血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ

文字の大きさ
上 下
63 / 69
2章 第1部 到着と初依頼

51話 介入出来ない戦い

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、手こずらせやがって」

肩で息をしていると言えるくらいには息が上がっている俺は周りに転がっている『暴れ猿』や『アサシンモンキー』の死体を見ながらそう言った。

俺は『暴れ猿』と『アサシンモンキー』に囲まれてから魔力を大量に使う魔法は使わずに相手をしたが、合計17匹に5分も粘られた。

たまに魔物討伐を知らない人から『17匹に5分なら早いほうじゃない?』とか聞かれるが、それは全くの間違いだ。
それは魔物相手の戦闘はいかに戦闘時間を短くするに掛かっているからだ。
そもそも魔物は魔法を詠唱とか無しで撃ってくるのだから、長期戦なんてしていたら押されて負けるに決まっている。

やっぱり数が居て、しかも群れとして攻撃されると倒すのに時間が掛かる。
今後は時間がある時にノーリスクで撃てる範囲魔法を作ろう。

そんな事を考えているとアイミナの声が聞こえてた。

「ボス!!どのなのですか、ボス!!」

「アイミナ?俺はここに居るぞ!!」

俺が叫んだ次の瞬間にはアイミナが凄い勢いで俺に突っ込んできた。

「ボス!!早くエリーシアの所に戻るのです!!エリーシアが死んじゃうのです!!」







「いや、これには介入出来ないぞ」

俺はエリーシアと『緑』の『アサシンモンキー』の戦闘を『鷹の目』を使って見ながらそう呟いた。

アイミナと合流して現状を聞いた俺はアイミナに回復魔法を掛けてもらいながら急いでエリーシアの元に戻っていたのだが、途中から凄まじい戦闘音が聞こえてきたので、『鷹の目』で偵察をした。

その偵察でエリーシアと『緑』の『アサシンモンキー』が殴り合っているのを見て俺は戦慄した。

そもそも『身体強化』という魔術は完全ではなく、なんの訓練もしていない通常の人間が発動させても2倍程度の出力しか出ないし、無理にそれ以上の出力を出せば魔術が終了した瞬間から動けなくなる。

その出力を如何にして伸ばすかを研究している魔術師や、魔術が終了した後も動ける様に訓練している騎士なんかでも4倍まで出力を出して動ければ御の字。
普段鍛えている騎士でも大体は3倍の出力だ。

しかし、『鷹の目』で見ている戦闘は身体能力が4倍になっている程度では話にならない。
何せ、エリーシアと『緑』の『アサシンモンキー』が殴り合っている中で、介入しようとしてくる『暴れ猿』にエリーシアが軽く手を振っただけで、『暴れ猿』が周りに内蔵をぶち撒けている。
そんなエリーシアと互角に殴り合っているのだから、『緑』の『アサシンモンキー』も似たような物だろう。

しかも、ジャンブをすればそこら辺の木の10倍近くは上昇しているし、エリーシアに至っては何もない空中を蹴って移動している時すらある。
これに介入するのは例え遠距離からだとしても、かなり勇気がいるだろう。
それに下手に介入すればエリーシアの邪魔をしかねないし、見た感じではあるがエリーシアが『緑』の『アサシンモンキー』を押しているように見える。

これならば下手に介入するよりも、周りの『暴れ猿』を倒して回った方がエリーシアの助けになるはずだ。

そう判断した俺は周囲を索敵して、あることに気が付いた。
そして、気が付いた上で、アイミナに指示を出した。

「アイミナ。お前はここを左側から回るようにして『暴れ猿』を倒していってくれ。俺は逆から行く」

「・・・」

俺がそう言っても何時もの様な返答がアイミナからは無かった。
なので、俺は不思議に思いながらアイミナに質問しようとした。

「アイミナ?どうしー」

「ボスは何を隠しているのです?」
しおりを挟む

処理中です...