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誘い
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「自分達がやった事の重大さを解っているの。ハッキングは犯罪なのよ。」
来栖真子は大きく溜め息をついた。
絢辻紫乃から事情を聞き、現在出来る事を指示した後、当の本人と対峙していた。
真子は出来るだけ穏便に自分の所で処理しようと考えていた。が、
「そもそも情報を開示していれば問題は起きていない。秘匿する意味がわからない。」
絢辻紫乃が問題点を棚上げしてロ撃する。
(これだからガキは。頭デッカチな論理を並べ立てて勝とうとする。)
「情報操作は必要よ。どう使われるのか管理しないと。今回の事でわかったでしょ。」
そう言われると紫乃も口を噤むしかなかった。
許可さえ取れば良いのよ。まあ生半可な事では取得出来ないけど。、」
そう言いつつタブレットを紫乃の前には差し出す。
「内容を確認して、認証しなさい。」
紫乃は苦虫を噛み潰したような表情で内容を確認し、指紋認証した。
真子は確認すると、安堵の表情になった。
(今回は割とあっさり片付いたわね。)
と安堵した一瞬、紫乃の言葉が飛び込んできた。
「幼なじみが帰還して良かったですわね。」
思わず「ええ。」と答えてしまい、我に返った。
(何、素直に答えてるの。それより何故知っているの。)
実際のところ、言葉としてまとまったのがこれだけで、頭の中では整理しようのない思考が渦を巻いていた。そこに紫乃の声が、言葉が侵入してくる。但し、混乱の中、紫乃の「夢に誘う。」という小さな呟きは聴こえていなかった。
「おめでとう。20年にわたって彼を追い続けていたんですよね。凄いわ。自分に素直に生きる。なかなか出来る事ではなくてよ。」
「ありがとう。」
そう答える真子は心が軽くなるのを感じていた。今まではいろんなわだかまりがあった。詠を追う為なら努力を惜しまなかった。
父親のコネを利用した。事情を知りながら結婚してくれた夫にも甘えてしまった。そして、上り詰めてからも特権を行使した。あまり人に話せたものではないと思ってる。
しかし、それを肯定してくれる人がいる。
(紫乃さん。)
不思議と年の差なんて関係なくなっていた。そう同期の友達と話しているようだった。
「でもね。貴女に対してはそれで良いと思うのだけど。」
だから、何か含みのある話し方につい聴き耳をたててしまう。
「問題は詠様よね。20年も探させて、帰還後の世話もやってもらっていながら、貴女の愛に応えないなんて。」
「愛だなんて・・・。」
「ずっと待っていたのではなくて?もっと、素直になってよろしくてよ。自分の側からいなくなってもいいの。」
紫乃は更に追い打ちをかける。
それは嫌だった。今回のもその不安から必要以上に厳しい行動をとっているのは確かだった。
「嫌よね。」
真子の答えを聞く前に紫乃は結論付けていた。
自分の考えを把握して物事を進めてくれるという感覚は心地良く、自らの意思を放棄してしまいたくなる。今まで自分で意思決定して強引に進んできた真子には尚更の誘惑だった。
「だから、私がいないとダメよねといった状況を作り出せばいいのよ。貴女なら公私ともに可能でしょ。」
「でも、どうしたらいいの?」
「貴女は私に詠様のスケジュールを予め教えてくれればいいわ。あとは私が貴女にとって一番良い方法を考えるから。」
「お願いね。」
その時、真子宛てに理子から電話がかかっている事を伝えに人がやってくるのを察知した紫乃はこう伝える。
「もうすぐ人が来るわ。娘さんからの電話だから出てあげなさい。」
そう言い終わると同時にドアがノックされ、それに伴い再び呟く。
「夢は覚める。」
真子は報告を聞くと
「もういいわ。あなたも気をつけて帰りなさい。」
と言うと急いで出て行った。
普段なら出ることのない娘からの電話。なのに今は出なければと思った。ほんの少し戸惑いはあったが。
(彼女も何かの役に立つでしょう。でも、気の毒ね。私が彼を葬る手伝いをさせられるかもしれないなんて。)
(さて、私も早々に退散しましょう。ここで電話するわけにはいかないから。)
自分の代替スマホにも副会長からの着信があるのには気がついていた。
来栖真子は大きく溜め息をついた。
絢辻紫乃から事情を聞き、現在出来る事を指示した後、当の本人と対峙していた。
真子は出来るだけ穏便に自分の所で処理しようと考えていた。が、
「そもそも情報を開示していれば問題は起きていない。秘匿する意味がわからない。」
絢辻紫乃が問題点を棚上げしてロ撃する。
(これだからガキは。頭デッカチな論理を並べ立てて勝とうとする。)
「情報操作は必要よ。どう使われるのか管理しないと。今回の事でわかったでしょ。」
そう言われると紫乃も口を噤むしかなかった。
許可さえ取れば良いのよ。まあ生半可な事では取得出来ないけど。、」
そう言いつつタブレットを紫乃の前には差し出す。
「内容を確認して、認証しなさい。」
紫乃は苦虫を噛み潰したような表情で内容を確認し、指紋認証した。
真子は確認すると、安堵の表情になった。
(今回は割とあっさり片付いたわね。)
と安堵した一瞬、紫乃の言葉が飛び込んできた。
「幼なじみが帰還して良かったですわね。」
思わず「ええ。」と答えてしまい、我に返った。
(何、素直に答えてるの。それより何故知っているの。)
実際のところ、言葉としてまとまったのがこれだけで、頭の中では整理しようのない思考が渦を巻いていた。そこに紫乃の声が、言葉が侵入してくる。但し、混乱の中、紫乃の「夢に誘う。」という小さな呟きは聴こえていなかった。
「おめでとう。20年にわたって彼を追い続けていたんですよね。凄いわ。自分に素直に生きる。なかなか出来る事ではなくてよ。」
「ありがとう。」
そう答える真子は心が軽くなるのを感じていた。今まではいろんなわだかまりがあった。詠を追う為なら努力を惜しまなかった。
父親のコネを利用した。事情を知りながら結婚してくれた夫にも甘えてしまった。そして、上り詰めてからも特権を行使した。あまり人に話せたものではないと思ってる。
しかし、それを肯定してくれる人がいる。
(紫乃さん。)
不思議と年の差なんて関係なくなっていた。そう同期の友達と話しているようだった。
「でもね。貴女に対してはそれで良いと思うのだけど。」
だから、何か含みのある話し方につい聴き耳をたててしまう。
「問題は詠様よね。20年も探させて、帰還後の世話もやってもらっていながら、貴女の愛に応えないなんて。」
「愛だなんて・・・。」
「ずっと待っていたのではなくて?もっと、素直になってよろしくてよ。自分の側からいなくなってもいいの。」
紫乃は更に追い打ちをかける。
それは嫌だった。今回のもその不安から必要以上に厳しい行動をとっているのは確かだった。
「嫌よね。」
真子の答えを聞く前に紫乃は結論付けていた。
自分の考えを把握して物事を進めてくれるという感覚は心地良く、自らの意思を放棄してしまいたくなる。今まで自分で意思決定して強引に進んできた真子には尚更の誘惑だった。
「だから、私がいないとダメよねといった状況を作り出せばいいのよ。貴女なら公私ともに可能でしょ。」
「でも、どうしたらいいの?」
「貴女は私に詠様のスケジュールを予め教えてくれればいいわ。あとは私が貴女にとって一番良い方法を考えるから。」
「お願いね。」
その時、真子宛てに理子から電話がかかっている事を伝えに人がやってくるのを察知した紫乃はこう伝える。
「もうすぐ人が来るわ。娘さんからの電話だから出てあげなさい。」
そう言い終わると同時にドアがノックされ、それに伴い再び呟く。
「夢は覚める。」
真子は報告を聞くと
「もういいわ。あなたも気をつけて帰りなさい。」
と言うと急いで出て行った。
普段なら出ることのない娘からの電話。なのに今は出なければと思った。ほんの少し戸惑いはあったが。
(彼女も何かの役に立つでしょう。でも、気の毒ね。私が彼を葬る手伝いをさせられるかもしれないなんて。)
(さて、私も早々に退散しましょう。ここで電話するわけにはいかないから。)
自分の代替スマホにも副会長からの着信があるのには気がついていた。
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