクいっているのが分かった。
私がその速さに声も出せずに驚いていると、周りの人達も同じくらいの速さで動いているのが目に入ってきた。
そんな中でエステールさんと私だけが運ばれていた。
私はただ運ばれるだけで、というかされるがままに運ばれるしかなかったものの、エステールさんはエステールさんを運んでいる人に文句を言っているのが聞こえてきた。
「いつも荷物の様に運ばれる事だけは不満です」
「荷物になるのが不満なら、魔法の同時使用に手を付けたらどうだ?」
「無理です。
主任やエクス様のように、とんでもない才能があるなら、挑戦した可能性もあります。
ですが、そのような才能も無い私が、平均的な魔法使いでは20年掛かって発動しない事が多い事柄に、手を付ける暇は無いのですよ。
ただでさえ魔道具研究室の仕事も溜まってきているのに」
「断れば良いだろうに」
「領主様が王都から取ってきた依頼は断れませんよ。
まあ、主任は全然手を付けませんけど」
「ああ、あの人ならそうだろうな。
興味が無いことには手を付けない人だから。
ただエクス様に言ってもらえば、嫌々でもやるんじゃないか?」
「頼んだ事がバレたら私も、お前も主任に殺されますよ?」
「ああ、それは勘弁してほしいな。
なにせ、今じゃ危険度15の魔物を屠った英雄だ。
相手にしていられないな」
「そうでしょう?
むしろ主任にやらせるよりも、精鋭の皆さんに手伝って貰えれば、即日終わりそうなのですが」
「それは領主様が許可を出しても、奥様やエクス様が許可しないだろ」
「ええ、その通りです」
「それじゃあ、お前が頑張るしかないな。
まあ、お前も喋りながら、【風】属性の魔法を、俺達全員を覆う形で発動し続けられるようになったんだ。
王都からの魔道具製作依頼くらい、大丈夫だろう?」
「はぁ~、この【風】属性の魔法も主任に押し付けられたからですよ。
まあ、今は実感出来るほどに魔法が伸びたので、そちらは文句も言えません。
ただ王都の依頼は、元々は主任に来ていた物を、私がやらされていますから文句も言いたくなりますよ」
「あはは、それは酒が入ったときにでも聞いてやるよ。
それそうと奥様の許可があたったとはいえ、本当にあのお嬢さんを連れてきて良かったのか?」
私は聞こえてきていた会話の中に、私の話題が出て来た事に驚き、体をビクリと反応させてしまった。
私の反応を肌で感じていたのか、ユーノと呼ばれていた女の子が私に話しかけてきた。
「どうしました?
移動速度がキツイですか?」
「あ、い、いえ、そんな事はありません」
「そうですか、それは良かったです。
ただ少しでもキツく感じれば、すぐに言って頂ければ、速度を落としますので、遠慮なく声をかけてください」
「は、はい。
今更ですが、よろしくお願いします」
「いえ、これも命令ですし、新参の私では人を運ぶのが精々ですので、大丈夫です。
それよりも領主様やエクス様の事を、お願いします」
ユーノと呼ばれていた女の子は私の事を見ずに、真っ直ぐに進行方向を向いたまま、私にそう言った。
その言葉には並々ならぬ感情が籠もっていて、私に重く感じられた。
それでも私は、その重みをしっかりと受け止めた上で、返答をした。
「はい、もちろんです」
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