血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ

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2章 第1部 到着と初依頼

40話 別室で

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そんな『収納袋』から次々と売る予定の魔物の素材を9割程だした所で受付嬢さんが頭を下げた。

「申し訳ありません。それ以上魔物の素材を買取ってしまうと商人協会からかなりの金額が動くことになりますので、今日はこの半分の量だけを買取するという事にさせて頂けないでしょうか?」

「え?あぁ、すいません。何も考えずに出してしまって」

「いえ、構いませんよ。しかし、この量ですと様々な手続きがありますので、別室に移動をして頂いてもよろしいでしょうか?」

「別室に、ですか。分かりました」

受付嬢さんに促されて、俺達は受付のカウンターから別室に移動した。
そして、移動してから受付嬢さんは俺達に質問してきた。

「失礼ですが、先程の魔物の素材は全て皆様だけで狩られたものでしょうか?」

「ええ、そうです。魔の森の魔物ですね」

「そうですか。素材の中に都市級の魔物の素材も含まれているようですが、冒険者協会でのランクを伺ってもよろしいでしょうか?」

「実は今日『ダンジョン都市』に着いたばかりで、まだ冒険者協会には加入していないんですよ」

「そうでしたか。それでは『ダンジョン都市』に来た理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ダンジョンドリームですよ。3人共、ダンジョンで一山当てたくて、この都市に来ました」

俺がそう答えると、受付嬢さんは商人協会加入の書類を3枚出しながら言った。

「それならば商人協会に加入しませんか?」

「商人協会にですか?ですが商人協会は商人の方が加入するものだと思っていましたが」

「ええ、基本的にはそうですが、冒険者協会に加入している方も加入して居られますよ。」

それはエリーシアに聞いたので、知っている。
しかし、それでも俺達が冒険者協会に加入するつもりだったのには理由がある。

「お恥ずかしながら、3人とも国境を超えてから国籍証を魔物に破壊されてしまいまして」

「なるほど、国境を超えてからですか。それならば国籍証の再発行が難しいですね。しかも、特例を除き冒険者協会以外では協会加入の際に国籍証の提示が求められますからね」

そう、冒険者協会以外では加入時に国籍証の提示を求められる。
その為、国籍証を持っていないと言えば、何故持っていないのかという質問が来る。
しかし、それは俺がさっき言った「国境を越えてから国籍証が壊れた」と言えば問題ないのだ。

なぜなら国籍は何処の国に所属しているのかを示す物で、それは大勢の人間が持つので制作が大変な物では国民に持たせることが出来ない。
なので、通常の国籍証は銅で出来ており、国籍証発行の際に一定の金額を収めれば、銅よりも上等な魔道具の国籍証が貰える。

因みに、この国籍証の再発行は国境付近の街なんかでは行っておらず、発行した国の王都に行かなければならない。
しかし、国境を越えてから国籍証が破壊されれば、その国籍証は使えないので再発行すら出来ないという寸法だ。

この事は度々問題になるが、国籍証の確実性の為に王都以外では再発行すると問題が多く起こり、問題になるたびにそのままで行くしかないという結論になっている。

話は逸れだが要するに商人協会に加入する為には国籍証が必要なので、俺達は加入出来ないという訳だ。
なので、受付嬢さんは諦めるかと思ったが、受付嬢さんは諦めなかった。

「それならば副協会長の権限で皆様に特例措置を行いますので、当協会に加入して頂けないでしょうか?」

俺とエリーシアは受付嬢さんの副協会長という言葉に反応した。
各協会にはそれぞれの街にある協会を纏める協会長と副協会長、更にその協会長と副協会長を纏める総合協会長と総合副協会長という役職がある。

その副協会長の権限を使うと言った受付嬢さんは只者ではない。
その為にまさかという顔を俺とエリーシアがしていると、受付嬢さんは立ち上がり頭を下げた。

「これは失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私は『ダンジョン都市』ウモーレの商人協会、副協会長のミーディアと申します。どうぞよろしくおねがいします」
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